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【読書感想文】ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔

あらすじ

長女は大概上手く行きません。
ソフィーは3姉妹の一番上でした。

彼女は素直で良い子でしたが、
意思のはっきりしている次女のレティー、
美人で才能のある三女マーサと違い、
人生に消極的です。

変化に対しては言い訳で拒み、
行動に対しても、
口実を使い果たしてから出ないと、
初めの一歩は出ませんでした。

ソフィーが学校を出る年に父親が急死し、
残された3姉妹は、
それぞれ離れて暮らすことになりました。

レティーはパン屋〈チェザーリ〉で奉公。
マーサは魔女の元で見習いをすることになります。
ソフィーは帽子屋を継ぐことになりましたが、
彼女の本心は違いました。
彼女自身、何をしたいかはっきりしていません。
それでも、帽子作りよりは、
少し面白いことがしたかったのです。

ですが、ここでも怖気づき、言い訳をします。
「どうして、
人生は面白い方がいいと思ったんだろう? 
怯えるだけなのに。
何もかも長女に生まれたせいよ」

ソフィーは帽子屋で働き続けました。
「あなたには値打ちがある」
「もっと自分を大事にしなきゃ」
そんな妹たちの言葉も、
彼女を動かすことはできませんでした。

ある日、帽子屋で働くソフィーの元に、
世間で噂の荒地の魔女がやってきます。
ソフィーの作った帽子にケチをつけた後、
張り合ってきたソフィーに呪いをかけ、
荒地の魔女は去っていきました。

ソフィーは、
齢90近くのおばあさんになってしまいました。
ですが、どうしてか彼女は切り替えが早く、
「こんなおばあさんになってるのに、
心配したって仕方ないじゃない」と、
店を飛び出し、当てもなく一人で旅を始めます。

ソフィーが、旅の先で出会うのは、
世間で悪名高い魔法使い、ハウル。
ハウルの見習い、マイケル。
ハウルの城を動かす、火の悪魔カルシファー。

愛すべき皆と共に、
ソフィーたちは荒地の魔女に立ち向かう……。


感想

老婆と乙女はひと続きである。
本書の解説でも書いてあったように、
その事実を人は忘れがちなのだ。
もちろん、引っ込み思案のソフィーも、
図々しいソフィーも、
同じ人間がただ年を重ねただけ。

生まれた際に決められた、
長女という役を出ようとしないソフィーは、
荒地の魔女の魔法で老いた姿になり、
あの手この手で現状を変えていこうとする
ハウルと出会い、
生来持ち合わせたものや
長年身につけてきた感覚などは、
思いっきり変えてよいことを知った。

ソフィーの容姿も、ハウルの心臓も、
もし彼女の消極性がそのままであれば、
戻っていなかっただろう。

しからば、彼女は変化を好み、
図々しく人と関わって然るべき人生で、
帽子屋に留まらなくて良かったのだ。

ハウルと一緒に暮らすことになった今、
彼女自身も、
強くそのことを感じているのではないだろうか。

目的地が見えなくても、
何かを掴みに旅に出たって良い。
もし何もない現状に苛まれているのなら──。

城で暮らす可笑しさ、手のつけようのない複雑さ、
各存在のもつ暗さや切実さは、
全員で奮闘し、裏返した結果、
一人の女性と、その仲間に、
大いなる幸せをもたらした。

余談ではあるが、
「ぼくたちって、これから一緒に末永く幸せに暮らすべきじゃない?」

───言ってみたいものである……。

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