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    7日間ブックカバーチャレンジの記録。

最近の記事

7日間ブックカバーチャレンジを終えて

①本の紹介文を別途つける。 ②著者や出版年代、ジャンルなどがなるべく偏らないように本を選ぶ。 ③なるべく廉価(〜2,000円程度)で手に入れやすく読みやすい本を選ぶ。  チャレンジに挑戦する前、以上のようなマイルールを設けた(詳しくは「ブックカバーチャレンジを始める前に」を参照)。7日間このルールで続けてみた感想を記す。 ①本の紹介文を別途つける。  本の紹介文を書こうとすると、自然と読書に身が入るようになるものだ。紹介文をつける試みは、チャレンジを続けるための動機づけ

    • 7日間ブックカバーチャレンジ DAY 7

      トマス・モア(1516)『ユートピア』(平井正穂訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1957年/『改版 ユートピア』澤田昭夫訳、中央公論新社〈中公文庫〉、1993年)  「ユートピア(Utopia)」——人々に不思議な幻想を抱かせるこの語は、本書の著者トマス・モアが考案したものだ。日本語では「理想郷」と訳されるが、日本人はこの時代、まだ「理想」という語を持ち合わせていなかった。日本語の言葉として概念化され人口に膾炙するまでには、明治時代に哲学者の西周が"idea"の訳語として創り出す

      • 7日間ブックカバーチャレンジ DAY 6

        トニ・モリスン(2017)『「他者」の起源:ノーベル賞作家のハーバード連続講演録』(森本あんり解説・荒このみ訳、集英社〈集英社新書〉、2019年)  トニ・モリスンの小説を初めて手にとったとき、恥ずかしながら彼女がアメリカを代表する黒人文学の作家で、ノーベル文学賞をはじめとする多くの賞を受賞したことを存じ上げなかった。ただ、直截な言葉による現実の告発とその言葉に込められた虚構への安易な逃げを許さない凄みに圧倒されたのを覚えている。  人種問題に触れずしてアメリカの歴史を語

        • 7日間ブックカバーチャレンジ DAY 5

          世阿弥『風姿花伝』(野上豊一郎・西尾実校訂、岩波書店〈岩波文庫〉、1958年/『現代語訳 風姿花伝』水野聡訳、PHP研究所、2005年/市村宏訳注、講談社〈講談社学術文庫〉、2011年/『風姿花伝・花鏡』小西甚一訳、たちばな出版〈タチバナ教養文庫〉、2012年/『風姿花伝・三道』竹本幹夫訳注、KADOKAWA〈角川ソフィア文庫〉、2013年/佐藤正英訳注、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2019年ほか)  本書を読んだことがない方でも、著者の世阿弥という人物はご存知だろう。今か

        7日間ブックカバーチャレンジを終えて

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        • ブックカバーチャレンジ
          9本

        記事

          7日間ブックカバーチャレンジ DAY 4

          ガリレオ・ガリレイ(1610)『星界の報告』(山田慶児・谷泰訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1976年/伊藤和行訳、講談社〈講談社学術文庫〉、2017年)  独自の研究により多大なる業績をあげ、科学史に名を残した偉人たちがいる。ガリレオもそのうちの一人だ。  科学者に必要とされる重要な気質とは何だろうかと考えたことがある。それは、多くの人が見過ごしてしまう事実に「驚く」ことができる感性なのではないかと、本書を読んで思った。  誰しも子どものとき、自然が織りなす不思議な現象に興味

          7日間ブックカバーチャレンジ DAY 4

          7日間ブックカバーチャレンジ DAY 3

          ホセ・オルテガ・イ・ガセット(1930)『大衆の反逆』(神吉敬三訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、1995年/寺田和夫訳、中央公論新社〈中公クラシックス〉、2002年/佐々木孝訳、岩波書店〈岩波文庫〉、2020年ほか)  オルテガの言葉は、まるで鋭利なナイフである。時として攻撃的に感じるその表現は、端的に「大衆」が社会に充満している現象をすっぱ抜いて読者に知らしめる手段として、極めて有効に機能している。例えば、オルテガは大衆の特徴をこのように記している。 大衆とは、善い意味

          7日間ブックカバーチャレンジ DAY 3

          7日間ブックカバーチャレンジ DAY 2

          アルトゥール・ショーペンハウアー(1851)『読書について』(『読書について 他二篇』斎藤忍随訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1960年/鈴木芳子訳、光文社〈光文社古典新訳文庫〉、2013年ほか) 本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。(光文社古典新訳文庫、p.14)  この一文に代表されるように、本書は数ある読書論の中でも読書を批判したものとして有名だ。  「読書文化の普及に貢献する」という趣旨の手前、この本を紹介することは御法度だと思われるかもしれない。

          7日間ブックカバーチャレンジ DAY 2

          7日間ブックカバーチャレンジ DAY 1

          アルベール・カミュ(1947)『ペスト』(宮崎嶺雄訳、新潮社〈新潮文庫〉、1969年)  カミュは20世紀の小説家である。決してペストの時代に生まれ落ちた作家ではないし、歴史家というわけでもない。注意深く読んでみると、「ペスト」は疫病そのものではなく何かの換喩であると思われる場面にたびたび出会う。 彼はその記述のなかで、ペストは虚弱な体格の者は見のがし、特に強壮な体質の者を破壊するということを読んだのを思い出した。(p.65、太字筆者) ところが、この病気の畜生のやり口

          7日間ブックカバーチャレンジ DAY 1

          ブックカバーチャレンジを始める前に

           あらゆるSNS上で「7日間ブックカバーチャレンジ」の投稿が飛び交っている。初めてFacebookで見たのは4月末だったが、今やタイムラインに流れてくるハッシュタグは日に20〜30件を下らない。自分の周辺だけでも、わずか2週間でかなり広まっているのがよくわかる。  次々と参加者が現れて盛り上がりを見せる中で、いきおいこんな疑問が浮かぶ。 ● いつ、どのようにして始まったのか。 ● なぜここまで広がっているのか。 ● 何か問題点はないのか。 ● 参加にあたって、何に気をつけ

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