うちの子が一番かわいい。
新しいアンティークショップができていた。
なんだかちぐはぐな響きだけれど、本当のことだ。
聞けば、イギリスやデンマークなどに買い付けに行き、
家具や雑貨を仕入れていると言う。
木目の美しさや、お手入れの方法などについて興味深く伺っていると、
お店の方が「この子の木目は虎目といって…」と仰った。
「この子」…
私はお店の人が、商品のことを「この子」と言うのが好きだ。
最初からそういう人は少ないけれど、
お話をしているうちにその言葉が出ると、
ああ、この人この商品のこと好きなんだな、
この仕事のこと好きなんだな、と思う。
料理研究家の人が、話しながらだんだん「きゅうりさん」とか
言い出したりする場面にも遭遇したことがあるけれど、あれもいい。
若かりし頃、ほんの一年くらいだけれど、
アパレルでお仕事をしていたことがあった。
配属されたのはプレタポルテ。
コートもスーツも10万円以上、セーター1枚3万円くらいのブランドで、
当然服飾ど素人の私には売れるはずもなく。
せっせと接客をする中で、店頭にあるコートにまで愛着がわき、
同期入社の同僚の「昔買っていた犬の毛並に似ている」というひと言から、
「マルコ(犬の名前だ)」と名付けて愛でた。
とうとうマルコが売れたときには、同僚と2人で「幸せになるんだよ…」と
見送ったことを思い出した。
思えば、子どもの頃から、いろんなものに感情移入をするタイプだった。
親が転勤族でペットを飼えなかったため、
犬の写真を切り抜いて名前をつけていた。
健気なのか痛々しいのか…ギリギリな気もする。
私に子どもはいない。
が、愛でているものはたくさんある。
一緒に暮らして7年になる猫、初めて自分のお小遣いで買ったぬいぐるみ、
毎日使っている応量器と漆のスプーン、友達からもらった猫型のポット、
ふわふわのファーストール、林檎柄のワンピース、父の形見の時計。
好きなものに囲まれて過ごすのは心地よいものだ。
いろんな人の「うちの子」たちは、
きっと幸せな時を過ごしているのだと思う。
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