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小説で読む幕末史

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幕末はドラマよりドラマチックです。熱く生きた彼らが刻んだ歴史を楽しんでください。
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#水野忠邦

天保の改革(1841-1843)

 水野忠邦は焦っていた。幕府に金がないのだ。ヨーロッパ列強に対抗するための軍備増強をしようにも、金がなければ出来ない。

 徳川家斉(11代将軍)が酷かった。贅沢が好きで、側室も40人を越えていた。そのくせ、政治には興味を示さなかった。

 天保の大飢饉もあり、皆が疲弊していた。

 水野忠邦は、質素倹約により、幕府財政の建て直しを。風紀の乱れには、贅沢の禁止や取締りの強化を。江戸周辺にある、大名

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薪水給与令(1842)

 江戸末期、開国をせまるヨーロッパ列強が日本に来航していた。

 これに対して幕府は、「鎖国は祖法である」として頑なに開国を拒み続けた。それどころか、フェートン号事件(1808)の後は、異国船のうち払いを命じていた。

 ヨーロッパ列強に対抗するには、軍事力の強化が必要である。アヘン戦争(1840-1842)により、そう認識した幕府であったが、そのためには、金と時間が必要だった。

  そこで、「

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アヘン戦争の衝撃(1840-1842)

アヘン戦争の衝撃(1840-1842)

 「大国清が負けただと!」
 老中首座の水野忠邦は、そうつぶやくと、考え込んでしまった。
 人口3億5千万の中国の大国清が、人口1千万の国イギリスに負けたのだ。イギリスは、植民地であるインドを経由して、2万の軍隊を清に送り込んでいた。地球の裏側から戦争を仕掛けて勝利したのだった。
 
 「戦争になれば、この国は負ける。」
 水野忠邦は、賢明にもそう悟ると、次の手を考え始めた。
 人、武器、弾薬、食

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