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いばらの道か、幸せへの道か。 事実婚歴13年の小野さんが「籍を入れない結婚」を選んだ理由。#15


「旧家の生まれだからこそ、
 私は“ 事実婚 ”という形にたどり着いた。」


10歳と3歳のお子さんを持つ小野美智代さんは、同い年のパートナーと事実婚歴、13年。

“事実婚”という言葉さえも、まだ日本に浸透していない時代に周囲から、“いばらの道”、“絶対に大変な思いをする”と言われながらも、なぜ小野さんとパートナーのお二人が「籍を入れずに結婚する」という選択をしたのか。なぜそれを、13年続けて来れたのか。

そして今、
「籍を入れない結婚」でよかったと思う理由をお聞きしました!

小野美智代

大学職員を経て2003 年より、世界の女性と妊産婦を守る国際協力NGOジョイセフ勤務。主に広報を担当。2回の産休・育休を経て現在は、新設された市民社会連携グループ長として、新規事業の立ち上げや連携事業に日々邁進している。世界中すべての女性が健康でエンパワ ーメントできる社会の実現めざして公私混同で走り続ける。プライベートでは、東日本大震災の被災者からの学びから、在住の静岡県三島市で女性の健幸美支援団体 HiPs を立ち上げてジョギングなどを推進。小4と年少の2人の娘と同い年の夫の 4 人家族。


入籍するってどういうこと?
世代を繋ぐ苗字の役目

ー 小野さんは、パートナーとの関係を事実婚であると公言されていますが、どのような経緯でその選択をされたのでしょうか。

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当時は「事実婚」という言葉もなかった気がするのですが、もともと今の「入籍」という考え方が、ちょっと違っているなと考えていたんです。結婚って、1つの籍を一緒に作るっていうことだと思うんですけど、なぜメディアも一般的にも「入籍する」って言うんだろう・・・と思って。“家に入る”という考え方は、明治時代の嫁入りの認識ですよね。そうではなく、親のところにある籍を抜いて、「新しい籍を作る」=「結婚」だと思ったんですね。だからいざ、結婚するとなった時、私たちは親の籍から自分たちの籍を抜いて、お互いがそれぞれ世帯主という形で個人の新しい戸籍を作りました。戸籍上は夫婦ではないので、籍の番地(本籍地)は一緒という共通点があったほうが、これから夫婦として生活をしていくに当たって都合がいいこともあるだろうということで、まずは本籍を一緒にしました。

ー 自分たちが「新しく籍をつくる」ということがどういう意味を持つのかを、しっかり考えられたんですね。

そうですね。私は結婚という考え方が、「パートナーシップを築く」っていうこともあると思うのですが、本当の意味での「親からの自立」だと考えていました。多くの人は、結婚する時に初めて本籍というものを意識するのだと思うのですが、それまでは親のところに籍があるのが当たり前だし、だから、生活している中で、「自分の戸籍をつくる」という考えは出てこないと思うんです。私は、その「新しく籍をつくる」ということで一歩前に進めると思っていたんです。実際に、同棲ではない一種の結婚の「覚悟」のようなものがそこで生まれた気がします。

もし別姓が認められていれば、婚姻届は出してもよかったんです。法律に反したいと思っていた訳ではなく、窓口に行った時に、何度も夫の姓か妻の性かどちらかの姓に選ばないと受理できないと言われてしまって。


ー 別姓にしたいというのは、どちらかがというわけではなく、お互いに同じ気持ちだったのでしょうか?

