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「目の前の仕事に全力で取り組む姿勢」が仕事をつまらなくしている可能性

目の前の仕事に全力で取り組むことはとても大事なことです。

目の前の小さな仕事にすら全力で取り組めない人が大きな仕事を任せられることはないので、私もよく新入社員研修で「コピー用紙の補充のような仕事でも”雑用”と思わず、全力で取り組みましょう」と教えていました。

ところがこの「目の前の仕事に全力で取り組む姿勢」が実は仕事をつまらなくしているのではないかと考えています。

以前ある企業で中堅社員向けに研修を実施したとき、受講者の皆さんは現場の業務を最前線で支えている方々であり、おそらく社内で最も目の前の仕事に全力で取り組んでいる層でした。

それこそ研修中も自身の担当業務のことが頭から離れず、休憩時間になれば多くの人が携帯電話で話しています。

電話の内容も営業職であれば顧客とのやり取りであり、事務職であれば業務のトラブル処理など、要は休憩中も思いっきり「仕事」をしているわけです。

中には研修中に堂々とPCを出して内職する人もいますが、まあ業務が忙しいのだろうなと思ってあえて目くじらを立てませんでした。

さてこの研修ですが、何か新しい知識を学ぶような性質ではなく、目的は「自分の仕事の意義に気づき、仕事に対する意欲を高める」ことでしたので、研修中に「皆さんは何を実現するために仕事をしているのですか?」と問いかけたところ、次のような答えが返ってきたのです。

  • 売上目標の達成

  • 予算目標の達成

  • 不良品の撲滅

  • 顧客満足の向上

そこで更に「それは何のためですか?誰のためですか?」と問いかけると多くの人は考え込んでしまい、それ以上答えが出てこなかったのです。

受講者の皆さんは確かに普段から目の前の仕事に全力で取り組んでいるものの、それは「会社や上司や顧客から求められたことに応えるため」という意識であり、言い方を変えると「仕事をやらされている」という感覚で仕事に取り組んでいたことがわかりました。

つまり「目の前の仕事に全力で取り組む姿勢」が自分自身の視野を狭め、目の前の「他人から与えられた目標」だけを見て仕事をしているため、仕事が受け身でどんどん面白くないものになってしまったのです。

様々な企業で中堅社員向けに研修を実施してみて感じたことですが、研修中も業務のことで頭がいっぱいになる人に限って、仕事を苦役として捉えているという印象がありました。

目の前の仕事に全力で取り組むのは確かに大事なことですが、それだけだと目の前の仕事しか見えなくなると「自分は何のために仕事をしているのか」がわからなくなり、却って仕事への意欲が削がれてしまうことがあります。

長い目で見て「良い仕事」をする人は「他人からやらされて」仕事をする人ではなく「自分自身がやりたくて」仕事をする人なので、ただ目の前の仕事に全力で取り組むだけではなく、「自分は何のためにその仕事をするのか」を自分自身に問いかけることも大事です。

もちろんすぐには「答え」は出てきませんが、今まで見えていなかったこと、気づかなかったことが一つでも見えてくると仕事に対する捉え方も変わりますので、現場の業務を担う忙しい中堅社員こそ「業務のことを考えなくていい時間」を作ってあげると良いかもしれません。

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