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ごっこ遊びで子どもに合わせてはいけない?

子どもの遊びの定番、「ごっこ遊び」。

ごっこ遊びとは、お医者さんごっこ、お店屋さんごっこ、家族ごっこ、最近ではアナ雪ごっこなどなど、非常に拡張性の高い遊びです。

お子さんのいらっしゃる読者さんは付き合わされた経験もあるでしょうし、自分自身も幼少時代にしていた経験もあると思います。

このごっこ遊びですが、実は非常に高度な認知機能を使った遊びなのはご存知でしょうか?

高度な能力を使うということは、子どもの認知機能の発達に重要な意味を持つということです。

今回のnoteでは、ごっこ遊びでどのような認知機能が使われるのか、発達のために大人はどのように関わることが良いのか、考えてみたいと思います。


ごっこ遊びは高度な遊び

では、ごっこ遊びはどのような構造になっているのでしょうか。

『お店屋さんごっこ』を例に考えてみたいと思います。

『お店屋さんごっこ』では、一人は店員、一人はお客さんという役割が与えられます。

お金を払い、商品を買う、というのが基本的なルール、構造かと思います。

実際のお金やお金を模したおもちゃがあれば良いのですが、ない場合にはその場にあるもの、積み木やブロックといったお金に似ていないものをお金に見立てて使ったりします。

これは『お店フレーム』(←筆者が勝手に命名)に基づいて行為を解釈するということです。

※『フレーム』はこちらの記事で紹介しているので興味のある方はご覧ください

『お店フレーム』で行為、この場合は積み木やブロックを渡すという行為を解釈することができれば、その行為は『お金を払う』という行為として解釈が可能です。

しかし、店員役とお客さん役との間で『お店フレーム』が共有できていなければ、この行為を『お金を払う』という行為として解釈することはできません。

このように、その場で実際に行われる行為に本来とは異なる意味を持たせる、そしてそれを解読し、共通認識を持たせる、というのは非常に高度な認知機能を用いたものです。

特に重要なのが、相手と『フレーム』を共有すること、そのためには相手に自分の意図を説明したり、相手が何を考えているのかを推し量ったり、さらには相手と自分の考えのすり合わせを行う、というコミュニケーションが非常に重要な遊びと考えることができます。


ごっこ遊びは社会性の獲得に最適な遊び

このように、ごっこ遊びは高度な遊びです。

イメージする、行為と意図を結びつける、行為に本来と異なる意味を持たせる、意図や目的を相手と共有する、相手の意図を推し量るなどなど。

これは全て社会性の獲得に重要な意味を持っていると考えられます。

先の例を取り上げると、自分は『お店屋さんフレーム』に基づいて積み木をお金に見立てているのに、相手が『お医者さんフレーム』に基づいて行為を解釈してしまうと、その積み木は薬になってしまうかもしれません。

このような齟齬が生じたとき、自分と相手の認識の違いに気づき、コミュニケーションをとって認識の違いを埋めなければ『ごっこ遊び』は成立しなくなってしまいます。

このようなことから、『ごっこ遊び』は社会性を獲得するのに最適な遊びであると考えることができます。


ごっこ遊びで子どもに合わせてはいけない?

社会性の獲得に最適なごっこ遊びですが、あまりにもスムーズに意図や『フレーム』が共有できてしまうと、コミュニケーションの練習にはなりません。

大人と子どもでごっこ遊びをする場合、子どもが事細かに説明しなくても、大人は子どもの意図をすぐに読み取ることができるでしょう。

しかしそこで子どもに全て合わせてしまうと、子どもは相手に意図を伝える重要性やコミュニケーションの重要性を認識することができません。

そして保育園や幼稚園で同年代のお友達とごっこ遊びをするときに初めて、自分の意図と相手の意図が違うという場面に遭遇し、葛藤することになります。

もちろん、ごっこ遊びを楽しむということだけを考えると、大人は子どもに合わせてあげても良いと思います。

しかし、社会性を獲得するための練習、認知機能を発達するための遊びというように『ごっこ遊び』を捉えると、大人は全てを合わせてしまうのは良くないかもしれません。


ごっこ遊びで大人はどう関わるべきか

そうは言っても、いきなり社会の厳しさ、コミュニケーションの難しさを突きつけてしまうと、子どもは『ごっこ遊び』が嫌になるでしょう。

そこで大人は適度に難易度を調整しながら関わることが重要になると思います。

例えば、渡してくれたものを「これは何?」と聞いて説明を求める。

〇〇くん(〇〇ちゃん)はお店の店員さん?と確認する。

お母さん(お父さん)はお客さん?と確認する。

慣れてきたら、わざと間違う。(お金として渡してくれた物を食べてみる、など)

少しずつ、自分と相手の考えは違うんだということを気付かせられる・教えられるところに、認知機能発達における『ごっこ遊び』の重要性があるのではないでしょうか。


まとめ

子どもの遊びの定番、『ごっこ遊び』について考えてみました。

『ごっこ』遊びは、社会性やコミュニケーションを獲得するため、認知機能の発達のために、非常に有効な練習(遊び)です。

大人は子どもの意図を汲み取ってスムーズに遊びを進めることができますが、子どもが葛藤することなくことが進んでしまうと、自分と相手の考えの違いに気付くことができません。

大人は子どもに全て合わせてしまうのではなく、わからないことはわからないと伝えてあげる、そして説明を求めるというスタンスで遊んであげるのが良いのではないか、というのが今回の提案です。

ただ、あまりにも自分の意図が伝わらないと遊ぶのが嫌になってしまうので、このような視点は持ちつつ、楽しく遊んであげてくださいね。(笑)


より深く学びたい方へ(書籍紹介)

子どもの感覚や認知機能の発達について

『フレーム』という概念について



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