そうですね。お互いがそうしようという考え方でした。勿論その考えに至った色々な理由があるのですが、私は旧家の出身なんですね。家には代々続くお墓と仏壇があって、祖父や叔父・叔母、父母、妹たちと大家族で住んでいました。私には妹がいて2人姉妹なのですが、母は祖父から「嫁いできたからには、跡取り(男)を産んでくれ」と、日々プレッシャーにさらされていて。祖父は、私を内孫で初孫ということもあり可愛がってはくれましたが、「男の子を産んでほしい」と言われ続けている母を見て、「なぜ女の子の私じゃダメなんだろう」「男と女の何が違うんだろう?」とずっと思っていました。婿や嫁の意味もわからない頃から、「お前は婿を取れ」ってずっと祖父から言われていたんですね。

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そんなに祖父から家を継ぐことを期待されていた私なのですが、中学生の時に、実家が家を建て替えることになって、私は「女だから」という理由で屋根に登って餅を巻くという儀式に参加できなかったんです。でも隣にいた妹は屋根に登っていいよと言われるという、その意味がわからなくて。ダメだった理由は「生理がきているかどうか」というだけでした。それは「不浄」という理由で家の神様が嫌うから、ということでした。その時、女性が拒否される理由が法律ではなく「しきたり」や「古くからの慣習」にあるんだということを知ったんです。


ー幼い頃から、性別が理由で家系での存在や扱いが変わることへの違和感があったんですね。

はい、ずっと違和感がありました。そこから吸い込まれるように、大学に入って社会学でジェンダーを専攻しました。生物学的な男女の違いではない、性差のこと。男女の捉え方って、社会が作ったルールが多くて面白いんですよね。海外にも旅をするようになったことで、日本とのいろんな違いに気づいたわけですよ。例えば、ヨーロッパ諸国の公衆トイレのマークは、青(黒)や赤で男女の色分けがされていない。そういうところに触れて、改めてジェンダーの定義や雰囲気って、人が作ったものだったんだなと感じましたね。

実は、幼い頃からからずっと感じてきたことは今の仕事にもリンクしているところがあって。私は妊産婦と女性を守るNGO・ジョイセフという団体で国際協力の仕事をしているのですが、 途上国の村にはまだ、そういった「しきたり」が強く残っているんです。例えば、生理の時には「誰とも会ってはいけない」「太陽を見てはいけない」「水に触れてはいけない」などの決まりがある地域があるんです。人間が作った「しきたり」や「慣習」で、命を落としたり、栄養不良になったり、学校に行けなくなってしまう現実が今でも起きているんです。ただ、女の子に生まれただけなのに。


家系を守るための、
事実婚という選択

ー そういった経験や思いから、女性として、人や社会と関係を築いていくとはどういうことかを考えるきっかけになったんですね。

そうですね。「女性であること」が理由で選択肢が狭まれるって不公平だなあ、もったいないなあと思っていました。高校の進路相談の時に、学校の先生から「お前は女だし、よくしゃべるから文系にいけ」と言われて。その時、私は数学が大好きだったのに先生の先入観といいますか、私の性格的なイメージでそう言われたんです。日本の中でもまだ、男はこういうもの、女はこういうものという決めつけがありますよね。例えば日本は、国会議員や医師や弁護士の数も、圧倒的に男性の方が多いです。フランスは、医師や弁護士などの資格が必要な仕事は、出産後も復職しやすいからという理由でここ近年で、比率が逆転し女性の方が男性よりも多くなったと聞きました。日本の場合、夫婦別姓の問題も、やはりこれまで苗字を変えてきたのは96%が女性で、政策決定をする男性たちがその大変さがなかなか理解できない、という点で議論が進まない背景もあるようです。


ー 今、いわゆる事実婚という形態をとられていて、何か大変だったことなどはありますか?

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それが、全くないんですよ!ただ唯一、将来の話になりますが、私たち夫婦どちらかが亡くなった時の遺産相続、婚姻関係にないと配偶者ではないので税金がかかるんです。それは少し不利だと感じますね。周囲からは、死ぬ間際には籍を入れたほうがいいよ、と言われるくらい(笑)。私達には娘がいるのですが、お互いの生命保険の受け取りは娘になっているので、そこは特に問題ないですね。


ー 娘さんは、今どちらの親権にされているのでしょうか?

