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PTA役員が紙のアンケートからGoogleアンケートフォームに移行しようとする際に反対派から出されがちな13の懸念とその論破方法

「PTA活動は昭和」と言われがちな理由のひとつとして、なんでも紙でご案内し、アンケートをするときは原則紙で回収する、という風習があります。
「絶対紙でないといけない理由」がない限り、Webを導入してもいいと思うのですが、なかなか強硬な反対派の方々は納得してくれません。

そんなときは無記名の、集まっても集まらなくてもいいアンケートからGoogleフォームなどの無料ツールを使い、Web化していくのがよいでしょう。

しかし「Web!?怖い!!」というITアレルギーを持つ方々も、一定数存在します。そんな反対派の方々からぶつけられがちな主張と、その論破方法をご紹介します。

前提:導入のプロセス案

目的を「集計ミスを防ぐ・回答&集計の効率化」とし、導入のためのフェーズを2段階に分け、1段階⽬で問題がないと⾒込まれる段階で2段階目に移⾏する。

フェーズ1︓間に合うタイミングから
紙でアンケートを配布、回答はWebフォーム(無料のGoogle フォームを想定)を利⽤してできるようにしつつ、希望者は紙のまま回答も可。(ただし、集計ミスを防ぐ/効率化の観点から、可能な限りWebフォームを利⽤していただくよう依頼します)
→必要なもの:アンケート管理者がGoogleアカウントを持っていること(無料で数分で作れます)
→得られる効果︓集計ミスを防ぐ・回答&集計の効率化

フェーズ2︓時期未定
フェーズ1の様⼦を⾒ながら、特に大きな問題がなければ、希望者にはアンケートの配布もメール・LINE等で⾏う。希望者はこれまで通り紙の配布をしてもOK。
→得られる効果︓印刷のコストダウン、および折作業・封⼊作業の削減(印刷物にハンコを押すような慣習があるところはハンコ押し作業の削減)

懸念1「スマホを持っていない人もいる!」

「スマホを持っていない人もいる!」ということを理由に、Web化に反対する方がいます。

学校や園からのお達しでは、アイロンやミシン等の裁縫道具を持っていない可能性に配慮することなく事実上全員にアイロンがけや裁縫を強制していることが多々あるのに、なぜスマホだけそんなに特別に配慮するのか不思議なんですが、そこを指摘すると泥沼になりそうなので控えておきます。

反論例:
「スマホを持っていない人」に配慮し、アンケートは紙も配布します。そのご案内に“紙で回答いただいてもOK”と記載すれば問題ないと考えます。なお、URLも記載する想定ですので、希望者はパソコンからも回答が可能です。

と、紙とWebを併用することから提案してみましょう。

反対派の方々が、「スマホを持っていない人が我が学校・園には多い」という調査事実をベースに話しているなら耳を傾けるべきですが、そうでない場合は、スマホ保有率の根拠として総務省の平成30年度の調査(※)によるとスマホ保有率は20代で94.8%、30代で92.5%、40代で86.9%ということを知っておくとよいでしょう。(ちなみに少し前の調査ですが、アイロンの普及率は約9割ミシンの普及率は約6割らしいです。スマホのほうがアイロン+ミシンより普及率高そうですね!)

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http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd142110.html

ヒエラルキーを重視する人たちには「国・自治体などが出している調査結果」を根拠にするのも一つの手です。

懸念2「スマホどころかガラケーを持っていない人もいる!」

上記の総務省の調査によると、ガラケーの保有率は20代で5.4%、30代で6.6%、40代で10.6%です。つまりスマホと合わせると20代で100%超え、30代で99.1%、40代で97.5%となります。2台持ちの人が多いとしても、出現率としてはかなり少なめなのですが、マイノリティに配慮する姿勢は大事なので、確かに配慮は必要でしょう。でも結局はスマホを持っていない人がいる、というときとほぼ同じ回答になります。

反論例:
ガラケーでの表示については、端末により、⼀部で表⽰崩れ等が発⽣する可能性は残ります。ただし回答に差⽀えがあるほどの表⽰の崩れの場合は紙で回答していただければOK、と記載すれば問題ないと考えます。

