「半自伝的エッセイ(4)」 チェスと幸福
チェス喫茶「R」の別部屋で出会った人に先崎さんがいた。先崎さんは中堅どころの工作メーカーで部長あたりの役職に就いているらしい五十過ぎ(見た目)の男性で、どこが気に入ったのかよく私をチェスの相手に指名してくれた。
先崎さんは海外駐在が長かったらしくヨーロッパのチェス事情に詳しかった。
「向こうだとみんなというと大袈裟だけど大体チェスやるんだよね。でね、チェス盤を挟むことも結構あるんだな。それは娯楽とか関係を深めようとか、そんな意味もあるけど、こっちの人柄とか性格とかを、それ