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じぶん作詩/短歌 のようなもの

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#3行日記

万華夜のほどろ

万華夜のほどろ

水彩画が淡くぼやけるみたいに、あたしの脚に一晩中絡んでいた温もりは夢のなかの出来事だった。

それはそれは美しくて、あたたかくて、甘くて、にがくて。そして存在が即ちすでに、嘘だった。

あたしは幻を見ていた。

ほてった紅で口づけしてオレンジワインの芳ばしさを深く深く海のいろに染めた明け方。

煌びやかな電飾に浮かび上がったのは、昨晩という名の喫茶店かバーであったかもしれない。

夜が溶ければ灯り

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素数になりきれないおとなたち

素数になりきれないおとなたち

おとなは緊張してないフリも、してるフリも上手いのね。

もうあの頃みたいに、試験開始の合図にドキドキしながら素数をかぞえたりはしない。
わたしは大人だから。

ゆうべの寝返りを朝のコーヒーで流し込めば、
きょうも電車が走って株が動きます。

でもどこへ?

わからない。

割りきれない気持ちというのが、あるでしょ。

それを空にうかべてみるんです。
あの頃みたいに、心をからっぽにして。