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【生活習慣病予防】A君が、ぶっ倒れたってよ(実話)

「もう、こんな病気になるなんて、私は何か悪いことをした罰を受けているの?」

リハビリテーション病院の日常です。当院では脊髄損傷、脳卒中、進行性難病など多くの患者さんが入院されます。急性期病院では治療が完結せず、ある程度の障がいが残存した患者さんです。

病気や障がいを何かの「罪」に対する「罰」であるなら、それは決してそうではありません。

実際に、私も息子を亡くしていますが、彼に何か罪があったと思えませんし、それは運命で、誰も操作することはできません。時に、避けられない病・苦しみ、悲しみがあるのです。


A君がぶっ倒れたってよ。

年が明けて1月ごろ、久しぶりに会った後輩が教えてくれました。
A君は、私より2つ年下です(私は今年で40歳)。

当時から、かなりやんちゃで、身体も大きかったのでよく知られた存在でした。特別、彼と仲が良かった訳ではありませんが、その後輩とA君が仲良しであったため、大人になってから3人で何度か飲みに行ったこともあります。

後輩も、私が医療従事者なので、何か聞いてみたいと思って、この話題を出したのでしょう。

当時から、身体が人一倍大きかった彼ですが、どうやら最近は100kgを超えていたようで、明らかな肥満と言っていました。話を聞くと20歳台後半からすでに2型の糖尿病を患っていたようで、最近では、人工透析が必要になったと知りました。30歳代で人工透析、、、。
原因は分かりませんが、倒れて救急車で運ばれたらしく、近くの病院に入院していると言っていました。

「A君、相当食べるからなー。俺も心配しとったんよ。顔色とかマジで悪かったから、病院行ったほうがいいって言ってやったんだけど、ずっと放って置いて。俺が忠告した後も、余計に太ってたからなー。」


糖尿病の行き着く先は、腎不全や足の壊死など目も当てられません。コントロール不良であれば尚更です。

人工透析も、週に3回程度しなければいけないのであれば、かなり日常生活に支障が出るので、仕事などもまともにできないよな。
ここまで放っておかなければ、早く定期的な治療を受けていれば。

ん?

そもそも、重症化したのは糖尿病と知っているのに放ったまま、好きなだけ食って・飲んで、そのくせ病院にもかからなかったA君の自業自得!

世の中には、健康に気をつけていても病気で障がいになり、身体が不自由になる人がいる。一方で、糖尿病の重症化は、予防ができるのに。その管理を怠った「罪」に対する「罰」だわ。



正直、数年前の自分が後輩に相談されていたら、こう答えていたかも、、、。

でも今は、

A君が小さかった時の食生活はどうだったろうか?両親は、肥満体質をどう捉えていて、注意してくれていたのだろうか?

まさか、本当にこのように透析が必要になるといった生活を完全に予測できる知識があっても、糖尿病の治療を放っておけたのだろうか?
(私は、医療職でなければ、30歳代でも糖尿病がこれほど恐ろしいなどと知るはずが無かったと思っています。)

なんで定期的に受診できなかったのだろう?本当に怠惰だけ?行くだけの時間が確保できなかった?

病気抱えながら仕事とは、しんどかっただろう。フルタイムで働けていたのか?お金が少なければ、食べ物の管理なんて二の次だ。ストレス食い?

友達の忠告レベルとは違う、真剣に気にかけてくれる家族(パートナー)はいたのだろうか?


など、様々な事が気にかかり、本当に正解が無いケースに、改めて予防医療の難しさ、多面的・包括的な関わりが必要だと思いました。

病気が悪化した自己責任は確実にある。
でも個人の責任にばかりにできない。
若年者を相手にする医者は、病院にしかいない。
その医療従事者も病院にしかいない。
医療者に予防の知識はある。
知識を活かせるフィールドは少ない。
予防の知識を使った個別の実践は診療報酬にならず消極的。


これから、やらないといけない事がたくさんあるな。

肺気腫
アルコール依存 なども同じ部類かな。

情報発信は続けながら、私個人(病院勤務の理学療法士)に何ができるかも考えていきます。そろそろ、転職の時期なのかも。

実践についても何か進展がありましたら、noteで情報共有します。

(A君はすでに退院できているようですが、また何度か倒れているようで、体調が心配です。)

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