食品ロスを考える② ウェブ広告で食品ロスを削減する Freeat
TIPSが『SDGs・ダイバーシティ』をテーマに自ら取材し、発信するWEBメディア RECT。第一弾は、ウェブ広告を使って食品ロスを減らす仕組みをつくる『Freeat』と連携し、SDGs 12を中心に複数のターゲットと深くかかわる『食品ロス問題』をテーマに、Freeatの仕組みとサービスや、食品の再流通に取り組むお店、量り売りで余分な買い物防止に取り組むお店を取り上げます。第2回は、Freeatの特集です。
■ Freeatとは
Freeatは、ウェブ上で広告を視聴したユーザーが、賞味期限の近い余剰食品を無料で得ることができる “タダメシ”&食品ロス削減サービスです。飲食小売店などで発生する食品ロスの削減を目指し、現在サービス開発中で、現在は学生を対象に実証実験が行われています。
Freeatのサービスは、広告主となる企業(出稿企業)と、食品ロスを抱える飲食店や小売店、ユーザーをつなぎ、出稿企業がFreeatに支払う出稿料の一部が、食品ロスを抱える飲食店・小売店に還元されることで、広告を視聴したユーザーは、飲食店・小売店から無料で食品を受け取ることができる仕組みになっています。出稿企業はユーザーに効果的に情報を届けることができ、飲食店・小売店にとっては食品ロスを削減して新たな収益源が生まれ、ユーザーは無料で食品を得ることができる、まさに「三方よし」のサービスです。
■ Freeatの使い方
サイト上に出品(掲載)されている商品を選び、商品ページの下にある『受け取り申請する』ボタンを押すと、動画広告が再生されます。視聴後、簡単な選択式アンケートに回答すると申請完了。商品の受け取りができる店舗詳細が表示されます。実際にお店に行ってFreeat用の商品を受け取りたいことを伝え、店員さんから伝えられるピンコードを入力すると商品と申請情報がマッチングして取引完了。そのまま無料で商品を受け取ることができます。
■ インタビュー Freeatファウンダー 古嶋遼氏
TIPSメンバーの髙橋が、同サービスのファウンダーである古嶋氏に、Freeatのこれまでとこれからについてや、食品ロスへの想いについて、徹底インタビューしました!
Q. Freeatを立ち上げようと思ったきっかけは?
学生時代に、学生さんなら誰でもお世話になったことがあるであろう有名ファミリーレストランチェーンでアルバイトをしていました。当然食べ残しもありますが、お客さんには見えない売れ残りもあり、毎日大量の食材が捨てられているのを目の当たりにする中で、食事に困っている人やご飯が食べられない人に何らかの方法・仕組みで届けることはできないかと考えていたのがきっかけです。
Q. どうして広告を使おうと考えた?
賞味期限が迫った食品が割引されて安くなるというのは、今もスーパーマーケットなどで見られる光景だったので、そこからもうひと工夫が必要だと感じていた中で、食品を無料で提供できるようにしたいと考えました。しかし、お店で売られているもの(食品ロスになり得る商品)を第三者に提供しようとすると、どうしても対価が必要です。そんな時に、ある本を読んでいて、広告を付けたお弁当を無料で配る取り組みを知りました。広告主は大人数の人に見てもらえるし、お客さんはお弁当を無料で受け取れる。ここから着想を得て、ウェブ上で広告を見てもらう仕組みを作れば、出稿料が出て、それを対価に充てることで無料にできると考え、Freeatの仕組みが生まれました。
Q. Freeatのプロジェクトメンバーはどうやって集まった?
Freeatは、Crewwが運営する「STARTUP STUDIO」のプログラムに参加しています。Freeatのアイディアをサイトで公開したところ、応募者が手を挙げてくれて、一人ずつ面談しました。僕の思いに共感してくれて、同じ志を持った、温度感の近い人たちが集まってくれたと思っています。現在は、僕を含むコアメンバー4名と、サポーター15名ほどがいて、それぞれが担当分野を持って動いています。
Q. Freeatのこだわり、強みは?
食品ロス問題に限らず、社会課題に取り組むボランティアの方々や組織がたくさんあります。それらは素晴らしいことです。一方で、ボランティアには限界があるとも思っています。この先もずっと食品ロスは発生するし、なにかをするにはコストがかかる。なので、Freeatの仕組みを持続可能なものにするために、「ビジネスとして成立させること」にこだわっています。広告を出稿してもらい、経済を回す仕組みを作る。この広告を使ったモデルが、単なる割引とは一線を画すFreeatの強みであり、こだわっている部分です。
