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VISI-ONEアクセラレータープログラム運営インタビュー~"見える"と"見えない"の壁を溶かすプロダクトで共生社会を目指す~

2019年10月から参天製薬(以下Santen)、日本ブラインドサッカー協会(以下JBFA)、一般財団法人インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーション(以下、IBF Foundation)の3者で「”見える”と”見えない”の壁を溶かす」をビジョンに始まったプロジェクト”VISI-ONE(ビジワン)”。
2022年3月にはVISI-ONEアクセラレータープログラムがSanten主導でスタートした。VISI-ONEアクセラレータープログラムは「"見える"と"見えない"の壁を溶かすプロダクト」を生み出すため、複数のスタートアップを採択し、実証を行う。
今回のアクセラレータープログラムについて、プログラムで目指しているゴール、社会課題解決への向き合い方を、参天製薬 森田さん(執行役員Core Principle & Patient Advocacy)、 斎木さん(Global Head Corporate Strategy)、アブディンさん(CSR室)(以下敬称略)、そしてReGACY Innovation Groupの桶谷のメンバーで座談会形式のインタビューを行った。

ファシリテーションはReGACY Innovation Groupの金子が務めた。
お話から分かったことは、"視覚障がい"という大きな壁を切り口にインクルーシブな社会をつくることへの強い意志だった。

眼科におけるスペシャリティカンパニーが掲げる長期ビジョン

はじめにVISI-ONEプロジェクトの設立背景について伺えますか?

【森田】
まずはSantenがどのような経緯でこのプロジェクトに取り組むに至ったかについてお話します。

森田 貴宏 執行役員 Core Principle & Patient Advocacy 参天製薬株式会社

日本だけでなく世界的に人生100年時代となり、目を酷使しながら生きる時代になってきております。世界的には約22億人が視覚障がいや失明に至っており、世界保健機関(WHO)や国連といった国際機関において、目の健康についての決議が採択されるなど重要性が増しています。
我々Santenは創業から130年以上という長い歴史を持つ眼科におけるスペシャリティカンパニーとして、世界のあらゆる専門性を取り込みながらグローバル展開し、世界的な課題を解決していきたいという目的を持っています。

2020年7月にSanten2030を策定し、今後10年間の長期ビジョンを発表しました。その中に「Become A Social Innovator」というビジョンを掲げ、世界中の技術・組織・人材を繋ぎ、”見る”を通じて人々の幸せを実現することを目指しています。
最終目的は眼の疾患や不具合に起因する社会課題、機会損失を削減することとし、それを実現するために3つのSTRATEGY(戦略)と4つのESG(環境・社会・ガバナンス)のマテリアリティも掲げています。

参天製薬株式会社 マテリアリティとサステナビリティ方針より

3つの戦略とは、Ophthalmology・Wellness・Inclusionの3つです。Ophthalmologyは眼科医療のイノベーションと眼科医療エコシステムの発展加速、
Wellnessはより良い眼の状態に向けた重要性認識向上とアイケアの推進、
Inclusionは視覚障がいに関わらずいきいきと共生する社会の実現というものです。
こうした戦略とESGを推進していくうえで、2020年にはJBFA・IBF-Foundationtと共に10年間に渡るパートナーシップ締結も実現しました。

本パートナーシップは単にブラインドサッカーを応援するだけではなく、視覚障がい者の就職、イノベーションへの参画など様々な分野への起点としていきたい、誰もが活躍できる社会にしていくための架け橋になりたいという思いが根底にあります。

JBFA,IBF-Foundationとはパートナーシップを締結していますが、どのような相乗効果が生まれていくのでしょうか?

【森田】
JBFA・IBF-Foundationとは、ミッションに共感してパートナーシップ契約を締結しています。そのうえで、Santenが事業として取り組んでいるのは「医療」のカテゴリーであり、その枠を超えていくことには難しさがあります。その枠を越えていこうとするとコミュニケーションを取るべき相手も変わってきます。医療のカテゴリーの関係性では成しえないこと、例えばJBFAが持っておられるコネクションや企業との連携などと弊社の事業アセットを組み合わせることで、実現できることに広がりが出るのではないかと考えています。

