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営業DXを踏まえた事業戦略策定のポイント②戦略策定の4STEP

こんにちは、グローバルインサイトの水嶋です。

本記事シリーズでは、「営業DXを踏まえた事業戦略策定」のポイントや手順について解説しています。

前回の記事では営業DXを踏まえた事業戦略策定において検討すべき項目と、部門間連携の重要性について述べました。本記事では具体的な検討ステップについて述べていきます。なおこの検討ステップは私が在籍していた大手外資系企業で用いられていた手法をアレンジしたものです。

営業DXを踏まえた戦略策定の4ステップ

本来「事業戦略策定」にはミッションや顧客提供価値の検討、プロダクト開発戦略等も含みますが、本記事においてはそれらの解説は割愛し、営業・マーケティングに関わる領域にフォーカスして解説します。

Step1 事業戦略の前提整理

まず最初のステップとして、暫定的な顧客セグメンテーションをはじめとする、戦略の前提となる事項を整理しましょう。

このステップでは営業企画・営業・マーケティング・インサイドセールスの各部門責任者が関与するのが望ましいです。

1-1   顧客セグメンテーション(暫定版)の検討

まず重要なのがターゲットとする顧客セグメンテーションの検討です。まずは暫定版で良いので完成させることを目指しましょう。市場環境分析の結果等があればそれを参考にしながら、業界、企業規模、地域、商材などの観点で市場をセグメントし、それぞれのセグメントでの売上を検討します。

1-2   直近のマーケティングコミュニケーション戦略の選択

いわゆるマーケティング戦略策定ではあらゆる要素を検討し、時間をかけて形にしていくものですが、戦略の完成を待っていては直近の売り上げ達成に間に合わないこともあります。

そこでお勧めしたいのは、暫定的な顧客セグメンテーションが決定したタイミングで、直近、例えば次の四半期などの単位で先行してマーケティングコミュニケーション戦略を検討することです。

具体的には、デマンドジェネレーション(リード獲得やナーチャリング)のために、どのような施策(イベントやセミナー、広告、コンテンツ作成など)を取っていくのかを定め、早めに着手できるところから先行してやっていく、ということになります。

1-3   オポチュニティの決定

最初に定めた顧客セグメンテーションを踏まえ、自社の事業のどこにオポチュニティ(商機をもたらすポイント)があるか判断を下します。具体的にはどの業界・企業規模・地域・商材などで自社の強みを発揮し、予算達成につなげるか、より具体的に検討していくことになります。

検討においては、近年の市場トレンドデータや、過去の販売実績やKPI達成状況(セグメンテーションごと・販売チャネルごと等)を参考にしつつ、セグメンテーションごとに割り当て可能な工数や投資等も踏まえて優先度を決めていきましょう。

1-4   販売チャネルの優先順位づけ

複数の販売チャネルがある場合は、その優先度やバランスを決定します。具体的には、フィールドセールスによる直販、インサイドセールス、オンライン販売などの選択肢がある中での優先度を決めていきます。

STEP1の内容は、以後のSTEPにおける事業戦略全体を方向付けるものとなります。最終的にすべての部門間で整合を取れるよう、営業以外の視点からも十分に議論することが重要です。

Step2 部門間連携と合意形成

Step2では、顧客セグメンテーションを確定し、部門間連携を通じて合意形成を目指します。営業企画、営業、マーケティング、インサイドセールスなどの責任者が引き続き関与します。

2-1 顧客セグメンテーションの確定

事業全体の予算達成が可能な顧客セグメンテーションを決定します。最終的には、どの顧客がどのセグメントに属し、どのチャネルからどの商材を販売するかを明確にし、顧客リストを作成するところまで出来るのが理想です。

2-2 関連部門間での連携と合意形成

ステップ1で決定したオポチュニティや直近のマーケティング戦略を再度見直し、事業戦略と絡めて調整を行います。この際、営業とマーケティングが互いの認識をすり合わせ、合意形成を図ることが重要です。

この後のステップでは、各部門顧客セグメンテーションに基づいて具体的な実行計画を立てるため、事前に方向性の一致を確認し、合意しておくことが不可欠です。この工程を踏むことで、部門間連動を担保した実行計画の検討が可能になります。

事業戦略策定全体で難度が高い工程ではありますが、営業デジタルシフトの利点を最大限生かすためには欠かせません。関係者は会議を重ねて合意形成を図ることが求められます。