Q. Freeatの課題は?
直近の課題は、利用者と協力店舗の拡大です。現在、実証実験に協力いただいているお店は2店舗、登録者数は約500人です。協力店舗が増えて登録者みなさんの生活圏で利用できるようになれば、利用者は自然と増えてくるので、大学の周辺などに協力店舗ができればと思います。協力店舗を増やすにあたって、お店の方が最も気にされるのはやはり対価の部分で、食品ロスを削減したいという思いはみんな持っており、Freeatの良さも理解してもらえることが多いですが、導入すると、簡単ではありますがそれまでなかった出品の手間がかかります。また、賞味期限の近い食品を提供するには、当然それまでなかったリスクがどうしても生じるため、安全性のハードルも決して低くありません。これらの工数やリスクに対する見返りが店舗のニーズとマッチするかが、導入してもらえるかどうかの決め手になると感じています。
Q. 協力店を増やしていく上で意識していることは?
協力してくれるお店を拡大するには、つながりがなくても突撃して交渉します。その時に、食品ロスなどはどうですか?というこちらが気になっていることばかりを押し付けるのではなく、お店の話を必ず聞くようにしています。そうすると、新規のお客さんをもっと増やしたい、学生や若者に来てほしいとか、コロナで常連さんが来なくて大変だとか、そういった話が出てきます。食品ロスは当然課題だが、そこに対する僕らの想いを先行させるのではなく、お店の声・困りごとに寄り添いながら提案をする。そうすると、例えば、学生に来てほしいとか、無料の受け取りをきっかけに新しいお客さんをつくれるといった切り口で、Freeatの導入を検討してもらえます。
Q. 食品ロスや食に対する思い、こだわりは?
食品ロスについては、最近はテレビでも頻繁に取り上げられるようになってきて、意識を持つ人が増えてきているように感じます。SDGsの17の目標のなかでも比較的身近にある課題・目標だと思うので、何かやりたいけど何をしたらいいかわからないという人は、身近なところから誰でもはじめられる食品ロス対策に目を向けてほしいですね。Freeatは、ひとりひとりがすぐにはじめられるアクションでもあります。食について個人的なお話をすると、これはきっと親に「ご飯粒を残さず食べなさい」と教えられたところからはじまっていると思いますが、ご飯を捨てるのがどうしても嫌で、気になってしまうんですよね。Freeatをつくるきっかけになった原体験でもあるアルバイト時代には、余った食材を持って帰ったりもしていたが、ひとりでは処理しきれないし、お腹が空いている人に食べてほしいと思っていました。おなかいっぱい食べられる人のもとには食べ残すくらいたくさんあるのに、おなかを空かせている人々には届かない。そんな不均衡が看過できないんですよね。アルバイトで目の当たりにしたようなお店規模だとその量も桁違いで。おそらく、親から教わった「食べ物を残すのはダメだ」という意識は誰にでもあると思います。僕はそれが特に強いんです。
Q. Freeatと向き合うモチベーションは?
食品ロスをなくしたい、それだけです。そうこうしているうちにも、食べ物は毎日捨てられています。とにかく、1日も早く食品ロスをなくすことができる仕組みを作って、それを動かさないと、という思いです。それに、Freeatは食べ物を無料で提供できる。世界規模ではもちろん、日本でも今日この日にご飯を食べられない人がたくさんいます。もちろん事業としての挑戦はとても大変ですが、それ以上に食品ロスに対する危機感が強い。その思いがどこから来るとかと言われると自分でもわかりきってない部分があるのですが、本能的、直感的にどうにかしなくてはいけないと思っているのだと思います。
Q. 今後の展望、拡大戦略は?
今は広告のターゲティングなどもあり、学生を対象に実証実験を行っていますが、発想のきっかけになった、食事に困っている人たちにサービスを使ってもらえるようにしたい。そのためには、サービスをスケールしなくてはいけない。今はまさにゼロからイチを作っている段階ですが、サービスを確立して事業化ができたら、学生に限らず広く多くの方が使えるようにしたいと思っています。
Q. 最後に、実証実験の対象である学生にメッセージを!
SDGsや環境問題、食品ロス問題に関心があって、エネルギーを持った学生さんにとって、Freeatは⾃分の身近なアクションとして使うことができる設計にしています!食品ロス削減に貢献したいと思っている⽅や、何かやりたいけど何をしたらいいかわからないと思っている方は、ぜひFreeat利⽤してくれたら嬉しいです!
■ 連載 食品ロスを考える
連載の第1回では食品ロスについてまとめ、第3回・第4回では、Freeatの実証実験に協力している『エコロマルシェ』『HACARI』をご紹介しています。
この記事は、2021年2月11日に公開された記事を一部編集して再公開しています。(Writer:髙橋由奈)
■ ABOUT RECT
RECTは、2018年に設立し、東洋大学を拠点にSDGsとダイバーシティに取り組む学生団体TIPSが運営する、SDGs & Diversity WEB MAGAZINEです。
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