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PTAイベントの模擬店チケット販売における集計フローを省力化してみた

PTAがバザーやお祭りなどで模擬店を出す場合、当日に現金で販売できればよいのですが、様々な事情で「前売券」(チケット)を出さなければならない習わしの学校も多いと思います。

参考:バザーなどのPTA主催イベントは「前売券」か「現金」か。それぞれのメリットデメリット

今回は「前売券」(チケット)の申し込み集計や、集金後のお金集計にまつわるタスクの効率化ビフォーアフターについてご紹介します。


取り組み前の仕事の流れ

このケースで扱う学校でやっていたこれまでの前売り券販売は、以下のような流れでした。

Before
①PTA役員が全保護者宛に、前売券注文申込書 兼 集金袋を配布
 ↓
②各保護者は注文数と金額を計算・記入し、必要額を入れ袋を提出
 ↓
③先生方が袋を全員提出したかどうかをチェックし督促
 ↓
④PTA役員が8人がかりで、袋に記載の注文数を集計しつつ、各袋に記載の合計額が合っているか計算機を使って確認
 ↓
⑤運営委員会を招集し各クラス代表の委員(6名ずつ!)と、1袋ずつ記入内容を計算機を使って検算し開封、記入額と、封入額が合致するか確認
 ↓
⑥各クラスで、袋に入っていたお金を金種ごとに整理し、カウント
 ↓
⑦注文のあった前売券を袋に封入する(過不足があった人は、「過剰」または「不足」のご案内も同封)

ということで、上記の各フローのうちどのへんに問題があるかを見ていきましょう。

Before:取り組み前の仕事の流れの問題点

②各保護者は注文数と金額を計算・記入し、必要額を入れ袋を提出
この段階で計算間違い+額の入れ間違いのいずれかがある袋が、申し込み全体の1割にも達していました。

③先生方が袋を全員提出したかどうかをチェックし督促
先生方が未提出者を確認されたいとおっしゃるのでお願いしているのですが、そもそも締め切りを提示しているのに、それを守らない人に手間をかけなくてもよさそうなものですが…。入試とかに備えて、「締め切りを守る」という習慣をつけてもらわなくていいんでしょうか。

④PTA役員が8人がかりで、袋に記載の注文数を集計しつつ、各袋に記載の合計額が合っているか計算機を使って確認
(※ここで注文数を確認し、材料や商品の発注をかけます)

紙に書かれた計算内容を転記して、計算が合ってるかを確認するという、拷問のような作業です。一定数計算間違いがあると分かっているなら、計算間違いをしようのない仕組みにしたいところです。

⑤運営委員会を招集し各クラス代表の委員(6名ずつ)と、1袋ずつ記入内容を計算機を使って検算し開封、記入額と封入額が合致するか確認
開封を一人ずつして、金種ごとにカウントしていくという作業です。この学校にはコインカウンターがあるにもかかわらず、人力で集計する必要がどこにあったんでしょうか…。

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上記のフローのうち、
「④役員が8人がかりで、全集金袋に記載の注文数を集計しつつ、各袋に記載の合計額が合っているか確認」に3時間、
「⑤運営委員会を招集し各クラス代表の委員(6名ずつ)と、1袋ずつ記入内容を確認し開封、記入額と入っている額が合致するか確認」に3時間かかっていたようでした。

改善後の仕事の流れ

役員全員で集計(2~3時間)+クラス委員さん全員で集計(2~3時間)かかっている非効率を改善しようと、下記のようにフローを変更してみました。

After
①役員が全保護者宛に、前売券のご案内を配布
※原則Webフォーム(Googleフォーム)で受付する旨のご案内。この時点では集金袋は配布しない。
 ↓
②各保護者は各商品の注文をGoogleフォームを使って行う。(できない人は紙でもOK)
 ↓
③未提出者を役員がチェックし、先生にお伝え、督促。
 ↓
④各商品の単価をかけあわせて「総注文数」と「金額」を<個人別>と<クラスごと>で分かる状態にデータを成型、もう一人の役員がそれをチェック
 ↓
⑤集金用の袋に名前と各商品の注文数、小計、合計額を「Wordの差し込み印刷」を使って印字
 ↓
⑥各家庭で、印字された合計額に従い必要な金額を封入
 ↓
⑦運営委員会を招集し各クラス代表の委員(6名ずつ)は、1袋ずつ開封、印字された合計額と入っている額が合致するか確認
 ↓
⑧各クラスで、集金袋に入っていたお金をまとめてコインカウンターで集計
 ↓
⑨注文のあった前売券を集金袋に封入する(過不足があった人は、「過剰」または「不足」のご案内も同封)