私です。何もしないと、苗字も親権も母親である私になって、夫は認知という形になります。先輩事実婚カップルから「こうしておくといいよ」というアドバイスがあって、私の妊娠中に、夫が役所に出したのが認知届けです。まだ名前も決まっていないので胎児認知届けの名前の欄に、「胎児」と書きました(笑)。当時、これって母親が外国籍場合に、日本国籍の父親が届けることが常のようで、夫が届けに行った時まず第一声で「(母親が)外国籍の方ですか?」って聞かれたそうで。私の場合は、妹が先に結婚して苗字を変えていたので、代々続いてきた旧家の苗字を引き継いでいくことは必然的に私に託される形になっていましたからね。だから、私が苗字を変えられないと夫に最初に話した時、彼は「婿養子になるよ」と提案してくれたんです。夫は長男なのですが、3人男兄弟なので、弟ふたりはおそらくこの先もまず苗字は変えないだろうという夫の推測で。


ー 柔軟に考えてくださる旦那さんだったんですね。

はい。逆に「何故そんなに苗字にこだわるのか」と夫から不思議がられました。苗字で呼び合うわけでもないし、って。でも結婚を意識し始めた矢先に、私の祖父が亡くなったんです。そのお葬式に彼も来てくれたのですが、古いしきたりのあるお葬式や、私たち家族・親族が並ぶ姿(喪主の父、母、続いて私・・・)を見て、自分との結婚でその続いてきたものを絶やしてしまうことを、彼も気にするようになったんだと思います。それは、私自身ずっと感じてきたことで。お葬式で久しぶりに再会した親戚たちから聞かれたことが、「付き合っている人がいるのか」「相手は長男か、次男か」とか。私自身は、「小野という苗字は引き継いでいくつもりだから大丈夫だよ」って言っていたものの、事実婚(戸籍上の結婚はしない)なんて形を考えているっていうと一同パニックになると思ったので、言えませんでしたね。


ー ご家族には、「籍は入れずに事実婚という形にしたい」ということをどのように報告をされたのですか?

結婚式を挙げる前にマンションを買ったのですが、まず、それが正解でした。共有名義でローンが組めたので。ただの紙切れ一枚の「結婚します」という口約束のような誓約書は書きましたが、そんなものでも、銀行はお金を貸してくれるんですね。一緒に住むよということがわかる形が出来たことが、よかったんです。ただ、事実婚という形を取りたいと話した時、1番驚いたのは母親から泣かれたことです。「女性は男性の家に入ることが当たり前だし、従うものだから」と。自分が男を産めなかったことで、娘の私に家を継がなきゃと責任を感じてほしくないし、そんな時代はここで終わらせたい、好きなところに嫁げばいい、という考え方もあったみたいですね。「苗字が違うなんて、結婚じゃないでしょ。妾、内縁の妻と言われるだろうし、人様に指を指されるようなことをするな」って言われましたね。

一方で1番賛成してくれたのは義理の母でした。義母は長女で、長男の弟が海外にいるがゆえに実家の行事やお墓のことなど全部義母がやらなければだったそうで。苗字が異なるせいで手続きなど、委任状が必要でかなり手間がかかり苦労したそうなんですね。だから、そんなことで結婚できないって進まないなら、早く別姓で事実婚っていう形を取りなさいって言ってくれました。


ー13年前くらいに事実婚っていう形を取って、少しずつ理解をしてもらってきた感じでしょうか。

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そうですね。夫とは、パートナーとしての関係はとてもうまくいっていますし、両家の親もどちらかが家に入るという考えがなくなって、お互いの意識が対等だから、子どもの七五三などの行事も、交互に役割を分担したり、気を遣う様子がないんですよね。それは、とてもありがたいことでした。


ーでは、例えば家に入るという約束の、結納の儀式などもなかったんでしょうか?