Step3 実行計画の策定

ステップ3では、これまで検討した顧客セグメンテーションや販売チャネル、オポチュニティ等に基づき、各部門の実行計画を策定していきます。この段階で重要な役割を果たすのは、主に各部門の部長クラスです。本記事では営業にフォーカスして計画策定の注意点を述べます。

3-1 営業部単位での実行計画策定

事業戦略を部単位の実行計画に落とし込んでいく作業です。実行計画には、予算編成の立案、KPIの設定、スケジュールの設計などが含まれます。

KPIの設定については、他の部門との連携に適った指標を設けることが重要となります。スケジュールでは、年間を通じて活動の大まかな目安となるマイルストーンを設定し、続いて業界や自社、顧客などに関係の深いイベント、次いで製品ローンチのタイミングなどを踏まえて、タスクごとのスケジュールを策定します。

3-2計画練り上げ

部門ごとにいったん計画を立てた後、最低でも1回はステップ2までに関わった各部門の責任者が参加するワークショップ形式での会議を開催して、意見交換を行うことをおすすめします。これにより計画をいろんな角度から検討し、実効性の高いものへ練り上げていきます。

このワークショップでは、参加者の自律性を重視して自由な議論を行い、懸念点の解消を目指す場とすることが大切です。具体的には、作成した実行計画をベースに、次のような内容を議論しましょう。

  • 実行計画に含まれる戦略・戦術の有効性と採用可否

  • 各戦術のこれまでの実績と成熟度

  • 実行に必要なリソースの確認と割り当て

  • KPIの妥当性

  • 実行計画の完成期日

  • 議論を踏まえて更新した活動スケジュール 等

議論の内容をベースに実行計画をブラッシュアップし、さらに営業活動で必要な投資金額等を確定することで、部単位での検討は完了します。

3-3 マーケティング計画との連動確認

マーケティング部門の実行計画と、営業部門の実行計画の連動性の確認は必須の作業です。

具体的には、各部門の実行計画のスケジュール(いつ、どの顧客に対してアプローチするのか)と施策を照らし合わせて、時期ごとのマーケティング施策のターゲットを明確化し、その施策によりどのようなリードを獲得するのかを、マーケティング部門と営業部門とで合意させておくことが挙げられます。

連動性の確認にあたっては、部長レベルだけではなく、実際に営業活動に取り組む担当者も、マーケティング活動が自らの営業活動とどのようにつながり、どのような影響が考えられるか、営業プロセスの中に位置づけて理解することが必要となります。

3-4 課・担当者単位への落とし込み

これまで練り上げた計画を更に細分化し、各部に紐づく課の実行計画や担当者の行動計画や目標に落とし込みます。個人の行動計画や目標まで、マーケティングの実行計画と連動した内容になるよう意識することが重要です。

これまでのプロセスをたどると、全社の事業戦略→営業部門の戦略→営業各部の実行計画→課の担当者の行動計画…のような、細分化されていく入れ子構造が出来上がることになります。このように定めた戦略であれば、後に取り組みを振り返るとき、成否の要因やボトルネックを解明しやすくなり、次期に向けた改善につながりやすくなります。

Step4 事業戦略の経営視点でのレビュー

最後は、これまで策定した事業戦略を、経営層に提示し承認を得ます。ここでは営業企画、営業、マーケティング、インサイドセールスなどの責任者が関わります。

経営層に対しては、予算目標やKGIに関するエグゼクティブサマリーを用意し、ヒト・モノ・カネに関する投資と人員計画、営業プロセス上で実行される主要な戦略や関連部門間の連携状況を主に説明しましょう。

経営層からのレビューを受けたら、それに基づき戦略や実行計画の最終調整を行います。この際も、部門間連携を重視し、部門間での合意形成を行いながらすり合わせていきましょう。

すり合わせと調整を進め、実行に移せる状態となったところで事業戦略は一旦確定したことになり、全行程は完了となります。

まとめ

以上が営業DXを踏まえた上で事業戦略を策定していく、大まかな流れの一例となります。もちろん各工程内の細かなポイントは1記事では書ききれないほどあり、実行はそう簡単ではありませんが、まずは大きな流れを理解する上でご参考いただければと思います。

記事中でも繰り返し言及しているように、「部門間連携」が重要なキーワードとなります。縦割りにならないよう、部門間で頻繁にコミュニケーションを取りながら戦略を作っていく、ある種「アナログ」な取り組みが、営業DXでは重要であることを強調して本記事のまとめとしたいと思います。

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