値段を聞いて商品を買わなかったことにケチつける革職人の話

一時期 twitter(現 X)で、
「クリエイターの値付けに文句を言う輩が多すぎる」
というツイートをよく目にした。

「原材料がかかってない」とか
「誰でも描ける」と言って値下げ交渉してくるというのだ。

それは拒否して OK だと自分も思う。

でもね、じゃあ「値段のせいで買わなかったりガッカリしたりするのは悪か」と言われたら、絶対に NO!
これは、クリエイター側が悪いか、客の個人的な問題なんだよね。

なのに、怒ってくる人に会ってしまった。
おそらくこの「値付けの問題」が飛躍しすぎて、行き過ぎた拒絶反応を起こしているのだろう、というのが今回のお話。


革の加工職人になんか知らんが怒られた

それは、レザークラフト店に行ったときのこと。

用事を済ますついでに、気まぐれで財布も見てみようと思った。そのとき使っていた財布は小銭入れのマチ(袋のサイドの部分)が裂けていたのだ。

できれば折り畳みで、小銭入れがガバッと開くタイプが欲しい。しかし探しても見当たらなかったので、店の人に聞いてみた。

店長「オーダーメイドなら作れますよ」

詳しい話を聞いたあとに値段を聞くと、やはり結構するようだ。(たしか1万5千円くらい)
オーダーメイドにしては安いほうだとは思ったが、こちらは予算が決まっているのであきらめるしかない。


話を終わらせるために、

自分「あー…やっぱり結構するんですね…」

とつぶやいたその瞬間、店長は急に態度を変えて材料がどうの時間がどうのと説き出した。

いまはそんな話をしているのではない。重要なのは、「こちらのお金がない」ということなのだ。

人の収入面に口出しされたくはないし、もしそれでも文句を言うのなら、収入も職場環境もいい仕事を紹介するくらいの責任は持っていてほしいものだ。


最終的には、「そんな客には商品は売れない」と一方的に言われて終わった。

この頃 SNS などで "値段に文句を言う客" に対する文句をつづる投稿が流行っていて、それに感化されたのかな……
とも思ったが、こちらも腹が立ったのでそのまま何も言わずに帰った。


「高い安い」の基準ってなに?

ひとは、いくつかの判断基準を用いて、商品が「高いか安いか」を考える。客目線で基準となるのは大まかに分けてつぎの5パターンになるだろう。

  1. 他の商品や店と比べて高いか安いか

  2. 用意できる予算に合っているかどうか

  3. クオリティはどの程度か

  4. 世間の需要数に沿っているか

  5. 客が商品にどのくらいの価値を見出しているか

今回の体験では、2つ目「予算」の項目に当てはまるが、これは店側が口を出せるものではない。
同じように4つ目「需要数」も、店単体がどうにかできるものではないだろう。トレンドや生活で決まってくるものだから。

つまり、これらの理由で客に文句を言うのは筋違いである。


上記で店が手を加えられるのは、
「他商品や店と比べて価格はどうか」(価格設定)
「商品のクオリティに価格が見合っているか」(技術の向上)
「客が価値を見出せているか」(広告 など)
の3つである。

これらは価格設定や製作者の腕、またはプロデュースがうまくいっているかどうかにかかっている。

結果、この3つも客に文句を言うのは間違っていて、結局は店側で何とかするしかない。

――――――――――

客がしつこく値下げ交渉をしてきたり、価格に関する理不尽なクレームをするのだったらわかる。
それなら客に文句を言いたくもなるし、言ってもいいと思う。

でもね、価格を見て買うか "悩む" とか "買わない" とか、そういうのに文句を言うのはさ、違うじゃん。

べつにケチをつけたわけでもないのに勘違いして否定してくるのは迷惑だからやめてほしい。


それとも、言葉の選択を誤ったのだろうか?

もしかして、
「あー…やっぱり結構するんですね…」
これがいけなかったのか?

もしそうなら、なんと言えばよかったのだろう。


「やっぱやめます、さよなら!」
とかなんとか言って、相手の怒りのボルテージが上がり切る前にさっさと去ってしまえばよかったのだろうか。

もしくは自分の心を殺して
「結構安いんですね」
とでもお世辞を言えばよかったか。

その後の展開を期待させてしまうせいで、さらに話が長引くことは目に見えているが。
結局買わないのに。
時間だけ奪って。


なんと返答すればよかったのかはその人の感性で左右されるものなので、自分ひとりで考えても、らちが明かない。

ただ思うのは「人間としてやり取りするのってややこしいね」ということ。
言葉の選択ひとつで機嫌をそこねてしまうことになりうるんだもの。


「誰かの言葉」をすべてに応用することはできない

色々書いたけど、つまりは
「こんなクリエイターもいるから、誰かの言葉をただ鵜呑みにして考えを固定化させないように気を付けようね」ということだ。

近頃は動画配信サイトや SNS でリーダー的な存在をまつり上げて、その人の言葉を妄信する人が増えているような気がする。

たぶん、正しさを簡単に手に入れたいというせっかちな気持ちと、失敗をしたくないから誰かに責任を取らせたいというズルい気持ちがあるためではなかろうか。

もし、ひとつの問題に対して的確な言葉があったとしても、すべての事象に当てはまるとは限らない。

似たような問題を無理にまとめ、「誰かの言葉」を当てはめるだけで想像や思考を排除するような "サボり癖" をつけないようにしたい。

自戒も込めて
それだけ


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