取り組み後のタスクの結果

取り組みの結果、どんな効果があったか、また課題は何なのかを解説していきたいと思います。

②各保護者は各商品の注文をGoogleフォームを使って行う。
なるべくWebフォームをご利用くださいとご案内したところ、全保護者のうち、4.5%のみが紙での回答でした。(紙で来た分はフォームに代理入力しましたが、それほど数がなかったため、たいした手間ではありませんでした。)

参考記事:PTAの各種アンケートでGoogleフォームを導入する際の注意点

使用したツール:Googleフォーム

③未提出者を役員2名でチェックし、先生にお伝え、督促。
未提出者のチェックをしやすくなるよう、「子どもの性別」と「子どものひらがなの名前」を取得し生徒名簿との突き合わせを楽にしようとしたのですが、「ほんとうは重複申し込みなのに違う名前の表記で申し込んでいる」、「子どもの名前ではなく親の名前」で申し込んだり、「姓と名に空白」があったり、「ひらがなとカタカナ・漢字が混在」しデータのクリーニングと名簿との突き合わせに時間がかかってしまいました。(役員一名、約2時間。ダブルチェックに30分ほど)

ここは学校側の強い希望で未提出者に督促をしたいとのことだったのでチェックをしましたが、省略してしまってもいいところだと思います…。

使用した機能の例:「重複を検索して削除する」/Microsoft Office ヘルプ

④役員一人が各商品の単価をかけあわせて「総注文数」と「金額」を<個人別>と<クラスごと>で分かる状態にデータを成型、もう一人の役員がそれをチェック
役員①がGoogleスプレッドシートに集まった注文を、右側に各商品ごとに「単価と注文数をかけあわせた数値を入れるセル」をつくり、各行が「名前」と「各商品の注文数」と「各商品の注文価格小計」と「全商品の注文数」と「全商品の注文価格合計」になるようにしました。
役員②はその集計が合っているかの確認です。
ちなみに①で約1時間、②で30分ほどでした。

画像6

※左側赤枠が商品数(Googleフォームでの注文がそのまま入ったところ)、右側水色枠が、赤枠の商品にそれぞれ単価をかけて、商品ごとの小計額を表示したところ。その右の濃い赤が、注文商品の点数合計、その右の水色枠は各人の申し込み総額を算出したもの)
 
⑤集金用の袋に名前と各商品の注文数、小計、合計額を「Wordの差し込み印刷」を使って印字
④でできあがったデータをExcelとしてダウンロードし、集計袋に「Wordの差し込み印刷」を使い、各者の申し込みデータを個別に印字しました。

請求書

※本番の印刷をするまでに、全商品を1,2,3,4・・・と注文したダミーデータで印字テストすることをお勧めします。(一部金額のところに点数が入るという間違いを犯したまま印字しそうになり、冷や汗をかきました…)
プリンタの性能や生徒数によると思いますが、印字時間は1時間ほどでした。(といってもプリンタが勝手にやってくれるのですが…)

使用した機能:差し込み印刷 Microsoft Word 2013 のトレーニング(ビデオ)
 
⑥各家庭で、印字された合計額に従い必要な金額を封入
Beforeでは、全申し込みのうち1割に計算ミスか封入ミスがあったのですが、Afterでは「計算ミス」は撲滅されておりもちろん1件もありません。そのおかげで、封入ミスは1件のみ(しかも教職員orz)で済みました。

画像3

 
⑦運営委員会を招集し各クラス代表の委員(6名ずつ)は、1袋ずつ開封、印字された合計額と入っている額が合致するか確認

これまで委員さんは、手で書かれた計算が合っているか計算機を片手に検算してから、開封してお金を数えていたのが、検算が不要になり、袋を開封して記載額と合っているか、という確認だけになりました。

⑧各クラスで、集金袋に入っていたお金をまとめてコインカウンターで集計

それまでは「袋1つずつのお金」と「クラス全体のお金」を手で数えるという作業をしていたのでとても時間がかかっていたのですが、「クラス全体のお金」は学校にあるコインカウンターを借りてきて、クラスごとのお金の合計は機械でカウントするようにしました。(なぜこれまで使っていなかったのか、本当にわかりません・・・)

iOS の画像 (2)

「袋1つずつのお金」が合ってるかどうかを確認しているので、合計額を再度金種ごとに手動計算する必要はなく、事前に役員が計算している額と合致するはずです。

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画像5

(c)Amazon 

結果、どの委員さんも「めっちゃ楽になりました!!」と大喜び。
具体的には「計算の検算」がなくなり、封入ミスが実質なくなっているため、⑦⑧のフローで約3時間かかっていたのが45分ほどに短縮できました。
 
