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肩関節疾患-6つの評価とその解釈-

1)はじめに

皆さんこんにちは桑原です。

Instagram→@kei_6918

皆さんは、臨床に出てから、勉強はどの様に進めているでしょうか

書籍を読んだり、文献を探したり、日々研鑽に励まれてることかと思います。

そういった熱心な方々がこのnoteを手にとって読まれるのだろう。

そう思いながらこの記事を書いています。

今回は肩関節を勉強し始めた方

何を勉強すべきか悩んでいる方

或いは、臨床で行き詰まった方

そんな方々に

肩関節の評価を6つの側面から解説させていただきます。

これらの視点は肩関節疾患を臨床で担当する際に

様々な臨床推論や介入の土台となる内容です。

そういった地図であり、骨組みの様なnoteをお届けできたらなと思います。

ですので、この地図をどこへ進むか?

骨組みを得て、何を肉付けしていくのか?

それは、皆さんが臨床で出会う患者さん次第です。

先に述べておこうと思いますが

今回はいつもの様に臨床の細部までまとめるnoteではありません。

なので、読み進めていく中

細かい部分は外部リンクで過去記事を載せていきますので

気になる方は、そちらに進んでいただいて結構です。

むしろ、そこに臨床のヒントや答えがあれば嬉しい限りです。

その様な解釈で読み進めていただけたらと思います。

それでは始めていきましょう。


2)Red flagsの除外

肩関節疾患を評価する前に除外すべき項目が2つあります。

1つ目はRed flags(危険信号)
2つ目は頚部疾患です。

Red flagsから確認していきましょう

分かりやすく言い換えると

対象となる疾患に隠れる重要疾患を示唆する徴候や症状のことです。

基本的にこれを除外するのは医者の仕事であり、除外されてからリハ室に送られてきますが、リハビリ期間中にそれが起こる可能性は0ではありません。医師が見逃す可能性も0ではありません。医療機関で働く我々は、医師に守られていますが、