はい。新居購入とともに、両家の顔合わせの挨拶兼ねて食事会をしました。結納の代わりに、私たちの新居のための家財を両家にプレゼントしてもらおうと「買ってほしい物リスト」を作って読み上げましたね(笑)。両家が経費的にも平等になるように分担したリストです。


ー新生活にはすごく助かる、実用的なシステムですね!結婚という考え方にも色々あって、そのお家がどう考えているかにもとても影響されるのかなと思います。

私の場合、保守的な環境の中で育ったからこそ、今の形を選択することになったのだと思います。私と夫がよければ、それぞれの考え方でいいと思っています。

実際に私の娘たちに聞いてみても、特に困っていることはないと答えますね。3年前に、夫婦別姓が注目された時、家にメディアが取材に入ることがあったのですが、当時小学1年生だった娘に対して必ず聞かれる問が「お父さんお母さんの苗字が違うけど、困ることある?」というものなんですよ。全部、ネガティブ目線で聞かれるから、それをインタビューで聞かれること自体が、嫌だと娘は言ってましたね。


ー 皆きっと、まだ家族は全員同じ名前っていうことが1番いいってベースで思っているから「何が困るか」っていうところから発想しちゃうんですよね。お子さんたちは、どちらの苗字にしようというお話ってされたりしたのですか?

私の苗字です。これは結婚当初から2人で決めていたことで。上の子が生まれた時は、私の姓にして、もし二人目が生まれたら夫、交互にお互いの姓にしようという話になっていました。ただいざ親になって子育てしてみると、気づくことがありました。例えば、保育園から呼び出しがあって、子どもを病院に連れていくのはたいてい夫なのですが、病院で保険証を出したりする時に、二人の子の苗字がそれぞれ違うとややこしい。一々説明するのは面倒だということで、姉妹は名前を同じにしようということになりました。


女性は、自立すると
選択肢を増やせる

ー 言い方は難しいのですが、何も考えていなければ普通に結婚してしまう気がして。過去離婚された方などは、結婚という制度は取らなくていいとおっしゃっている方もいますよね。

そうなんですよ!最近、特に多いですね。周りからもよく、「いいなー!」「婿に入っちゃった。選択肢すら浮かばなかったよー。」なんて、言われますね。結構、皆温かく受け入れてくれています。 


ー 制度がないから、選択肢として考えにくいだけで、 全然困らないんだよということを知れていたらいいのかなと思いますね。

私が困らなかった理由のひとつは、共働きだったということも大きいかもしれません。例えば、出産を機に仕事をやめたりしていると、配偶者手当がもらえるかどうかの問題はあるんですよね。配偶者手当は、苗字が一緒じゃないと受けられないんです。相手が転勤族だったりすると、社宅に入れないとかもありますね。


ー 結婚って、法律で結ばれているから大変なことがあってもなんとか踏みとどまる理由になると言われたりすることもありますが、パートナーとうまく関係を続ける上で大事にしていることはありますか?

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基本的に我慢しないことです。我慢することが一番ストレスだと思うので。我慢するくらいなら、やめたほうがいいと思っています。常に喧嘩したり話し合いして、お互いに何でも溜めずに言うようにしていますね。

私は、事実婚っていう形を勧めたいなと思ってますが、それはあくまでも女性も男性も同じように働いて「自立」していることが前提になるかなと。日本ではまだやっぱり男性が大手の企業に勤めていたりすると、扶養(家族)手当がもらえたり、配偶者控除などが受けられて、金銭的なメリットがあったりもするので。お金をとるか、自由をとるかっていうこともあると思います。

世の中のみんなが別姓になればいいと思っているわけでもないのですが、ただ苗字が「選べない」というのが日本だけだから。純粋に「なんでだろう?」と感じることはあって、選択肢が増えたらなと思っています。


ー 「選べるかどうか」という点がポイントですよね。もちろん一緒にしたい人もいるでしょうし。

そうですね。夫婦別姓に反対する人の中では、「絆が壊れる」ということをいう人が多いんですが、「絆」って何をもって絆なんだろうと考えます。例えば、サイボウズの青野さんが、男性として改姓した数少ない1人として夫婦別姓の権利を訴えてくださっていることってすごく意味があると思っているのですが、FaceBookでその話題を私が投稿シェアした際に、いろんな議論が起こったんです。

