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愛が伝わる時

 私の変わり者の親友は、もう10年以上、保護犬猫の預かりボランティアをしている。
 人間には手厳しいが、大好きな動物たちには、大きな愛情をもって接し続けている。

 そして、そんな彼女が預かりを引き受けるのは、引き取り手が見つかりにくい、訳ありのコたちばかり。
 足が欠損していたり、目が見えなかったり、皮膚炎があったり、他にもいろいろな病や、心に傷を負ったコ達…。

 虐待にあったり、愛されていたのに飼い主が亡くなって、引き取り手がなくてたらい回しにされたり、放置されていた年齢の高いコ達。

 昔よりも、保護犬猫への関心が高まって、ペットショップで買うよりも、保護犬猫を家に迎える人が増えてきてはいるけど、それでも、不幸な目に遭うコ達は後をたたない。
 コロナ禍で家時間が増えたからと、愛玩犬を買った人達の中には、面倒を見切れなくなって捨ててしまう人も多かったそう…。

 預かり手がなさそうなコ、そして、新しい家族に迎えられにくいコ達を、率先して引き受けている彼女の活動を、長い付き合いの私が、なぜ今文章にするのかと言ったら、Instagramに上がっていた、風(ぷう)と名付けられたトイプードルの、珍しいカメラ目線の可愛い写真に心打たれたから。

 「あ!このコ、彼女にありがとうって言ってる」と、思った。

 風は、あろうことか飼い主からセンターに持ち込まれた老犬。
 もしかしたら本当の飼い主が亡くなって、引き継いだものの面倒を見切れなくなった飼い主なのかもしれない。
 ケアが必要な犬種なのに、餌以外のケアはされていなかったらしく、皮膚炎で毛が抜けていたり、病気をいくつも抱えていた。
 だから、愛らしい風貌である筈なのに、とても痛々しく、みすぼらしい印象だった。

 彼女が預かっている訳ありのコ達でも、世の中捨てたもんじゃなく、死ぬまで愛して大事に育ててくれるご家族に巡り会えるコ達はいっぱいいた。
 そして、ようやく本当の家族として迎え入れられたコ達は、そのたっぷりの愛情を受けることで、顔つきが変わったり、毛艶が良くなったり、病気の進行が緩やかになったり、逆に安心してイタズラを始めるコもいた。
 「愛されている」という思いに満たされることが、どれだけ幸せなことかと、言葉をもたないコ達が、その姿で教えてくれた。

 そんなご縁をいくつも繋いできた彼女でも、「風は難しいかも…」と言っていた。
 私も何度か、大勢のコ達と一緒にお散歩したけど、風と目が合うことは一度もなく、呼んでもこっちを見ない。
 休憩中も、他のコ達は集まってくるのに、風だけはいつもソッポを向いていた。
 いったい何を見てるんだろう?って思うくらい、こちらに関心を示さなかった。

 それでも!
 そんな風に目を止めてくれる人がいた。
 親友が何度も何度もやりとりをして、この人ならと、お見合いをセッティングして、Instagramに、その方に抱っこされて気持ち良さそうな風の写真がアップされた。
 わあ!良かった!と思っていた数日後、珍しくカメラ目線の風の写真がアップされた。
 カメラを向けたって、こっちを見るようなコじゃなかったのに、何度も何度もじっと親友を見つめている。

 「ありがとう」って言っていると思った。

 今までにも何度かあった。
 自分の全てを受け入れられた時に、まるで感謝の気持ちを伝えたいような眼差しを送っているように見える写真があった。
 それは、確実に彼女の愛情が、そのコ達に伝わっている証だ。

 人間に傷つけられて、命の危機にさらされたコ達が、救われて、再び人間に心を開けるようになる奇跡を、何度も何度も見させてもらった。

 出会いの分だけ、辛い別れを味わって、近くで見守る旦那さんに「そんなに辛いならやめたら」と言われても、「救える命を見ないふりする方が辛い」と、体力の続く限り続けると決めた彼女へ、彼女の愛が伝わったあのコ達は、感謝の気持ちをちゃんと伝えているなぁと感じた。

 それくらい感動した一枚の写真だった。
 愛情は、ちゃんと伝わる。
 彼女の元にいる、まだまだ心を開けないでいる訳ありのコ達にも、少しずつでも、伝わっていると、私は思う。

 そんな彼女だから、人間の私がどんなにムカついても、ずっと心の支えでいたいな〜と思っている。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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