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誰にも言えない夜のこと。

はじまりはいつだって突然に。
社会人になって現場研修を終え、営業部に配属されてそろそろ半年。毎年恒例、支店の若手スノボ合宿も終えて、先輩たちとも仲良くなってきたそんな冬のある日。わたしの恋ははじまった。

面倒見のいい先輩たちは毎週のように1年目を飲みに誘ってくれる。わたしの同期は先輩からの誘いに腰が重い子が多かったから、いつも行きます!とフットワークの軽いわたしは可愛がられていた。その中でも5年目の彼とは、初めて会った時からフィーリングが合うとお互い心の中で感じていた。数回目の飲み会の頃には思わずタメ口がぽろっと出ちゃうくらいには居心地がよくて、長女のわたしにとっては、お兄ちゃんができたみたいでとても嬉しかった。

その日は飲み会隊長の3年目の先輩と、同期の女の子と、彼とわたし4人。韓国料理でたらふく食べた後、ガード下の居酒屋で日本酒。気づいたら4人で店の日本酒を全て飲み干してしまっていたらしい。酔いも深まり深い話になって、3年目の先輩から厳しいご教授を受けたわたしは、図星で酔いも相まって号泣。すでに終電ギリギリ。

「おうち帰れる?」彼がかけてくれた言葉に、わたしは池袋まで行ければタクシーで帰れます!なんて強がる。彼にはこの時から全部お見通しだったのだろう、自分は違う線なのに送ってくるわと、JRのホームまできて電車に乗せてくれる。ありがとうございますと素直に電車に乗るも、心の中がぐちゃぐちゃなわたしは1人で帰りたくなくて、1人暮らしの友達何人かに電話する。その日に限って誰も繋がらない、、山手線は進んでいく、、。

そこで彼からのLINE。「ちゃんと帰れてる?」少し返信しなかったらそのあとすぐ電話もくれる。そこでも強がって大丈夫って電話を切る。もう社会人になったからちゃんと自分でどうにかしなきゃ、誰かに迷惑かけちゃいけない、しかも彼は結婚して1歳の女の子もいた、自分をぐっと抑えた。

でもまだ心配してくれてグッドタイミングなLINE。「たまには甘えてもいいんだよ。五反田にきたら朝まで相手してあげるよ。」わたしが今一番ほしい言葉だった。もう飛びつくしかなかった。間違って大崎についてしまい、電話でこっちに進んでと指示されながら歩いていると彼がいた。誰かに会えてこんなに嬉しかったのはひさびさだった。

頭ぽんぽんされて、朝までどうしよっか〜って彼は言いながら街を歩く。次の日は仕事だったから、シャワー浴びてベッドで寝たいなあ〜彼のことを100%信頼していた。彼は最初戸惑っていたけれど結局ホテルへ。

お互いシャワーを浴びて横に寄り添って寝る。今日はよく頑張ったねと朝まで腕枕をしながらずっと頭を撫でてくれる。やっぱりお兄ちゃんだ。そのままぬくもりに包まれて安心して眠りについた。

こんなに幸せな夜は初めてだった。


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忘れられない恋物語

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