「桃太郎、俺は鬼ではないぞ」
【#149】20211125
人生は物語。
どうも横山黎です。
作家を目指す大学生が思ったこと、考えたことを物語っていきます。是非、最後まで読んでいってください。
今回は、「『おかやま桃太郎ものがたり 吉備津彦と温羅』が面白い」というテーマで話していこうと思います。
☆岡山県に伝わる『桃太郎』
僕は今、新しい桃太郎をnoteで共同制作しようという企画を行っております。桃太郎の物語を更新した方がいいよねと思ったので、「共生」をテーマに再構築しようと思ったわけです。
そんなこんなで、最近は桃太郎の文献を読んでばかりの日々を送っています。
昨日は、どうして岡山県が桃太郎の街なのかという話をさせていただきました。今や岡山県と言えば桃太郎というイメージがあるかと思いますが、どうしてそこまで定着したのか、その秘密について語っています。
今回はそれに関係して、岡山県に伝わる『桃太郎』を紹介しようと思います。最初に言っておきますが、とっても興味深い内容です。
じゃんじゃんネタバレしていくので、先に話が知りたい方は、こちらから↓
☆『吉備津彦と温羅』のあらすじ
大和の国の吉備津彦は山賊たちにさらわれた妹を助けるシーンから始まります。妹を捕えた山賊たちはですね、吉備津彦に賭けを持ちかけます。
木に生えている桃二つのうち、右を射抜いたら妹を、左を射抜いたら自分の命を助けてやるというのです。
どうしたと思います?
吉備津彦は、こっそり二本の矢を重ねて、桃二つを打ち落とすという荒業をやってのけます。最強です(笑)
ってか、ここで桃が出てくるんかい!って感じですよね。
妹を救った吉備津彦は、射抜いた桃の種を持ち帰って、屋敷の門の前に植えました。やがて桃が成り、大和の国の人々は吉備津彦を「桃太郎」と呼ぶようになったのです。標準型の桃太郎では桃から生まれたからですが、この話ではこのようないきさつがあったんですね。
この後、標準型の桃太郎と同じような物語が展開していきます。
吉備の国で「温羅」という鬼たちが暴れまわり、村の人たちを襲っているという噂を耳にします。温羅は、渦巻く赤毛の持ち主で、「鬼ノ城」という城に住んでいました。
そこで、桃太郎は鬼退治に行くことを決意するんです。その理由としては、「吉備の国が桃をもたらしてくれたから」とあります。そうなんです。山賊との対決は吉備の国、つまり岡山県でのことだったんですね。自分と妹の命を守ってくれた守り神のように桃のことを思っていたわけです。
そんなこんなで桃太郎は吉備へ向かいます。共に鬼退治へ向かう家来たちを呼びつけます。
忠実で勇敢な「犬飼健」、
忠誠心のある「留玉臣」、
知恵の働く「楽々森彦」の三人です。
言わずもがなですが、イヌ、キジ、サルに通じるものがあります。
桃太郎は、吉備のある山の陣を構えて、温羅の住む鬼ノ城に向けて矢を放ちました。やがて桃太郎VS温羅の一騎打ちになります。力が互角で、それぞれが放った矢が空中でぶつかり、なかなか倒すことができません。そのとき桃太郎の頭によぎったのは、昔の記憶。
桃太郎は二本の矢を手に取り、放ちました。その一方の矢が、温羅の左目に命中します。温羅の目から流れた血が川の色を赤く染めます。
その後、桃太郎と温羅は動物に化けて逃走中を始めます(笑)
最終的には、鯉になった温羅を、鵜になった桃太郎がとっつかまえて、勝負あり。桃太郎は温羅の首をはね、首部という里の木の上に晒しました。
鬼退治は終わったわけですが、物語は終わりません。むしろここからです。
木の上に晒された温羅の首ですが、夜になると唸りを上げます。桃太郎は土かまどの下に埋めたのですが、それでも唸り声はおさまりません。
数年後のこと、桃太郎の夢の中に温羅が出てきました。そして、こう言います。
「桃太郎、俺は鬼などではないぞ」
温羅がいうには、百済の国の王子だったが、隣国との戦いに敗れ、仲間たちと逃げてきたそうです。逃げた先で漁師たちから鬼と間違われ、虐げられ、なくなく山の上に逃げたらしいんです。村で暴れまわっていたという噂が上がりましたが、それもただの噂にすぎなかったと主張しました。
そうなんです。温羅、すなわち鬼の正体は、人間だったんです。朝鮮人だったんです。彼らを「鬼」と呼んだのは、異邦人を受け入れなかった日本人だったんです。
桃太郎は温羅に促され、「阿曽の里」という場所に行き、真実を確かめに行きました。そこで、阿曽男という少年に出会い、「温羅は命の恩人」だという話をされます。熊に襲われそうになったときに温羅に助けられたり、鉄の農具や漁具をくれたりしました。里の人たちは、「鬼がつくったものなんぞ、気味が悪い」といって拒んでいましたが、実際に使ってみると、使いやすく、便利で、優れていることを認めました。
それ以降、温羅は村の人たちと心を通わせ、なんと、阿曽媛という女性と結婚したのです。阿曽姫は阿曽男の姉です。
ちなみに、面白いのが、ここで吉備団子が出てくるんですよね。温羅のいちばん好きな食べ物が、阿曽媛がつくった吉備団子だったそうです。胃袋をつかまれて、愛情が芽生えたわけですね~。
桃太郎は真実を知り、自分を責めたんですね。自分は阿曽媛から愛する人を奪い、吉備の国から希望を奪ってしまったのです。正義だと信じていたことが、誰かにとっての悪だったことに気付いたのです。
その後、温羅の魂と対話をし、お互いに国の発展のために身を尽くすことを誓い合います。温羅は、世界の吉凶を釜を鳴らすことで人々に知らせることを決め、桃太郎は、国民のために一生を尽くすことを決めたのです。
ラストシーンでは、桃太郎と、阿曽媛と、阿曽男と、空の彼方の温羅の四人の姿が描かれています。
☆僕の理想に近い物語
岡山県に伝わる桃太郎『吉備津彦と温羅』、いかがだったでしょうか? 僕は興味深い物語だなあと思います。昨日の記事で共有した「温羅伝説」が適度に反映されており、標準型の『桃太郎』の要素もあり、そして、僕が追求したい「共生」のテーマが扱われていました。
総合して、なんとなく、僕の理想に近い『桃太郎』だったなあと思いました。
今回のポイントをまとめておくと、、、
1、桃太郎は桃から生まれない
2、鬼退治の理由がちゃんとあった
3、温羅は鬼ではなく、外国人だった。
4、温羅は里に人々に慕われていた
5、温羅は結婚していた
6、温羅は悪さをしていなかった
7、絶対的な「正義」はない
8、共に生きる道はある
こんな感じですかね。
ということで、今回は、「おかやま桃太郎ものがたり『吉備津彦と温羅』が面白い」というテーマで話していきました。
作品に関する感想、新しい『桃太郎』についての意見などなど、是非コメント欄に残していってください!
「共生」をテーマに、『桃太郎』を一緒に作り直してみませんか?
興味を持たれた方は、是非、下のマガジンを覗いみてください。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
横山黎でした。
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