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rei reiのAIアートと創作の小部屋  ショートショート 小説 短文詩 今日思うことあれこれ

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黒猫と古家と相方さんと私と (生きるということ)

我が家は築40年を超える古家だ。                    住人同様にあちこちガタがきているが、それなりに踏ん張っている。 横長の古家に沿って細長い裏庭がある。 狭い庭に似つかわしくない大きな木が3、4本立っていて、夏に向けてこれでもかと言わんばかりに枝を伸し葉を茂らせる。あまりにも成長が早いので、何年かに一度は植木屋さんに頼んでかなりの伐採をしてもらうのだが、あっというまに枝を伸ばし夏には完全復活してわさわさと葉を広げる。 夏に我が家を裏から見ると、うちだけ森

    • Short Story 秋の星座

      初編 PM6:30 これも仕事。 そう自分に言い聞かせて座っていた。 会員制のラウンジバー。 一人の中年男のまわりにこれもまた中年の婦人達がとりまくように座って、さっきからやたらと嬌声を上げている。 男はテレビの某チャンネルのワイドショーの司会者だ。最近、歯に絹着せぬ毒舌とその物言いが茶の間の主婦達の人気を集めていた。 取り巻く婦人達は男の支援者なのか、後援会か何かなのだろうか。どの婦人達も今日のために特別にお洒落をしてきました・・と言わんばかりの奮発ぶりが透けて見える

      • short Story「Telepathy」

        今にも雨が降り出しそうな午後。  近くの公園に出かけた。本を一冊携えて。  肌寒い曇り空のせいか公園に人影はなかった。藤棚の下のベンチに腰掛けて本を読む。隣接した遊具場のジャングルジムのてっぺんに、一人の少女が両足を広げて立っている。 どれくらいの時間が過ぎたのだろう。 軽い足音にふと目を上げた。 目の前にさっきのジャングルジムの上の少女が、胸に絵本を抱え込んで立っていた。 勝気そうな目が真っ直ぐに私を見つめる。 少女は黙ってわたしの横に座ると、少し誇らしげに「えへん」とい

        • short short

          透明な時間 「分かったから・・起きるから・・。蔵之助。」 ベットの上に飛び乗って私の顔をペロペロと舐める蔵之助を両手で押しのけて起き上がる。 まだぼんやりとした頭で伸びをしながら窓のカーテンを開いた。 朝の光りが45度の斜線を引いて真っ直ぐに部屋の中へと入り込んでくる。 久しぶりの晴れだ。 この数日、雨が続いて散歩に連れ出してもらえなかった蔵之助は、今日こそは大丈夫・・と言わんばかりにせっせと尻尾を振ってスタンバイOK。 AM5:30 まだ目覚めたばかりの、太陽がしっ

        黒猫と古家と相方さんと私と (生きるということ)

          言葉と映像と音楽と 新しい表現のかたち 

          言葉と映像と音楽とのコラボレーション 新しい読書のかたちを、どうぞごゆっくりお楽しみください

          言葉と映像と音楽と 新しい表現のかたち 

          長編 Fragmentary Color 第5章〜最終章

          ※この小説は3回に分けて掲載しています。第1章からお読みください。 第5章 Haze Blue sky 少年の目は憎悪に近かった。 固く結ばれた薄い唇。ノーブルな鼻筋。 端正な顔立ちは育ちのよさをより強く表している。彼の好みそうな少年だ。 しなやかに伸びた長い手足は森を駆ける若鹿のようで。 「大人は汚いよ。嘘吐きで、ずるくて、巧妙で。あの人だってそうさ。 あんただって一緒だろ。その体で男を騙してきたんだ。あんただって唯のメス猫さ。 目の前の好物にむしゃぶりついてる、汚

          長編 Fragmentary Color 第5章〜最終章

          長編 Fragmentary color No.3〜No.4

          ※この小説は3回に分けて掲載しています。第1章からお読みください。 第3章 Heliotrope's night 「一緒にシャワーを浴びる?」 彼女の目が黒豹のように濡れている。 そんな時の彼女は震い付きたいほどにいい女だ。 わたしは返事をせずにカウチにごろりと横になった。 「ふふ 危険を感じた? 今。」   「充分感じた。一瞬鳥肌たったみたいに。」 「そう、それは良い傾向よ。鳥肌立つのも一種の快感のひとつ。わたしの波動があなたに少し近づいたってことね。」  ゆる

          長編 Fragmentary color No.3〜No.4

          長編 Fragmentary Color  No.1〜No.2

          あらすじ 女を愛せない男と、男を愛せない女と、そんな二人を愛する女の、絹布のようにすべやかで、哀しくて、柔らかな、関係。 1枚の抽象画に込められたたFragmentary Color。  第1章 夕すげの丘 ここはいつも静かだ。  春にきても、夏に来ても、秋にきても、そして冬に来ても。 小高い丘の森の奥にある彼の家は、そこにそっと建てられている。 まわりの自然を邪魔せぬ程度にそこに置いてある、というふうに。 男のひとり暮らしとは思えないほどの、清潔さに保たれた部屋はなによ

          長編 Fragmentary Color  No.1〜No.2

          古都小話綴り 後編

          うめもどき あなたは僕の目をそらさずに言う。 「あなたの中に、たえず何かを吐き出さずにはいられない欲求のようなものがあって、それがいくかの鋭い線や対立する色に、こころが交差しているのが伝わる。あなたは今、吐き出さずにはいられない沢山のものを、ここに引き摺り出す季節なのよ。 幾つもの季節を越えたら、きっと薄紙を剥がすように、ひとつひとつが剥がれて、どれひとつ不必要でないものだけが、有るべき処に有るようになる。 全ての記憶を、風の泣き声を、雨の叫びを、唯ここにいて、目を閉じ

          古都小話綴り 後編

          古都小話綴り 前編

          寒椿 不吉な花と嫌われても わたしは椿が好き 昨日まで赤い命を燃やしていても  今日には跡形もなく消える その清いまでの いさぎよさ が好き すべてのものに 一太刀の鋏を入れるようなその終わり方が好き あなたの指で触れた椿が  あなたの手のひらに コトリと落ちる 赤い椿はあなたの手のひらで  最後の息をするように くらり と揺れた あなたなら・・ きっとそうする あなたの揺るぎなく確かで美しい  決心 のかたちを 見たような気がして  その時僕は言葉をなくした 椿咲

          古都小話綴り 前編

          just moment

          second1 「あなたはこれまでに何人の男に抱かれたの?」  さりげなくそれでも興味深そうに言う男。  それもちょうど私がハンバーグを一口、大根おろしをたっぷりつけて口に運んだその時に。  私は肉がだめ。牛肉も、豚肉も、鶏肉も、すべてだめ。 どんなに高級と言われるステーキでも、その形状が、感触が、口に含んだときのふっと広がる匂いが、私の五感全部で受け付けない。 唯一、肉らしきものを食べられるのがハンバーグ。 だから肉料理が好きという男に合わせる時は必ずハンバーグ。それも大