と、ガラケーで表示が難しい場合は紙で回答すればOKの旨を伝えましょう。

懸念3「紙媒体アンケートと併⽤する場合、逆に⼿間が増える!」

紙だけだととくに心配しないのに、なぜか紙とWebアンケートのどちらもやるとなると「大変に違いない!」と心を寄せてくださる方もいらっしゃいます。
そんな心配をしてくださるなら、参考までに紙のアンケートを集計する際にかかっていた時間がどのくらいなのか提示してくれれればいいんですが、そんな根拠のある数字を持ってくる人はまずいません。でもそこはマイルドに回答します。

反論例:
現在の集計にかかっている時間が不明なので⽐較ができませんが(もし厳密に⽐較をされたい場合は、紙の各アンケートの集計にかかっていた時間をお知らせください)、仮にWebフォームで回答してくださる⽅が回答者の7割であれば、7割の⽅の分の集計は⾃動化され不要になります。
※なお、紙の回答分は、Webフォームで代理入力することにより、集計が一元管理されますので、複数人で手分けして代理入力することもできます。いずれにせよ、2種類あることにより、余計にかかる手間はありません。

疑念4・5「個人情報の流出リスクがある!」&「誰が管理するんだ!」

個人情報保護法に則ったご心配をいただけるなんて、とても心強いですね。
でも個人情報の取り扱いについてPTAのルールがあるならそれに則ればよいだけです。(もしルールがないなら、その状態を放置するのは良くないので、取得の際の利用目的や取り扱いについては、配慮が必要です)

反論例:
流出リスクや管理者について、紙で回収したときの個⼈情報管理ルールがあるならそれに準拠します。
なお、Googleフォームを使った場合「アンケート管理者」のアカウントからのみデータを閲覧できるようになる状態です。それも⼼配な場合は、個⼈を特定しうる情報やセンシティブな情報を取得しなければよいのではないでしょうか。
例1)匿名アンケートにのみ使う(個人情報を取得しない)
例2)「1年1組のヤマダ」であれば
小・中学校なら「組番号+出席番号」=「1-2-36」、
幼稚園なら「組の頭文字+子どもに割り振られたマーク」=「も_くるま」で回答いただくなど、すれば、万が一流出したとしても園の外の⼈には個⼈特定は難しいという⽅法は取れると思います。
参考)⾏政でもGoogleフォームを使っている事例はあります。
https://cloud-ja.googleblog.com/2015/03/google.html

疑念6「無記名の場合でも、⼈物特定が可能なのではないか?」

匿名のアンケートをした場合も、人物の特定がされるならまずいのでは、と回答者を守るための心配を下さる方がいらっしゃる場合、それはとても弱者に寄り添った立場であり、ありがたいことです。
しかし、紙の場合も、子ども経由で回収するならば、やろうと思えば誰の回答か特定できますし、回収BOX等で回収した場合も、筆跡などから推測できたりするかもしれないのに、Webだけ心配いただくのはバランスが悪いです。

反論例:
回答者を特定したくない場合は、匿名での回答が可能です。
※Googleフォームでは、個人を特定する情報を入力してもらわない限り、アンケートの実施者が回答者を特定することはできません。

疑念7「システムメンテナンスはどうするんだ!」

システムの持続可能性にまでご配慮頂けるなんて、とてもありがたいことです。しかし欲を言うなら役員を仰せつかった各家庭が、家事との両立に悩み持続できなくなる可能性についても配慮していただきたいところです。

反論例:
Googleフォームの場合、システムメンテナンスはGoogle社が⾏っています。Googleフォームは無料サービスで世界中で使われているサービスです。

疑念8「アンケートの多重提出者が出たらどうするんだ!」

調査の信頼性を心配してくださる方がいるなんて、大変アカデミックで、ありがたいことです。これまで「統計として信頼性のある適切な調査」を「透明性高く」担保されてきたのであればそれに従えばよいと思います。
紙の場合も、悪意ある人がコピーして回答したら同じことです。

反論例:
匿名の場合は防げません。(紙の場合、コピーした回答が防げないのと同
様です)記名式の場合は、同じ⼈の回答を消し込み(⼀番新しいものを採
⽤)する⽅法がよいのではないでしょうか。