中には「自分の子供が、別姓にしたいとか言ったら悲しい」という人がいて。苗字というものは、紅組や白組、黄組といったチームの称号のようなもので、ひとつの家族の中に紅組と白組があるのはまとまりがなくて嫌だという意見もありました。でも、そのコメントに対して反対や賛成の意見がたくさんあって。例えば、「じゃあ結婚で子どもの苗字が変わったら家族って解散ってことなの?」とか。SNSによって、いろんな人の意見を知ることができて、気づきがあることは、すごくよかったなと思いますね。


ー 日本っぽい考え方の形なのかなと。例えば同じ血液型で親和性を感じるとかって、同じものを共有しているという独特のカテゴライズ文化ですよね。苗字が同じであるという共通点を、頼りにしてしまっているのかもしれないなと。先ほど「絆」という言葉が出ましたが、小野さんの思う家族に対する「絆」ってどんなものですか?

絆って本当に、目に見えないけれど、だからこそ、口にして苗字で表せるようなものではないと思っています。パートナーシップって、相手を尊重して初めて成り立つと思うんです。自分にはないものを持っている相手に対しての、感謝や尊重が大切だとは思います。それがなくなった瞬間に、解散するという考え方なのかなって。


結婚の強みは、
いいチームを持てること

ー 13年前に、周りの誰もやっていないようなことを、お互いの意思で実践できる人はそういなかったと思います。旦那さんはどんな存在ですか?

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羽を休める場ですね。うちは、お互いが港であり、船であるという感じですね。私も夫も船であるけれど、帰ってくる場所でもあるというか。2人で移動式港をやっているような感覚です。

今となっては、反対してくれた周りに感謝しています。実は、親しい友人ほど心配されたので(笑)。

「人と違った道を行かなくていいじゃん。」
「あえて不幸なところを選ばなくていいよ。」
「それって結婚じゃないよね。」
「どう考えてもいいイメージないよね。」
「子どもはどうなるの?」
「グレちゃったりしない?」

といったように。私の親戚も、同様でした。でも夫側の親族は、意外にも「長男とはいえ、下に2人もいるからそんなに向こうの苗字が外せないんだったら、婿養子にいったらいいじゃん」という感じでした。


ー 婿養子の提案だったり、いろんな過程を経て二人で“ 事実婚 ”という形を決められたんですね。

最初の反対が、あまりに大きかったがゆえにむしろ私たちの絆が強くなったのかもしれません。そんなに反対されることなのか、って。結婚届けを受理されない結婚ではあるけど、別に隠すようなことでもないと思っていたので、何でこんなに反対されるんだろう?と思いました。幼馴染にも「絶対苦労するよ」と泣かれたんです。その時は、「苦労した人がいるの?」と思ってましたね。何に苦労するのか、想像してもわからなかったんです。「愛人の子供とか言われるんだよ?」とか言われると、「あなたみたいな人がいうのよ」って。潜在的に思っていることって、そういう時に出たりしますよね。


ー 実際、当時言われていたように苦労されたことはあったんですか?

全くないです(笑)。今となっては、そっちにすればよかったなという人もいますね。籍があるがゆえに縛りが生じることもあるんですよね。苗字一つのことで。再婚する人は、事実婚にしたいという人が多いですよ。一生ひとりは嫌だけど、もう入籍はしたくないって。

例えばこの間、女性20人の勉強会があったのですが、何と9人が事実婚でした。9人中6人は、再婚で。そのうち3人は海外転勤の夫に着いていくために、自分の仕事を辞めざるを得なかった人だったのです。 海外と日本って働き方が変わっちゃうらしいんですね。海外で生活しているときは残業まったくせずに帰ってきて、家事も当たり前のようにやる夫だったのに、日本に帰ってきたとたん、残業が常となる日本の働き方になり「家のことは全部妻」みたいな感じになって、離婚したという共通の経験談で盛り上がってました。本来、パートナーシップ=対等ってことだと思います。持ちつ持たれつの関係を築いているというか。


ー 小野さんは、「結婚」をどういうことだと捉えていますか?