整骨院などで働く方は、その責任をダイレクトに負うことになります。

患者さんの異変を察知できるかできないかも勿論大事ですし

一度この知識をインプットしているか、していないかでも大きく変わってきます。


詳しくは以下の記事にまとめています。


3)頚部疾患の除外

続いて除外すべき項目は頚部疾患です。

頚部疾患由来でも、肩関節に症状が出るので

基本的にSpurling testJackson testで除外します。

デルマトームで支配領域を一度確認しておくと良いかと思います。

胸郭出口症候群(TOS)であれば上肢まで広く症状が出るのでわかるかと思います。これらも各テストで除外するとより丁寧です。

可能性の低いものは、感度の高い検査を用いて陰性所見を得ることで、より精度の高い鑑別となります。

ここまで早ければ数十秒で終わります。

なので、肩関節疾患の評価では

先ず、Red flags・頚部疾患を除外して肩関節疾患の評価に入ることがより患者さんの安全につながります。



4)肩関節疾患における疼痛の解釈

患者さんの来院理由は施設によって異なるかも知れませんが

整形外科外来では多くが疼痛が主訴かと思います。

痺れが主訴な方もみられますが、機能障害のみでの来院は多くありません。

ですので、1番多い”疼痛”の解釈はより必要性の高い項目です。

ここで、肩関節の疼痛を大きく分類してみます。

・炎症性
・求心性障害
・神経性
・構造的破綻

大体この4つです。
※全て明瞭に分類できるわけではなく、混在していたりする事も勿論あります。

レントゲンやMRIなど画像初見が得られて構造的破綻・器質的損傷が否定されていれば、除外していいと思いますが

そうでない場合は、この可能性が内在していることも視野に入れましょう。

仮に画像初見でそれらが否定されたと仮定すると


・炎症性
・求心性障害
・神経性
・構造的破綻

こうなります。

炎症性であれば受傷起点や疼痛発生時期の聴取で推測できるかと思います。

しかし、臨床を始めたばかりだと求心性障害と神経性の区別がつきにくいのです。

神経性の疼痛に対して評価をせず、求心性障害を理由に腱板のトレーニング漫然と続けてしまう。

こういった臨床を見かける事があります。 

なかなか変化も出ないですし、信頼関係構築もできません。

なので神経性の疼痛の評価もとても重要になります。

神経性の評価・介入は以下にまとめています。


5)肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節のスクリーニング

先ほどの評価は、疼痛を軸に捉えて評価する際の思考ですが

次はGH(肩甲上腕関節)とST(肩甲胸郭関節)を軸に捉えてどちらに問題があるかという視点での内容です。

GH(肩甲上腕関節)の問題かST(肩甲胸郭関節)の問題かをスクリーニングする検査があります。

肩甲骨補助テストSAT(Scapular assistance test)です。

以下のスライドでご確認ください。

先ず患者さんに自動で挙上してもらいその時の可動域制限や症状を確認します。

その後、肩甲骨を後傾・上方回旋方向に補助しながら挙上してもらう事で症状が改善するかしないかを評価をします。

補助時に症状が改善すれば、肩甲胸郭関節の異常運動の可能性が高いという評価です。

ただ、このSAT陽性の段階では、肩甲骨の上方回旋筋群の機能低下か、下方回旋筋群の柔軟性不足かの区別はつかないので、その先は細かく評価していく必要があります。


このGHとSTのスクリーニング検査は以下のnoteに詳しくまとめています

ちなみに、肩関節周囲炎などでは炎症期に肩甲上腕関節の介入は疼痛が強いため積極的に行えません。

肩甲胸郭関節は構造上、炎症が起こりにくく炎症期にはここへの介入がオーソドックスかと思います。

ですので、僕は臨床では炎症期がおさまりGHの介入が積極的に行えるといったタイミングまでにはできるだけSAT陰性所見をとることを短期目標にしています。

SATで陰性所見がとれたら、肩甲胸郭関節への優先順位を下げるという一つ目安になるかと思います。


6)可動域制限の解釈

肩関節のみならず評価時には必ずROMを評価するかと思いますが、このROMの評価で何を意識しているでしょうか?

ただ角度を測りカルテに記載しているだけではなく

可動域制限があればその制限の部位を想定する必要があり

正常な肩関節の動態との比較も大切です。

先に可動域制限時の制限因子をまとめていきましょう。

筋・靭帯・関節包を矢状面で4パートに分類してみました↓↓

例えばですが

肩関節外転時には下方軟部組織が伸長されるので、ここの柔軟性不足があると外転制限の原因になります。

屈曲時には後下方が伸長されます。

下垂位外旋であれば
下垂位→上方が伸長
外旋→前方が伸長

なので前上方組織が伸長するのでここの問題を疑います。

この様にそれぞれの動作で伸長する部位を頭に入れておくと可動域制限の解釈がしやすくなります。

以下のnoteに可動域制限の制限因子についてまとめてあります。

正常な肩関節の動態の理解という部分も述べましたが
肩甲骨の動態肩甲上腕リズムの理解も臨床につながります。
以下に外部リンク貼っておきます↓


7)骨頭偏位の解釈

これもよく聞く言葉ですね。

求心性の障害により骨頭偏位が起こる要因は大きく分けて2つあります。

・腱板の機能不全(フォースカップルの破綻)
・Obligate translation

順番に確認していきましょう。

腱板の機能不全によって支点が失われ、骨頭偏位が起こるのは容易に想像できるかと思います。

棘上筋と三角筋でよく語られるフォースカップルですが

肩関節内旋時の肩甲下筋大胸筋などもフォースカップルの関係と言えます。

ST(肩甲胸郭関節)に目を向ければ、前鋸筋と僧帽筋も共同して肩甲骨上方回旋に作用するので、これもフォースカップルの関係と言えるでしょう。

少し脱線しましたが、腱板の機能不全により支点が失われた時にどの様にフォースカップルが破綻するかを外転動作のみならず他でも考えると解釈が広がります。

もう一つの要因としてObligate translationがあります。
これは学校でも基本的に習いません。

Obligate translationとは組織硬度が高く骨頭の十分な滑り運動が生じず、骨頭運動軸が(骨運動の方向へ)偏位する現象です。

以下、スライドを確認しましょう。

例えばですが

肩関節下垂位内旋時に骨頭が前方偏位する場合

腱板の機能不全(フォースカップルの破綻)の視点
肩甲下筋の機能不全で大胸筋による内旋が優位になり前方偏位しているのか

Obligate translationの視点
後方軟部組織の組織高度が原因で後方へ骨頭を許容するスペースがなく前方へ変異しているのか

この2つを軸に考えてみると良いかもしれません。

以下外部リンクは、上方偏位の記事ですが他にも応用できるかと思いますので参考にしてみてください。



8)まとめ

以上、肩関節の評価を多角的な視点でまとめさせていただきました。

何か一つでもヒントになり、その先の介入につながれば嬉しい限りです。


よろしければサポートお願い致します😊 これからも臨床に活かせるnoteを綴れる様、努力します。