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☆詩-4 やさしさ

「身体に気を付けて」
 風邪やインフルエンザが流行る冬時期定番の言葉だった。
「はい。これあげる」
 職場の人が旅行の土産で、皆に配っている小さなお菓子をくれた。
「今日は寒いからお鍋」
 当たり前のように思えるが、作ってくれる有難み。
「おとーさん、おたんじょうび、おめでとう!」
 ついつい忘れてしまう自分の誕生日を祝う家族の声。
「おやすみ」「おはよう」
 就寝と起床の声。一人じゃない証の交わしあい。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」
「ただいま」「おかえり」
 温かく、やさしい空間。

『やさしさ』はどこにでもある。
 不意に現れたり、当たり前のように日常化したり。
 勿論人から与えられるだけでもない。

 窓から柔らかに注ぐ旭光も、
 穏やかに吹く涼風も、
 心地よく響く虫の音も、
 薄茜に染め、懐かしく思わせる夕陽も、

 自然界における現象も捉え方一つで癒される『やさしさ』になる。

 一つ一つの『やさしさ』が自分の人生を劇的に変えるわけではない。
 小さな『やさしさ』は、ただ自らの心に、一滴の雫程に染み渡る程度のものだ。

 心が疲弊していると、小さな『やさしさ』に気付けなくなったりする。疎ましく思ったりもする。耳障りになったりもする。当たり前すぎて有難いと感じなくもなる。

 小さな『やさしさ』を、素直に受け取れるようにする。
 小さな『やさしさ』へ、素直に御返しを出来るようにする。

『やさしさ』を受け取り続ければ、
『やさしさ』を返し続ければ、
『やさしさ』を渡し続ければ、

 何度も何度も続く、微々たる『やさしさ』が続けば人生もそんなに悪いものでもない。

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