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「8歳で80年生きた天使」〜プロジェリア症候群の娘と生きた8年 No.9

ママが髪の毛なかったら…ママはどう思う?

年齢を重ねるにつれて、自分の髪の毛がないことをりさが精一杯受け止めていたのはわかっていました。
家ではフェイスタオルをかぶって髪の代わりにしてヘアゴムで結んだり、三つ編みのついたカチューシャをつけたり…そして、大好きなバービー人形の髪を綺麗に三つ編みして遊んでいました。
私は、そんなりさの様子を見るのが本当はとても苦しかったのです…
でも、「りさはもっと辛いんだから私は笑って明るくしていないといけない」と自分に言い聞かせていました。
私の髪の毛を、触ってくるりさ…りさの気持ちを受け止めようとする思いで必死でしたが、私の心はとても複雑でした。

NLP心理学やコーチングを学んで、当時の自分の心と体の状態が、今、やっと理解できています。
後悔や反省はたくさんありますが、自己理解ができたおかげで随分と自分を許すことができています。しかし、今の私だったらこうしてあげたかったという思いにも駆られています。
 
 その思いの中でも一番してあげたかったことと、大きな後悔があります。

りさが小学校2年生の時に突然、「ママが髪の毛がなかったらどう思う?」と聞いてきたのです。あまりに突然のことで私はどう答えたら良いのかわからず…
「ママの作ったご飯をたくさん食べていれば生えてくるから大丈夫なんだよ」と答えをごまかしてしまったのです。その時のりさの反応は「ふ〜ん」って感じでそれ以上私に問いかけることはしませんでした。きっと、髪の毛が生えてこないことをわかっていたのだと思います。だから、私を困らせたくないという思いや、私に聞いても望んでいる答えは返ってこないと感じたのでしょう。
そして、それからは1回も聞いてきませんでした。
りさはそれまで、自分の病気のことや髪の毛がないことで私に感情的になったり、苦しい、辛いということをほとんど言わない子でした。
その子が、「ママが髪の毛がなかったらどう思う?」と聞いてきたことはとても大きな意味があった…今思うと、私に本当の気持ちの辛さや苦しさ、お友達にはあってどうしてりさにはないの?という、どうしようもない感情を私にわかって欲しかったのだと思います。そして一緒に気持ちを共有して欲しかったのだと思います。

今の私だったら「ママだったら、髪の毛があったらいいのに…って思っちゃうな…りさはどう思ってるの?ママに本当の気持ちを話してくれるかな?」って娘の心の中にある抑圧している感情を吐き出させて、お友達が羨ましい娘、髪の毛がなくて辛い娘、悲しい娘すべての娘を抱きしめて2人で気持ちを共有すれば娘をもっと楽にさせてあげられたのではないかと思うと、どうしようもない思いに駆られます。
娘に苦しみを1人で背負わせてしまったのです。
あの頃の私にはそこまでのことができなかったのです。

言い訳になってしまいますが、当時を振り返ると精一杯だったのだと思います。
しかし、娘が本当に聴いて欲しかったことを私は聴いて受け止めることができなかったのです。娘が一番辛いとわかっていながら、自分もとても苦しかったのです。
だから、これ以上聴けない、向き合えないって自分の心を守ってしまったのだと思います。しかし、このことは一生忘れてはいけないと思っています。
そしてこの経験があったからこそ、今の自分の仕事に繋がっているのだとも思います。いつか娘に会えた時に「あの時はごめんね」って伝えたいです。

この想いが両親への想いを変えてくれた

 本当の気持ちをわかって欲しい、ネガティブな自分も受け止めて欲しい…
私は子供の頃から、自分の本当の気持ちを親に受け止めて欲しい、ダメな自分も認めて欲しいという欲求がありました。今思えば、受け止めてくれていたこともたくさんあったのですが、いろいろな状況があって「私は頑張っていないと認められない・ダメな私は認められない」という価値観ができていました。でも、人はずっと頑張り続けるなんて無理なんです。頑張れない自分もいるから、バランスが取れて病気にならずに済むのかもしれません。

私は両親に対して、親なんだからネガティブな私を受け入れてよ、いつも頑張ってられないんだよと思っていましたが…
親であった私は、娘のネガティブな感情と向き合うだけの心の余裕がなかったのです。でも、娘のことはとても大切に想っていました。
そう思った時に、両親への想いが変化しました。
私は愛されていたし、今でも愛されているんだって…
そう思ったら、両親との楽しかった時の思い出が今までよりたくさん思い出されてきたのです。
そして、家族それぞれのその時の思い…
いろいろあったけど、根底には愛情があったと思えています。
そして今もです。

娘は今でもずっと、はかり知れない大きい愛で包んでくれているんだなと感じずにはいられません。



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