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デザインと防災 色による効果〜しぜんのかがくep.32 ぼうさい豆知識〜災害時の心のケア

今回は防災や事故防止に関わるピクトグラムについて見ていきましょう。実はこのいろいろなピクトグラム、1964年の東京オリンピックがきっかけで日本初のものが多かったようです。オリンピックは90カ国以上の国からさまざまな言語の方が訪れたので、言葉がわからなくても一目でわかるマークが必要とされました。最初に着手されたのはトイレのマークだったんですよ。国籍に関わらず、誰もが必要ですよね😉

その後、ピクトグラムが世界共通のものに徐々に変わっていきました。2020年東京オリンピックの開会式の競技スポーツに関するピクトグラム50個連続パフォーマンス(パントマイム)や会場上空でのピクトグラムのドローン演出も有名になりましたね。あのピクトグラムは東京オリンピックで作られたんですね。

外国(インド)のトイレはデザインは同じでしたが、色は男女とも青でした。
赤の青で男女が区別されているピクトグラムに慣れている日本人は間違えそうです。

色による効果
防災や防犯など危機管理に関わるピクトグラムは、「安全色彩」と言って、安全上必要な個所を識別しやすくするために使用する色彩が決められています。日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standardsの略)であるJISに規定される安全色は、赤、黄赤、黄、緑、青、赤紫に、対比補助色として白、黒を加えた8色です。

引用:https://tanpoke.com/16989/ 2018年に改定されたJIS安全色

代表的な4色(赤、黄、青、緑)について、どんな色のイメージやデザインがあるか見ていきましょう。

<赤>
意味:防火、禁止、停止、高度の危険を表します。

車両通行止めのNは英語のNo(いいえ)や「Negation(否定)」の頭文字である。

赤は血や火などの色味で「危険」を連想させる色。

毒を持っている色(アルカロイドをもつ)画像:Wikipedia

<黄>
意味:注意
捕色(反対色)である黒と組み合わせることが多い。
意味:文字・記号・矢印などに使用、黄赤・黄・白の補助色

黄色は太陽光の色味に近く、暗い所でも良く見え、「注意」を連想させますね。太陽の光の色は国によって違う。
「幸福の黄色いハンカチ」1977年の映画。監督: 山田洋次 桃井かおり、武田鉄矢、賠償千恵子と高倉健が出てくる。高倉健が刑期を終えて夕張に帰ってくる時に黄色いハンカチーフがひらめいていたのが印象的でしたね。

ハナバチ 画像:Wikipedia

<緑>
意味:安全、避難、衛生、救護、進行

<青>
意味:指示、用心

青色は薄暗い場所でも見えやすいそうです。道路標識は青が多いですね。
人間の目は色を認識するときに目の網膜の視細胞が光の波長を捉えますが、明るい時(錐体 すいたい)と暗いとき(桿体 かんたい)と、視細胞が異なります。

引用:https://ganka.info/2022/05/05/%E8%89%B2%E8%A6%9A%E7%95%B0%E5%B8%B8-2/


昼間の明るい時は黄色から赤など明るい色がはっきりしますが、夕暮れ時には青い色に敏感になります。これはプルキンエ現象といい、19世紀のチェコの生理学者ヤン・エヴァンゲリスタ・プルキニェにより解明された現象。
青い標識が多いというのは、薄暗い夜でもドライバーが見やすいような色の工夫ですね。

縦軸は、CIE分光視感効率

特定非営利活動法人 防災デザイン研究会が1999年スイスジュネーブで開催されたIDNDR(International Decade for Natural Disaster Reduction 国連防災の10年:1990年代の10年間を世界中の自然災害の防止と軽減を目標とした国際的な取り組み)で日本から防災ピクトグラムの提案を行ったそうです。その後、2004年にこれらのデザインの一部(津波など)は、国際ISO図記号の原型となりました。

参考:防災標識ガイドブック (内閣府)

https://www.bousai.go.jp/kyoiku/zukigo/pdf/symbol_02.pdf

津波防災サインのためのグラフィック/津波防災ピクトグラム

https://www.gk-kyoto.com/works/works-detail?id=161


ぼうさい豆知識〜災害時の心のケア

「災害過程」について知りましょう。
震災による衝撃を受けてから、被災者は4つの段階をふまえながら生活を建て直していいきます。その段階を知っておくと、被災時の自分自身の心の動きが客観的にみられ、対策も立てやすいです。

10の累乗での時間感覚。

1.最初は「失見当(しつけんとう)」の段階です。
失見当とは、精神医学の用語です。災害時では「震災の衝撃から強いストレスを受けて、自分の身のまわりで一体何が起こっているのかを客観的に判断することが難しくなり、視野が狭くなってしまう状態」。人によって差はありますが、災害が発生してから 10 時間くらい(つまり災害当日)は、誰もがこのような状態に陥るそうです。
救助の声が聞こえて必死になって対応していると何も食べず飲まずに1日以上経っていた。頭が真っ白になってしまい、何も考えられなくなったなどです。これは心を守るためのブレーカーのようなもの。こういう心理状態になると知っておき、心を落ち着かせることが大事です。

