居場所を与えられる仕組み
武蔵野美術大学大学院造形構想研究科
CL特論II:オンライン授業8回目
2020/7/6
大橋 磨州さん
若杉先生3コマ目
若杉先生が企画されている屋台大学のゲストとして登壇されると聞いてから気になりつつ参加できなかったので、オンラインのゲストに来ていただけて嬉しかったです。(今年コロナ前にリアル開催できた唯一の回だったそう)
今回は屋台大学でお話された内容とはまた違った様ですが・・・
▪️こんな人
▪️こんな街
▪️こんな店
というテーマを二通りで紹介されました。
まさに視点を変えて別の角度からリフレーミングされている今までにはない紹介スタイルでしたが、印象に残りやすいと感じました。
同じオンラインの講義でも二通りの伝え方をされていたので、屋台大学ではどんな伝え方だったのかますます気になりました。
屋台大学さん、アーカイブ化も是非お願いします!
まず、若杉先生からご紹介を兼ねて、
企業と社会と経済の役割に視点を絡めて導入説明が・・・
はみ出す魅力・人の力
直線的視点ではなく、社会関係的視点でやっているのでは!?
小さい豊かな、コミュニティの創造
アメ横は江戸時代からの公私の境がないはみ出す縁側文化・シェア型社会
ワークシェアリング 小商いのネットワーク
江戸時代の仕事は凄い(蛍売り、すたすた坊主・親孝行とか)
8つの資本(キャピタル)について説明がありスタート
呑める魚屋 店主 魚草
人、店、市、街。
▪️こんな人
1982年 横浜市生まれ 38歳
慶大文学部→東大文化人類学研究室(中隊)→アメ横 魚屋
2013年 呑める魚屋「魚草(うおくさ)開店
(アメ横では、東大くんと呼ばれているそうです)
▪️こんな街
・東京の玄関口
・「日本一の商店街:アメヤ横丁
・闇市にルーツを持つ安売りの街
・たくさんの個人事業主、商売人のメッカ
・豊富な品揃え、商品知識
・ケバブ、小籠包、タイ料理・・・外国人屋台
・立ち飲み屋が軒を連ねる人情の街
・歳末大売出し
若いカップルがカットフルーツや、ケバブとか・・・
歩いて見てまわるまちになっている
個人事業主が元気よくがんばっている 小さい店で
外国人経営の店も多い
年末は密だらけ・・・
▪️ こんな店
・2013年 9月開店
・今すぐ路上で、魚屋の店先で」立ち食い、立ち飲みの出来るお店
・剥きたての生牡蠣
・三陸直送の海鮮、厳選の日本酒
・サメの心臓、エイの肝、あん肝の刺身
・歳末は物販店に「変態」
開店前のシャッターしまったところ
黄色い線
オープンすると人がいてお店に見える
店の半分で蟹を売っていて、半分で飲む
お店の横のスペースに蟹を積み上げている
3畳から4畳ぐらいのスペースしかないので
年末にアメ横に押し寄せる人は半端ない
カニが投げるようにたたきつけるように売れちゃう
お札が飛んでくるような状態で・・・
Amazon?
楽天?
冗談じゃないぜ。
アメ横一が日本一。
どうやら、アメ横スゴイもの店を選べば買えるみたいだぜと
読売新聞の一面に出た
狭い店だけど、7年やって学生とかフリーターとか、働きに来てくれて
接客業を経験してきた子達でも、マニュアルがない接客とか、人との近さとかに、こんなアルバイトは初めてですとか、楽しいと言ってくれる。
就職したメンバーが週末だけとか、年末に戻ってきたり、働いた実感を得られるようにと戻ってくることも!
ある種の語り方 お店の紹介の仕方
メディアに出ている
◾️こんな人 もう一回語りなおしていくと・・・(リフレーミング)
・高校→大学 演劇に打ち込んだ青春
・暗黒舞踏(前衛的)、民族芸能研究(文学部で)秋田県西馬音内盆踊り
ダンスのルーツをもとめて盆踊りに言ったら↓頭巾で顔が見えない
・過疎地に訪れる15万人の観光客 フィールド調査して卒論にまとめた
・無名性、パフォーマンス
・研究者の道の挫折
フィールドはよかったけど、周りは頭のいい人ばかり
横浜から上野に飛び出して、年末にアルバイトを探さないと、となり、何もわからず飛び込んだら歳末の人だらけの有様だった。
たらこ千円、とか怒鳴ってこいと言われた。
ステージに立つ感覚で、観客が押し寄せている秋田のを感じた。
何かの祭りに参加しているような感覚で、
普通の祭りに参加するとコミュニティがあって前列になかなか立てないのが
アメ横では、演じればいい
居場所を与えられる仕組みにビックリした!
