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じぶん作詩/短歌 のようなもの

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#詩的散文

月舟の途

月舟の途

本当に思っていると言うのはほんとうは

本当と思っていたいだけなのかしらと

己すら誠と信ぜられない酔いの言の葉

口にのぼれば刹那の煌めき宵に溶けゆく

紅い幻想に落つる伏目の奥は在りし月か

或いはとうに違えた月の許であるか

影刻々と移ろう雑踏に別つ背の途を

遠のく貴女を 

未 来

これだけの掌を犠牲にして

得られると説かれる未来が

季節 何巡めぐった先にも 

先にも

見えなくたって

薄ら曇り空のした

今にも底の抜けそうな大通りを

慎重に慎重に

歩いていかなきゃならんのでしょう

止まない小雨をバケツに溜めて

ほらと見せる空想に頭傾けても

靴下は湿り気を帯びて

見えない雷が遠くで鳴って

わたしは

洗いたてのグラスを逆さにしたら

玄関口で待ちかまえる鬱屈の雫が

今日は落ちてこない 

何故

蒸発して漂っているのか

自分で呑み下してしまったのか