⑦注文のあった前売券を集金袋に封入する(過不足があった人は、「過剰」または「不足」のご案内も同封)
ここは「紙の前売券」を発行する以上、なかなか効率化が難しく、残念ながら手つかずでした。(不足の人は1件だけだったので、不足のお知らせ封入作業は激減しました)
※前売券をデジタル化するなど、省力化できた方がいればぜひコメントやTwitterでお知らせください。

役員の大半と委員さんはとても楽になるが、再現性に課題

このフローだと、役員の大半と委員さんについては非常に楽になります。
Beforeの「④役員が8人がかりで、全集金袋に記載の注文数を集計しつつ、各袋に記載の合計額が合っているか確認」に3時間、
「⑤運営委員会を招集し各クラス代表の委員(6名ずつ)と、1袋ずつ記入内容を確認し開封、記入額と入っている額が合致するか確認」に3時間かかっていたことを考えると、
役員:8人×3時間=24(時間)
委員:6人×3時間×クラス数=18×●(時間)
という工数が、
役員:役員①の2時間+1時間+1時間=5時間、ダブルチェックの役員②の1時間ほど
委員:6人×45分×クラス数=4.5×●(時間)
で済んだということになります。

会社だったらそれなりに上司に褒められる成果かもいれませんが、いかんせん「主婦の労働などタダ」と思われているPTA界隈、楽になった役員と委員さんからはほぼ全員に「すっごく楽になった!!」と大絶賛されたとしても評価してくれる上司はおりませんし、一番の問題はこのやり方をどのPTAでも「再現できるか」というと、正直ハードルはあると思います。

ハードル① Googleフォームで注文を取る 難易度☆★★
Gmailのアカウントを持っていればすぐにできることですが、「フォーム?業者に頼むの?」という感じの人ばかりだと、厳しいかもしれません。

ハードル② 注文データのクリーニング 難易度☆☆★
重複チェックはExcelでボタンひとつで簡単にできるのですが、知らないと目視ですることになり大変な作業です。
(とはいえ、1回しか申込できないようにすると、「間違えたのでもう一度申し込みたい!」という人が出てきて対応に時間がかかってしまいます)

また、大量の申し込みデータを扱う業務についていた人なら、フリー入力部部にどんなデータが入り込みうるかということを予想して、入力時点で制御したり、入力後のデータのエラーにあたりをつけることもできますが、全く初めてだと厳しいかもしれません。

ハードル③ 注文数×単価等、小計・合計を計算する 難易度☆☆★
Excelの操作としてはそれほど難しい数式ではありませんが、商品数が多かったり、様々な単価の商品があると、「間違いなく数式を入れる」という作業が必要になり、少しハードルが上がるかもしれません。

ハードル④ 注文データのExcelで「差し込み印刷」する 難易度☆☆★
Wordについている「差し込み印刷」の機能を使うと、名前や注文、金額を個々の注文に合わせて印刷できるのですが、今回PTA役員が8人いるなかでこの機能を知っていたのは一人だけでした。「知らない機能、コワイ」と思いがちな組織ではここが一番のハードルになりそうで、かつ、商品数が多いとデータの差し込み設定をミスる可能性も高くなりそうです。

ハードル⑤ 他人の仕事を減らすことに喜びを感じる 難易度???
自分以外の人はすごく楽になるけれど、自分の費やす時間はそれほど減らない、かつミスが許されないプレッシャーがある、という仕事を進んで引き受ける人が少なそうなことがいちばんのハードルになりそうです。

しかし、それを押して頑張ってやってみることで、委員さんたちが「役員が自分たちのために頑張ってくれている」と感じてもらうことも、次年度スカウトまで視野に入れると価値があるかもしれません。

※「委員さんの負荷を減らすために、夏祭りの時とやり方を変えてみました。集計の変更について、いかがでしたか?」と役員が聞いて回り、「あなた方のことを考えてるよ!」と伝わるようにしました。

推薦委員が次年度役員をスカウトしてくる方式の学校であれば、年度後半に推薦委員のスカウトにかかる時間的・心理的負荷を考えると、推薦委員になる予定の人がこの作業に頑張って取り組んでみるようにしてみるのも手かもしれません。
無駄打ちの電話・訪問で精神を長時間消耗させるくらいなら、このフローを覚える方が早いし建設的です。

または、前売券にまつわる集計がかなり煩雑であることを保護者に周知したうえで、(父親も含めて)「①~④をやってくれるボランティアの方、募集!特に差し込み印刷を使ったことのある方!」などとするのもいいかもしれません。課題がより多くの人にきちんと共有できていれば、スキルのある人が手伝ってくれる可能性は高くなると思います。

「1人がしんどいのはかわいそうだから、全員でしんどくなろう!」より「できることを活かして、みんなでラクに楽しくやろう!」でいきたいところです。

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サムネイル写真:さとう310さんによる写真ACからの写真
コイン写真:紺色らいおんさんによる写真ACからの写真

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