2.次が被災地社会の成立の段階です。
平均すると災害発生後 10 時間から 100時間(災害発生後2~4日間)のころ。失見当の時期が終わると、人はだんだんと客観的に物事がみられるようになる。 安否確認なども終わり、被害の全体像がだんだんわかってきて、周囲の人たちと「どんな被害なのか」「これからどうなってしまうのか」などについて情報交換をしながら、「とんでもない事態になってしまった」ことを実感する頃です。
72時間の壁といわれるように人命救助の段階。自分達で助け合ったり自衛隊や消防など組織的に救助が行われ、家族の安否確認が行われる段階です。身近な人との安否確認が完了しているかどうかで、その後の生活の心の安定に左右されるので、家族や親しい人とは複数の連絡手段や避難場所をあらかじめ決めておくことが大事です。近所や地域での安否確認が行われるのもこの頃です。

3.災害ユートピアの段階
災害発生後100時間(四日目)から1000時間(2ヶ月)です。ユートピアというのは、「誰もが共存共栄できるような穏やかな理想郷」のような意味です。災害時のユートピアというのは日常とは違う環境(社会基盤が壊れていたり、ライフラインが止まっている状況)で、例えば避難所などで年齢、性別、社会的地位など関係なく皆が被災者がルールを作り役割分担をして共同生活する時期です。
実は被災者はこの時期は良かったと振り返る人もいます。「人の暖かさに触れた」「近所付き合いをしてこなかったことを反省した」「人は繋がっていることを実感した」など助け合いに満ちた世界となります。ただ、人と人との関係で避難所で問題が発生したり、災害関連死が発生する時期でもあリますので、生活に気をつける必要があります。

4.現実への回避の段階です。
災害発生から1000時間(2ヶ月)から1万時間(1年)がこの段階です。ライフラインでも上下水道やガスが戻ってくるのがこの段階です。実は電気は一番早く普及し震災後4〜7日で戻ります。ライフラインが復旧すると家屋被害がなかった人、一部損壊で家屋の修理補修が終了した人から自分の家に戻っていきます。仕事や学校なども再開します。ただ、まだ家に戻れない人は避難所生活、仮設住宅に住むことになります。被災者への支援金はこの時期に支給されます。自宅の被害を証明するり災証明書(前壊、大規模半壊、半壊、一部損傷、床上浸水、床下浸水、全焼、半焼等)が発行されると義援金や生活再建支援法の適用、支援金の支給の判断材料になります。

支援金と義援金の違いは、がりれでぃep.195 【防災がりれでぃ=特集・令和6年能登半島地震=】本編でも説明してますね。またお聞きください。

日本財団HPより

このように、被災後の生活はそれぞれがむやみやたらに生活を建て直しているのではなく、4つの段階をひとつずつふまえながら順番に元の生活に戻っていくのです。ただ、2ヶ月から1年で終わりではなく、地域経済が震災の影響を脱したと感じたのは震災 10 年後という阪神淡路大震災時の調査結果もあります。震災からの復興には、10 年単位の非常に長い時間がかかるということになります。

子供の心のケアも大事になります。夜寝れなくなったり、赤ちゃん返りをする子もいるようです。今まで通りの生活をなるべく続ける、遊んだり体を動かしたりしてストレスを発散させるなど対策はあります。
「災害時の子どもの生活ガイド」のリンクを貼っておきますので、お子さんがいる方、子供と接する機会がある可能性がある方は確認しておいてください。

また、被災地以外の方は、「共感疲労」に気をつけましょう。
共感疲労とは、つらい体験をした人の援助をするなかで、相手の気持ちに共感しすぎて、自分自身が体験したことではないにもかかわらず、精神的に疲れてしまう現象です。慢性的に疲れる、無気力になる、気分が落ち込む、寝られないなどです。
そういう症状が出たら、以下の4つの対処方法を試してみてください。

1.デジタルデトックスの時間を設ける、
2.ポジティブなことを思い浮かべる、書き出す。(例えば早く帰れた、ご飯が美味しい、楽しい映画や番組を見た)
3.自分だけの時間を作る。
4.自分の気持ちを人に話す。

対処方法を試しても改善されない場合もあります。うつ病など他の病気の可能性も考えて、早めに医療機関を受診しても良いと思います。
自分が元気に過ごすこと、気持ちを保つ方法を知っておくことも、自分や周りのための大事な備えの一つになります。

参考:内閣府 防災に関する人材の育成・活用防災に関する標準テキスト 1.3.1 災害過程とは何かhttps://www.bousai.go.jp/taisaku/jinzai/pdf/hyojyun_text_chap1.pdfs

⭐️Podcast本編はこちら↓宜しければお聴きください♪
神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく


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