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ZERO Gravity



 もし地球が無重力だとしたら、僕は何をしたいだろう

 幼い頃、考えたことはないだろうか
 鳥になって空を飛んでみたいと

 少しでも高いところへ行きたくて
 ブランコを漕いでみたりジャングルジムに登ってみたり
 空の青さに心を落ち着かせていた
 「無重力だったら生きていけないよ」みたいなことを言われても、
 やっぱり僕は空を飛んでみたかった

 もし、地球が無重力だとしたら、宇宙の端まで行けるとしたら、
 僕はどこへ行きたいだろう

 太陽にぶつかってしまうだろうか
 隕石にぶつかってしまうだろうか
 呼吸ができなくなってしまうだろうか
 もう帰ってこれなくなってしまうだろうか

 無重力だったとしたなら

 小学生の僕ならきっと、どこまでも飛んで行っていた気がする

 いつから、見えない重力に可能性をつぶされるようになってしまったのだろうか



————————————————



 地球上には重力が存在しており、全員に統一された価値観がある。

「どちらが右で、どちらが左か」「どちらが上で、どちらが下か」全て決まっているのだ。

 もちろん人同士が向かい合っているのか背中合わせになっているのかで右左の方向は変わってしまうけれど、静止した状態での上下左右の方向は決まっているだろう。

 しかし、宇宙ステーション、つまり無重力空間では、上下左右の方向は一定ではない。

 宇宙飛行士の人達は、宇宙ステーションの中でお互いに会話をするとき「あなたから見て左」「私から見て前方」という表現の仕方をするらしい。

 宇宙空間には統一された価値観というよりは、個々それぞれから見てどうこうという各個人にスポットが充てられた価値観が存在している。

 重力だけではなく、私達にはそれぞれを引きつけて固定しておく様々なものがある。国家、社会、学校、交友関係、親子、自身の夢、など。

 私達は毎日何かしらの重力に縛られて行動を制限しながら生きている。

 小さい頃は「夢を持ちなさい」と言われ、大人になれば「諦めなさい」と言われる。みんな小さい頃に持っていた創造性や希望を捨て去り重力に支配されるまま流されるように生きている。社会や国家といった強力な集団の万有引力に縛られて、私達は動けない。

 いつから私達は、見えない重力に可能性を押しつぶされてしまうようになったのだろうか。集団が大きければ大きいほどその引力は力を増していく。偏見と集団の圧力を取っ払えば個性が輝きだす。

 僕たちは何に縛られて生きているのか分からない。何をすればこの苦しい重力に支配された空間から逃げ出すことができるのだろうか。きっと、この大気圏を突破するにはとても大きなエネルギーが必要だろう。

 本当の自由は一体どこにあるのだろうか。

 全ての天体や物体には万有引力というものが働いている。だから完全に何の縛りも受けないことは不可能に近いだろう。でも、幼き日の僕に聞いてみたいと思うのだ。自由だったあの頃の僕に。

 僕はいつまでも、空を眺めて飛び立とうとする人間でありたい。

 すべてを吸い込んで捨ててしまう掃除機のようなこの集団の万有引力に、僕は負けたくないのだ。

 大気圏を突破した先には、とても綺麗な天の川銀河が待っているかもしれない。太陽にぶつかってしまうかもしれないし、隕石にぶつかってしまうかもしれない。呼吸ができなくなってしまうかもしれないし、もう元の場所に帰ってくることはできないかもしれない。そして別の天体の強力な重力に引っ掛かってしまうかもしれない。

 でも、飛び立った人にしか見ることができない美しい景色を、眺めてみたいのだ。僕は少しでも高いところを目指して、今日も生きている。


「重力になんか負けないぜ」と小さい頃の自分に笑顔で言ってあげたい。






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