ここに自分の居場所があると感じて、働き続けることになる。
実際に働いてみて、さてどうだったか?
魚屋で6年働いてみると・・・さくっと話したけど
すべてはったりのアメ横
営業中からペットボトルに入っているもの飲んでても中は焼酎だったり
生きるか死ぬかギリギリのところでやられていた
日曜日はざわざわして、今日のメインレースは何だと
◾️こんな街 もう一回語りなおすと・・・(リフレーミング)
・江戸の鬼門、東京の辺境。ここから先は江戸ではない。(東京の玄関口)
・魚がさばけない魚屋(実は、働いている人はほとんどさばけない)
(魚の知識やさばく方法も必要とされてない 余計なこと考えないように)
・「築地のごみ箱」(全国から築地に集まり売れ残った魚をアメ横が買う)
・行き場のない、居場所のない人
上野に流れついた人がやっていたり、来てはいなくなるのが当たり前
ベタベタした関係性はない
・店から店へ 素行が悪くてもアメ横の中で他の店で働いていたり・・・
・「○○○○円のマグロが、今だけ1000円!」 一皿で千円という売り方
頭の中では、なんて懐の広い街だと思いながら、大丈夫か俺?となった時に
ガイアの夜明け事件が!
彼女にガイアの夜明けに出てるよと言われて見たら、日本の漁業を救えという特集で、愛知のプロスパーという会社がミニ幼魚でどうせ捨てる魚を安く買うのではなく、高く入札して魚価をあげて漁師が儲かるようにするというやり方で、今まで価値がなかったものを
グラフのバックに流れていた映像がアメ横で安売りされている映像だった。
店頭でニヤニヤしながら千円、千円と売っていた自分が写っていて、当時の彼女だった奥さんがスゴイと言ってくれたけど逃げ出したいオモイだった。
こんなところに自分の居場所があったと働かせてもらっていたんだけど、
これは先がないなと水産業の未来を語っているような番組の話を聞いて、
(このやり方は先がないと言われて、これはやばいぞとすぐに思った!)
魚屋で独立してもあの場所でやっていくのは難しいと思っていたのもあり、
魚にかかわりつつ、魚をその場で食べさせられるお店があればと、飲食店で修行して魚も捌けるようになって、三陸の漁師さんを訪ねて行って・・・
何か新しいお店をはじめるにあたって、自分の仕事に懐疑が欲しかった。
つきあっている会社がどんどん倒産していく水産の生産者との付き合いしかなかったのが、生産者の力にもなるように商売をやりたいと震災が終わってすぐでもあったので、三陸の魚を売って三陸の漁師さんに喜んでもらって、三陸からの玄関口である上野で売るんだ!と
最初は売れなかったので、牡蠣をその場でむいて食べられるようにしたら、珍しかったのか牡蠣1個なら買ってくれるようになって、魚を買いながら店で色々と試して(店先で演奏会をしたり)
でっち上げからスタートして、お客さんの反応を見ながらやっていって、
今では店で売る商品を開発したり・・・できるようになってきた。
配管工がイラストを作ってくれたり・・・
音楽作品を家で黙々と作っていたり・・・
作品をテーマにした作品を作ってくれたり
音楽作品もBGMとしてかけていたり・・・
中澤大輔さんに作ってもらったのも音楽作品
音楽と酒 隠し小部屋に案内されます
音学+酒 1000円 店の壁に扉を作って、扉の中に案内されて
扉の中に入って、音学作品をきくという作品
PASSAGE AMEYOKO
なんで、二人のアーティストに頼んでやっているのか?
