【掌編】誕生
流れ星が賑やかな夜、
一つだけ仲間とはぐれたその星は、
ツーと夜空を滑って湖に落ちると
たちまち虹色の閃光を広げて辺りを燃やしていった──
小夜子は胸の苦しさに目を覚ましたが、心は先程まで見ていた夢に抱かれたままだった。
星が湖をはげしく燃やし尽くす光景の、なんと美しいことか……しかし、そのえも言われぬ美しさにはどこか背徳の影が色濃く差していた。
〈正吉さんに話したら何と仰るかしら〉
小夜子の脳裏に、正吉が声を立てて笑う顔が浮かぶ。
お前は心配性なんだから、そう言われる気がする。
〈どうせ夜まで憶えていないわ〉
何より彼女は、彼との短い逢瀬の時間を幸せに過ごしたいと思い直して、夢のことは話さずにおこうと考えた。
彼女が正吉の子を身篭っていると知るのは、それから十日も後のことである。
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