我々は単にお金の支援をするだけでなく、共に汗をかきながら一緒に目的を達成したいというところが、基本的なスタンスとなっています。その中でVISI-ONEプロジェクトについて語らせていただきますと、VISI-ONEはプロジェクトの中で3つのゴールを掲げておりまして、共通のビジョンのもとに達成していきたいと考えています。

1つ目は共体験です。視覚障がいについて知る、当事者はそれを教えるということも含め、お互いを理解することが1つ目のゴールになります。視覚障がい者も晴眼者も同じフィールドで、お互いが理解を深め合うことを考えています。

2つ目は今回のプログラムにも当てはまりますが、「見える」に関するイノベーションを創出していきたいと考えています。視覚障がい者の視点を活かし、社会の課題、解決するための製品やサービスを開発していく仕組みづくりがゴールです。

そして3つ目が視覚障がい者のQOL/QOV(Quality of Life/Quality of Vision)を向上させていく、この3つがVISI-ONEの大きな目的になります。

当事者の視点からプログラムを拡大し、社会課題に挑戦する

今回のプログラムついて、参加されている皆様からもお言葉を頂けますか。

【森田】
STRATEGYの中のInclusionの部分で、事業の観点での捉え方には今でも悩み続けながら進んでいます。事業だけを目的にするのではなく、真の意味で人々が共生していく社会を作るということ、そこからどういったものが出来上がっていくのかという最終形はまだ見えてはいません。様々な観点、特性・特色、能力の方が集結していくことで、新たなサイクルが生まれ、これまでの発想の枠を越えたものが出てくることを期待しています。そしてSantenとステークホルダーの全てにとって益になることを見定めていきたいと思います。

【アブディン】
私は視覚障がいの当事者としての視点から、感じていることを語らせていただきます。世の中が便利になってきました。しかし「視覚障がい者」を主語としたときには、便利にできる技術はあるにも関わらず、十分に進んでいないと感じています。

Mohamed Abdin CSR室 参天製薬株式会社

視覚障がい者にとって便利なものは晴眼者にとっても便利であるということもあると思うので、実態としてそうなっていないことに歯痒さがあるとともに、大きなチャンスが眠っていると感じています。

例えば、書籍を朗読してくれるサブスクリプションサービスも登場しています。
これは元々目の見えない人にも読書を楽しんでもらうことをコンセプトにしていました。

目の見えない人をターゲットにしていたサービスが、結果として眼の自由/不自由に関わらず求められるサービスになっている。この分野は、このようなケースを生み出せる可能性を秘めていると考えています。

今回実施するアクセラレータープログラムに関しても、私のような当事者がインサイトを提供することで、痒いところに手が届くサービスの開発に貢献できるのではないかと考えています。
今回のアクセラレータープログラムの概要について、スケジュール設定も含めて教えてください。

【斎木】
今回のアクセラレータープログラムは、VISI-ONEの「“見える”と“見えない”の壁を溶かす」というテーマに従い、6つの事業領域から新たなサービス、ソリューションプロダクトを創出する企業・団体をサポートしていくプログラムです。

斎木 陽子 Global Head Corporate Strategy 参天製薬株式会社

アクセラレータープログラムは世の中に沢山ありますが、本プログラムではビジネスモデル作り支援に加えて、アブディンも含めた視覚障がいのある当事者、趣旨に賛同してくださる企業もメンバーに加わります。当事者が使いやすいより良いプロダクトを創出するためのご支援をいたします。またどのように社会に実装していくのかというところまで一緒に考えていくプログラムとなっています。

 プログラムは2月末にアナウンスを行い、4月18日までを募集期間としています。そこから選考を行い、6月頃に一緒に取り組んでいく企業を5社程度に選考いたします。さらに7月から9月までの3か月間でSantenも伴走して、ビジネスモデルの精緻化、実装の検討、投資家との橋渡しなどをサポートしていきます。終了後にはデモデーを設けて成果の発表を行い、ステークホルダーの方や投資家、企業の方に広く成果を見てもらう機会とする予定です。

※スケジュールについて詳細はHPをご確認ください(https://www.santen.co.jp/ja/accelerator-program/application.jsp)

本プログラムの特徴、スタートアップが参加するメリット

VISI-ONEアクセラレータープログラムの特徴、スタートアップが参加するメリットを教えてもらえますか?

