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*/Kai_Mayuzumi.System.Inspected./* Mayuzumi.Configuration.Represent()

今度4月に、応用情報技術者試験を受けようと、一週間前に出願を済ませた。その時に、にじさんじ所属Vtuberの黛灰くんのファンの方から、「黛くんのストーリーについてどう思うか?」と尋ねられた。ITや精神医学についてやたらツイートしていたから、この謎めいた男を調べてほしいらしい。

今回のnoteは、黛くんの物語を自分がどう見たかを書いてみたい。しかし、黛君の物語自体には、この記事この記事など、先駆者の方が事細かに素晴らしく解釈されている。そこで、私はあえて物語の外側から、別の補助線を引いてみたい。

*/Leticence 黙説法/*

最初に尋ねてきたファンの方に私は、「この謎は解釈すればするほど、相手の手中にハマるかもよ?」と助言をしていた。それは、この物語が謎が謎を呼ぶように作られており、その謎の中心には「黛灰とはだれか?」という問いがあるからだ。

「黙説法」とは、あえて大事な言葉を言い落とすことで、相手に強い印象を残す修辞法(言葉のつかいかた)である。たとえば―—

「今日のうちに仕事を終わらせないと…わかっているよね?」

この言い方は、「罰を与える」という言葉をあえて落とすことで、脅迫じみた匂いを言葉につけている。しかし、この三点リーダーははっきり物を言っていないため、実は本当に罰を与えるかどうかは確定できないのだ。先日、Yahoo!でも三点リーダー症候群として取り上げられた。

黛君の物語には、「俺は架空の存在なのかもしれない」など、はっきりしない物言いや、意味深な登場人物(「HAVE not」「野老山教授」)が大量にちりばめられている。こうした謎めいた言葉は、僕たちに謎を解いてみなよと問いかける。しかし、明確な犯罪者を確定すれば終わる探偵物語と違い、この物語にはまだ明確な悪人がいないのだ

じぶんを探す放浪の旅は、魅力的だけれど、NOT_FOUND(何もなかった)で終わってしまうかもしれない。その時のことを、僕らファンはよく考えておく必要があるかもしれない。



*/MonoEye AND Display 単眼とディスプレイ/*

心理学者のジャック・ラカンの精神分析の重要な概念に「鏡像段階」というものがある。手短に解説しよう。

生まれたての子供は、親と引っ付いた状態(自他未分離、自分と他者の違いがわからない状態)にある。しかし生後6ヶ月ほどになると、鏡像段階/stade du miroirと呼ばれる、鏡に映った自分を「これが確かな<じぶん>だ」と認識する段階に入る。確かな自分を手に入れた子供は、親を<他人>として認識し始め、他人との関係(社会)を手に入れる。

おおまかにこのような形になる。実はジャック・ラカンは映写機から思いついたのではないかと言われている。スクリーンだ。勘の良い読者の方ならお分かりだろう。


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【3Dお披露目】Mayuzumi_XYZ【黛灰/にじさんじ】より

黛君の好きな『Serial Experiment Lain』と同様に、彼の物語には多くの自己像が現れてくる。

明確な自己を手に入れた人間は、一方で他人のまなざしにさらされる。他人が「自分をこう思っているかもしれない」という思い込みに悩まされることになる。椎名林檎の「アイデンティティ」はそれをテーマにした曲だ。

そして現代の人間は、インターネットやマスコミによって、自分の像を様々な所に運ばれる。自分をほめたたえる声、罵る声、あらゆる刺激が飛んでくる。単眼はその象徴であると考えられる。今回は特に<他者>として最も関係の深い「師匠」がそれにあたる。 

他人から疎外される時、「最終的に自分は自分だ」ということを保証してくれるのは自分の肉体である。しかし彼には肉体がない。そのような解釈が3D配信ではできる。故に、彼は他の論考でも指摘されるよう、「他人に極度に依存的」にならざるを得ない。




*/Inheritance 継承/*

黛君の放送環境などには、1990年代半ばのWindowsのシステムを思わせるものが多くある。(マッキントッシュアンチなの?)まず2434システムのウィンドウそのものが近い。他の例を見てみよう。

?Wizard 魔法使い = Elite Hacker or Conversational programming

Wizardには二つの意味がある。まるで魔法のようにプログラムを操ることが出来る「エリートハッカー」である。今ではあまり使われなくなった言葉のようだ。

もう一つ、重要なWizardの意味として「対話型プログラム」というものがある。皆様も、センシティヴなゲームを買った際などに「あなたは18歳以上ですか?」とプログラムに話しかけられなかっただろうか?これは、プログラムが操作者である人間と対話することで、設定を変えたり動作を起こすプログラムである。最近の話しかけると返答するBOTなどもこれに近い。

?High_Ranker 上位者 = 管理者?

Winodwsにおいて、「上位」という言葉を使うのはユーザーアカウントの権限設定の時が多い。権限が上(例えば管理者)の人は、フォルダーを自由にいじれるが、権限が下の人は、いじれないため、いつの間にか自分に見覚えのないフォルダーが出来ていることがありえる。これは、黛君の見覚えのないEXボイスなどを説明する時に考慮すべき概念だろう。

黛君がサポーターをつけたがらないのも、「上位者」の存在が苦手だからかもしれない。

?Unreadable_Tweet = AI???????????????????????



Twitter上には、十年以上稼働し続けている、全自動ツイート生成器「しゅうまい君」がいる。絶妙にポンコツな台詞を言いまくるために、ツイッタラーの皆様によく面白がられている。黛君も時々こういうことやるのは、自動学習によって、新しい語彙を獲得するための行為だったのかもしれない(と思って、あげよう)


*/REDEFINE 再定義/*

この物語は、黛灰が「自分を探すための物語」と私は最初に考えていた。しかし、対話型プログラム上で、ファンの人たちが黛には「自由にしてほしい」と選んだにも関わらず、彼はずっとVtuberとして振舞い続けている。

「自由」になるためには、他の人と切り離された「自由意志」が必要となる。そして彼は今もこの記事を書いている横で酒を飲みまくっている。つまりこれは言葉ではなく、行動に宿った彼の意志である。

これは「彼」がにじさんじの仲間と出会い、百万円を突然わたし、伝書鳩を集め、ゲームをして、パッションで殴り合い、ばばばばばばえおうぃおい〜しながら「自分を作り上げていく物語」である。その結末がどうなるかは、まだ誰も知らない。

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