2人で、暮らしのバランスをとっている感じです。私が落ちているときは、シーソーの反対側で夫が上げてくれたり、逆に夫が落ちているときは、私が上げたり。1人よりも、ずっと生きやすくなりますね。私は、2人の関係もこうじゃなきゃダメ!と決められたりするのが苦手で、仕事と家庭、その日その日でプライオリティは常に変化するので、臨機応変に柔軟に転がせるのが良いですね。


ーいつも、状況が同じなんてことはないですもんね。

よく言うのは、もしどちらかが体を壊してしまったりしても、もう片方が家庭を回していけるようにしたいということですね。子どもが生まれてからこれまで夫が出来なかったのって、出産と授乳くらいですね(笑)。それ以外は子供のことに関しても、全部ひとりで回せる。ワンオペができる2人が揃うと最強ですよ。


ーお互い、どちらにも依存していないということですね。

そうですね。精神的な依存はあっても、経済的・物理的な依存というのは無いかな。結婚の強みはそこだと思います。いいチームという感じです。


ー今、もし事実婚にしようかなと悩んでいる人がいるとしたら伝えたいことってありますか?

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もちろんウェルカムと言いたいです。私が背中を押されたのは、職場の先輩の事実婚カップルの存在だったんです。元々大学の職員をしていたのですが、当時、周りに4組事実婚のカップルがいたんです。旧姓を使い続けたいとか、同じ職場だから苗字が別々の方が働きやすいとかもあったとは思うのですが、夫婦がとにかく仲が良くて。40代50代の熟年夫婦が、仕事終わった後、映画行ったりBarに行ったり二人きりの時間を楽しんでいて。こんな将来いいなあと思いました。


ー恋人から結婚っていう手続きを踏む訳じゃないから、カップルという感覚がずっとあるのかもしれないですね。

確かに、そうですね。私達も、お互いのことは名前で呼ぶし、初めましての時にお互いを紹介するときも下の名前で紹介しています。子どもに対して、自分たちのことを「お父さん(パパ)」「お母さん(ママ)」とも言ったことがないですね。また、夫婦で飲むのが大好きなので、休日は海とか川辺、公園で遊ぶ子どもたちを眺めながら昼からよく飲んでます(笑)

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ー 勿論家族としての関係性も大事ですが、両親からパートナーとしての仲の良さが感じられると子供の立場からも、とても嬉しいのかなと。新しい選択肢だからこそ、身近に素敵なロールモデルがいることは一歩踏み出す勇気になりますよね。

事実婚の人が周りにいないと、どちらかがその選択肢を切り出した時「どうして?」って思うことはあるかもしれないですよね。私たちも最初は事実婚に関する知識が全くなかったから、「これって、違法じゃないよね?」と話したこともありました(笑)。私の娘たちは今、私の苗字で私の戸籍に入っていますが、夫の戸籍にも「子」として記載されていますし、もし、今後夫の苗字に変えたいとかいう場合も家庭裁判所に氏の変更を申し立てればできるので。苗字が別の家族の形でも、私たちは今何も困ってないし、もし迷っている人がいたらこんな選択肢もあるよっていうことが伝わったらいいなと思います。私たちが背中押してもらったように。

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パートナーと共に人生を生きていくことを考えた時、様々な事情で既存の制度には合わないという人もいると思います。その時に、自分に合った結婚の形や、パートナーとの関係性を見つけること。「入籍=結婚」と違う選択肢もあるんだよ、ということ。今回小野さんのお話からは、これまでの家系やしきたりも大切にしながらも、自分たちで新しい家族の形をつくっていく、という優しい意思が感じられました。

“ 普通 ”とされる結婚のあり方と違う道でも、
それは自分たちらしい、幸せの道になる。

そんな選択を、一人一人が実現できる社会になるといいですよね!

Interview&Writing
:Aska Otani @https://twitter.com/aska28d

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