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PT・OTの活動場面で治療課題を選択する基準

こんにちは。ReHub林です。

先日、自転車の整備をしました。
その前後で試しにバランスボードに乗ってみたところ麻痺足のコントロールが上達していました。あ、林は下垂足があります。

おそらく、しゃがみ込んだ姿勢で固定された自転車と関わるという上肢活動の中で足関節底背屈の制御が安定したのでしょう。

あなたが治療課題を選択する時、何を基準にしていますか?

治療の課題を選択する時、○○の疾患に対しては○○という風にルーティン化されていませんか?

それは「エビデンス」という免罪符に潜む罠かもしれません。

今回は、そんな治療課題の選択についての話です。

課題特性を真に理解して関われば何だって良い!!

結論から言うと、課題特性を真に理解して関われば何だって良いのです。

重要なことは、患者の動作障害の本質にアプローチできているかどうかという点に尽きます。
あなたが普段行っているアプローチの1つ1つは、その本質に至るものでしょうか?何よりもそれが重要なポイントなのです。

仮にボトムアップで評価した場合、異常とされる心身機能は膨大な数になることが常でしょう。
しかし、それら全てが立ち上がれない、服を着られない、トイレに行けない原因の根本的な問題かというと、そうではないはずですよね。

ここでは、捉えた動作障害の本質と課題をどうマッチングさせるかを、これまでに紹介した活動の要素(課題特性)から例を挙げますね。

更衣動作での例

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更衣動作では、衣服の接触刺激と身体反応について紹介しました。
(まだご覧になっていない方は👉コチラ)

この接触刺激に対する皮膚の反応が生じないことが問題と捉えた場合。
洗体動作などで、皮膚の上を通過させる刺激を入力してみるとよいでしょう。
そして、目的の身体反応が得られたなら、実際の更衣動作を評価してみましょう。

それで、動作が改善していれば、その患者が更衣動作で抱えていた問題は接触刺激に対する皮膚の反応が得られなかったことだと推察できますね。

ただし、その刺激を受け入れられるように、姿勢調節の援助が必要です。
また、そのためには身体の過剰固定部位などはある程度コンディションを整えておいてあげないと、難しいでしょう。

これらの二次的な筋緊張異常をどこまで整えた上で課題に移行するかは判断が難しいポイントですね。

この点は細かく説明しすぎると、今回のお題から脱線しすぎるので、また別の機会にします。

話を戻しますが、服を上手く着られないことに対して、服を着る練習をしなくても着られるようになる可能性があります。
それは、提示した課題が服を着られない問題の本質に対してアプローチできていればヒトの動作はおのずと変わるということです。


食事動作の例

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食事場面で、スプーンや箸の操作が上手くいかず、食べこぼしが多い患者の場合。

座位のコントロールが不安定で上肢の操作が困難になっていると評価したとします。そして、座位のコントロールについて、股関節や下部体幹を中心とした姿勢反応が得られにくいことが問題だと捉えたとしましょう。

この問題に対して、座圧変化に対して骨盤のコントロールを促すために、排泄動作を活用できるかもしれませんね。

臀部への接触刺激に対する反応を促通することで座位のコントロール能が向上し、食事場面での上肢操作も安定するかもしれません。

このように、一見全く異なる動作であっても、その際の姿勢制御において他の動作と本質的に近いものが多くあります。

一般的に座位の練習といえばリーチ課題がかなりの割合を占めていると思います。座位でのリーチ課題も骨盤の制御が要素として含まれますが、それが骨盤の制御が上手くいかない根本的な問題を解決するかどうかは、また別の話です。

食事動作の例 その2

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次に、同じ食事動作でも手指巧緻性について考えてみましょう。

手指末梢からのフィードバックが不十分で、スプーンの操作が難しいと評価したなら、安定した座位を提供した上での上肢課題を提示するのも良いでしょう。

場合によっては、机に肘をついて固定するなどして安定性を増した環境設定が必要かもしれませんね。
この時の課題選択のポイントはフィードバックで得られる質感の違いや変化です。

絵を描くならば、筆・クレヨン・色エンピツで質感は変わりますし、クレヨンは重ね塗りすることで滑るように変化します。

黒ひげ危機一髪のような玩具であれば、剣を刺し込んだ時に硬く明確なフィードバックが得られますね。
剣と差込口を合わせるという両手の協調した反応も必要になりますね。

このようにフィードバックとして入力される情報を課題によってコントロールし、それらの情報に対する能動的な探索を引き出します。そして患者の手指や上肢の制御、座位姿勢がどのように変化するのかを評価します。

食事動作時の身体反応についてはYouTubeで配信していますので、動画で確認したい方はご覧ください👉コチラ

課題はなんだっていいけど、何でも良くない矛盾

患者が抱える動作障害の本質にアプローチできれば何でも良いのです。と言いましたが、言い換えると、障害の本質にアプローチできていなければ、何をやっても上手くいかないでしょう。

何でも良いけど何でも良くないとはそういうことです。

結局のところ、障害の本質を捉える技術が不可欠ということです。

それが難しいんですよね。
生涯悩み続けることでしょうね。

動作障害の本質を捉えるコツについては、既に紹介しているため、以下リンクからご覧ください。

動作分析3つのコツ(上達するためのマインドセット)
悪循環を断つ!!障害の本質を捉えるトレーニング方法
障害の本質を捉える中で、いかに勉強会で得た知識を活用するか


○○をやれば患者が良くなる、なんて幻想が通用するなら我々の仕事はAIに取って代わられるでしょう。

人が人として活動できる未来のために、この記事が有意義なものになることを祈っています。

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