【桶谷】
本気で事業に結びつくインクルーシブなプロダクトの開発が出来ること、これに尽きると思います。しかし、応募企業の意志だけで、実装にあたる論点を考えずにプログラムに入ってしまうと、実証に結びつかないというケースが少なくありません。

桶谷 建央 Consulting Manager ReGACY Innovation Group

今回は実際にリアルアセットを持っている大企業、デベロッパー、運輸関係の企業と実証パートナーとして連携することによって、現実的に直面している課題に向き合うことができます。さらに、アブディンさんのように当事者の方もアドバイザーとして招聘されています。サービス・プロダクトのどういう部分に不公平さ、壁となっている、損なわれていると感じているかという視点も、実事例としての話を交えながら乗り越えていけるので、課題解決に則した考えで実現性のあるプロダクト開発に結びついていくと期待しています。

結果として、応募企業のサービス・プロダクトが、本当の意味で課題解決のイノベーションとなり、かつビジネスに結びつくサービス・プロダクトの開発に繋がっていくと期待しています。社会課題解決に取り組む企業、新たなプロダクトを創出する喜びを二人三脚で分かち合いたいと思いますので宜しくお願い致します。

運営メンバーからの意気込みとメッセージ

最後に皆さまからそれぞれ、今回のプログラムに向けての意気込みや参加者へのメッセージをお願いします。

【斎木】
「インクルーシブ」をテーマとして事業に取り組まれているプレイヤーはたくさんありますが、なかなか上手くいかない、スケールアップしない、社会実装されないなどの課題を感じている企業も多いのではないかと思っています。今回のアクセラレータープログラムはそういうところを変えていきたいとの思いからはじめています。
社会課題はとても大きいもので、一つのソリューションですべてを解決するということはできませんが、我々が何か一つの成功事例を皆さんと一緒に作っていくこと、それこそが世の中を変えるきっかけになるのではないかと期待しています。今回のプログラムに関わり、事業を立ち上げていくプロフェッショナルの方々とスクラムを組んで、スタートアップの皆様のプロダクト創出を支援していきたい、そういう思いでおります。ぜひどんなに小さなアイデアでも構いませんから、応募していただけるとありがたいなと伝えたいです。

【アブディン】
社会課題に挑戦されている方はもちろん、「もしかしたら自分のアイデアが社会の課題解決に役立つかもしれない」と思っている方は、ぜひ応募してほしいです。
そのアイデアを私達は全力で検証、サポートしていきます。自分の技術、サービス、プロダクトを広めたい、販路を広げたい、でも構いませんから興味を持ってくれたのなら応募していただけると嬉しいなと思います。小さなきっかけでも大丈夫ですから、今回のアクセラレータープログラムを入口にユニコーン企業を生み出す、そのくらいの野心を抱いて挑戦してほしいと思っています。

【桶谷】
インクルーシブな社会の実現には、非常に大きな経済的な価値があって、社会にとって求められているものなのだということを、スタートアップのみなさんには深く感じてもらいたいです。

シンプルに「社会にとって良いこと」ということに閉じず、ビジネスモデルとして経済的にも取り組む意味がある分野であることを示すことを通じて、インクルーシブな社会を実現していけたらと考えています。
社会的にも価値のあるものを実証していくアクセラレータープログラムは、実はあまり実例がありません。

今回は”見える”と”見えない”の壁が一つのテーマではありますが、今回のアクセラレータープログラムの取り組みを一つのモデルケースにしていきたいです。

【森田】
社会課題を解決するための実装策として、色々な企業に参加していただきたいという思いもありますが、本当にモノを形にしたいという強い意志がある方に参加してほしいです。

今回のアクセラレータープログラムはこれまでにない独自の価値を提供する、先駆者的な取り組みにできればと思います。本当に熱い気持ちを持ってやる気のある人が集まっていただければ、一緒に分かち合える喜びを必ず作っていけると思いますので、ぜひそういう人に集まっていただきたいです。


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ファシリテーション・構成・編集・デザイン
金子佳市(Job Manager / ReGACY Innovation Group)
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関連リンク

VISI-ONEアクセラレータープログラム HP
https://www.santen.co.jp/ja/accelerator-program/application.jsp

VISI-ONEアクセラレータープログラム 応募説明会
https://www.youtube.com/watch?v=ksNh8hROsCQ


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