(コロナがあって余計に思っているんだけど)
なんでお店をやらなくちゃいけないのか、
2ヶ月お休みしていて、ネットで販売して、常連さんからたくさん注文してもらっていた。若杉先生にも買ってもらっていた。
お家で魚草を楽しんでください。
そうなってくると、
何の為にお店にきて飲み食いしなくちゃいけないのかとなってくる・・・
街のため?この街に強烈にひかれてやってきた
どこにも居場所がなかった人を受け入れたり、居場所を与えるような一部になるための仕事をしたいというのが今のお店のモチベーション
魚やお酒は売っているけど、実際は居場所を作るためにやっている
盆踊りの話もしたように、どうしようもない人だけど、5千円のまぐろが千円でいかされているおじさんとか、居場所を作るというのはそういうこと。
居場所はインフラみたいなもの
インフラはどういうふうにできているのだろう?
分解していくと・・・5000円と書かれた大トロのネタだったり・・・
人に居場所をもたらすものはなんなんだろうというのがテーマ
そのために、アーティストの人に作ってもらったりしながら考えている
若杉先生が最初に図で説明してくれたように、
闇市や東京とか周辺の文化的背景があって、全てが今、アメ横の背景にある
歴史とか背景でできているインフラはすぐに簡単にはできない
失われてしまえば、もう一度つくるのがすごくむずかしい
だからこそ、この場所に留まってお店を続けている
まちの文化を残すとか守るともちょっと違うんだけど
若杉先生がまとめると・・・うすっぺらい話ではない
文脈を引き継ぎながら、社会の文脈をどういうカタチでリデザインしていくかという視点が欠けている
人がおりなす価値 モノに頼るとアマゾンでいいじゃんになるけど・・・
これから先に必要な気がして
行ってみたらわかる 内包している意味が伝わってくる
それを伝えたくて今日は大橋くんに来てもらったんだと若杉先生。
若杉先生が来てくれた時にも感じてもらったように
人と人が触れ合って、いいお店だと思ってもらえる
マニュアルにしばられることがなく、自分を出して接客できる楽しさ
人間力とか人間らしさとか接客で言われるけど、
人間らしい接客の仕事は残る 人間性を商品化する
やばいステージに入っていってる
アメ横で見てきたのは全く逆で、今は不倫すると仕事もダメになる時代
この人、ほんとうに人間性はクズだという人たちが、とりあえず魚屋のふりをするとか、武器をもとにして居場所を与えられているのを見てきている
仕事としての魚の話をしていればよくてプライベートの話をしないですむ。
人間らしい仕事と言わないでくれ!逆説的に言っている。
人間らしさをどうやって守っていくことになるか
人間らしさを商品にするトリックにだまされないように
盆踊り 顔は出さない 無名性 内面はださない ステージにあがって
居場所を与えられて 踊りを15万人に見てもらう 強烈な体験
自分をさらさない アメ横もそうだった
自分をさらさなくても魚屋のふりをするだけで居場所があった
盆踊りは文化がインフラになって居場所を作っているのかもしれないけど
社会のインフラにはまると 仕組みのデザイン 新しい生業が必要
音楽と一杯千円も
学生から質問があればチャットで・・・
Q. 文化人類学の知見はお仕事にいかされてますか?
A. 文化人類学的視点でこの道につながったのでは。
Q. アフターコロナではどう続けようと思ってますか?
A. いままで20人くらい入っていたところを10人にしたり
お店に人を呼んでいくのではなくて、町全体をお店にしていく
あの店に行ってみようとか、蓮を見に行ってみようと思ってもらえる様な
体験が豊かになるような仕掛けを
体験をデザインしていけたらなと思っている。
アメ横に居場所を見つけた大橋さんとは・・・
ご自分の体験もリフレーミングして伝え上手な
豊かな体験をデザインする仕掛け人でした!
リアル店の仕掛けも体験してみたくなりました。
昨年後期に受講した学長の英語の授業Contextual Studies-1で、それぞれのエリアで違和感があるものを探してくる課題がグループ毎に出て、私は上野でした。留学生メンバーが多い授業ならではの視点でアメ横の違和感を写真に撮ってきた例も思い出しました。アメ横は海外からの留学生もウエルカムされる仕組みが満載で、魚草さんに寄り道するとさらにディープなアメ横の魅力や体験エリアも見つけられそうだと感じました。
アメ横を舞台だとリフレーミングして行ってみます。
ありがとうございました!