疑念9「保護者以外の第三者がアンケートに答えられる状態になる!」

紙の回答用紙なら第三者に流出しないと考えているのに、なぜか紙で配布する「アンケートフォームのご案内」の場合は第三者に流出することを心配するのはいったいどういうことなのでしょうか。
さらに保護者以外の第三者がわざわざアンケートに回答したくなる、という大注目のアンケートであるという前提があるようですが、給食の評価とか保護者会の感想とかにわざわざ赤の他人が、保護者家庭にのみ紙で配布するアンケート用紙をどうにかしてゲットして回答することなんてありえるんでしょうか。
(もしそこまでしてアンケートに回答したい、重要な意見を持つ人なら、回答しちゃってもいい気がします。)

反論例:
URL や QR コードを記載した紙が第三者に渡ることがあれば、想定されるかと思います。
これまで紙の回答用紙だと第三者に渡らない工夫をされていたのであれば教えてください。
もしよろしければ、 フェーズ2 の『メールで配信することで流出リスクを減らす』という策を取ることもできます。
※保護者であろうと第三者であろうと受け⽌めるべき回答は受け⽌め、それ以外はスルーするのは紙の運⽤時も同じではないでしょうか。

疑念10「アンケート結果が流出したらどうするんだ!」

個人情報とは関係なく、アンケートの結果の流出の心配をいただいたようです。回答も、紙から集計したものだと流出しなくて、Webで回収した集計結果だと流出するということもありません。

反論例:
紙のアンケートと同様のリスク管理でよいと考えます。
流出して困るような内容はWebで取らないという⼿もあります。

疑念11「次年度の担当がそんな高度なことできない!」

次年度の担当は、前年度の担当のやったことを踏襲しなければならないという呪縛から出てくる心配ですが、そもそもPTA活動はボランティアです。自分のできることをできる範囲でやればいい話なので、次年度に強制することはありません。

反論:
次年度の担当の方が必要であればマニュアルを用意したりレクチャーの場を設けます。
そのうえで使う・使わないはそれぞれの担当の判断で⾏えばよいのではないでしょうか。

疑念12:「QRコードを使うつもりなら、課金される!」

人生でどんなQRコードを使ってこられたんでしょうか、なぜかQRコードを使う=課金される、というふうに思い込んでおられる方もいらっしゃいました。
課金されない、という事実をお伝えすればOKだと思います。

反論例:
アンケートのご案内の紙には、GoogleフォームのURLの記載、およびQRコード掲載をします。いずれも課⾦はされません。無料ツールです。

疑念13:「こんなややこしいことはわからない。これがわからない私は引退せよと言ってるのか」

自分が追いつめられるとすぐに辞任や引退をちらつかせて相手を委縮させる人もいます。教育業界なのに教育的にどうなんでしょう。こんなときこそPTAとして教育と社会の常識の架け橋となりたいところです。

反論例:
あなたにやめてほしいという話はしていません。
すべてを判断できる人はいないと思いますので、組織としては「判断できる人」に権限移譲すればよいのではないでしょうか。

テスト結果:9割以上がWebで回答

筆者のテストの際は、結局上記反論に言い返されることはなく、無事にフェーズ1のテストを実施することができました。
そのテストは、無記名のアンケートで、数が増えようと減ろうとどちらでもよさそうな内容だったので、スムーズに導入できました。

その結果、回答者のうち、紙を選んだのは7%、93%はフォーム利用でした。(全体の回答数は2割ほど減少しましたが、その結果、全体としての意見を覆すものではないと考えています)

また、代理入力は数件でしたので、役員会の途中にスマホでちょちょっと入力すれば終了。あとは自動で集計したので、集計時間としては「ゼロ」でした。

その後のPTAは?

「紙心棒者」しかいないPTA役員会だと、デジタルができる保護者は労多くして益少ない未来しか描けなかったのかもしれませんが、筆者の代でデジタル化のテストを推進したおかげで、デジタルできます!という保護者が次年度のPTA役員に手を挙げてくれたそうです。
コロナ禍ということもあり、デジタルをメインとするコミュニケーションは継続されていくように思います。

※Googleフォーム利用の場合、定量アンケートは自動で円グラフ化されるのと、全回答をExcelのような形で集計することもできます。
参考リンク:フォームを送信したら、フォームまたは Google スプレッドシートで個別に回答を収集できます。

ぜひ、「アンケート」の回収をWeb化して、PTA業務を効率化していきましょう。

サムネイル写真:Image by Tumisu from Pixabay

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