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7日間ブックカバーチャレンジ DAY 4

ガリレオ・ガリレイ(1610)『星界の報告』(山田慶児・谷泰訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1976年/伊藤和行訳、講談社〈講談社学術文庫〉、2017年)

 独自の研究により多大なる業績をあげ、科学史に名を残した偉人たちがいる。ガリレオもそのうちの一人だ。
 科学者に必要とされる重要な気質とは何だろうかと考えたことがある。それは、多くの人が見過ごしてしまう事実に「驚く」ことができる感性なのではないかと、本書を読んで思った。

 誰しも子どものとき、自然が織りなす不思議な現象に興味を抱いたことがあるに違いない。しかしその純粋無垢な好奇心は、往々にして歳を重ねるごとに薄れてしまう。その中でほんの一握り、消え失せぬ情熱を胸に秘め研究に没頭する者がいる。人生を研究に費やすそのような人々にとって、「驚き」は最大の報酬であると言っても過言ではないだろう。

 本文のみで100ページにも満たない本書は、一見すると星々の動きを極めて厳密に描写した観測記録のようだ。だが、これを執筆しているときのガリレオの高揚感が文体から伝わってくる。自作の望遠鏡を製作できたときの感動、月面の凹凸や数々の恒星の動き、木星の衛星の存在といった当時まだ誰も知らなかった事実を発見したときの興奮が踊るような筆致ににじみ出ているのだ。
 ガリレオにとって、「驚き」は研究を進めるための大きな原動力となったに違いない。

 我々からは地球の半径の六〇倍ほど離れている月の本体が、この地球の半径の二倍しか離れていないかのように近く眺められるというのはとても素晴らしく、視覚的にも心地良いものである。[…]
 さらに、銀河すなわち天の川についての論争に終止符が打たれ、その本質が、知性はもちろん感覚的にも明らかになったということが重要なものとして理解されるだろう。[…]
 あらゆる驚嘆をはるかに凌駕しており、すべての天文学者や哲学者に注意を向けさせることへと、何にもまして我々を駆り立てるのは、我々以前には誰にも知られておらず、観察されてこなかった四つのさまよう星を発見したことである。[…]これらすべてのことは、[…]私が考案した覗き眼鏡によって、数日前に発見され、観測されたのである。(講談社学術文庫版 pp.15-17、太字筆者)


 科学的真理の探究という科学者の態度についてもガリレオから学ぶことがある。当時のローマでは、数学や天文学はアリストテレス研究を第一とする哲学の学説に従わなければならず、その哲学はローマ教皇が認める神学の教義との整合性が求められた。その中で、ガリレオは数学や天文学の理論と経験に基づいた自然研究をすることを主張した。重要な学問的業績により科学の発展に寄与したことから、ガリレオは「近代科学の父」と呼ばれ、後年の書では「自然という書物は数学の言葉で書かれている」という有名な一節を残している。

 地動説を唱えていたガリレオは、第一次裁判で訓戒を受けた後、地動説について書いた『天文対話』を発刊したことで第二次裁判にかけられる。権威ある社会的言説に臆することなく自らの知的好奇心に忠誠を誓い、観測結果を基にした自説の立証に勤しんだガリレオには、科学者としての矜持を感じる。
 現代社会における科学技術の発展は、このような過去の科学者の活躍に負うていると知っておかねばなるまい。

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