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【R30:STORY】下北沢発、とにかく切ないギターロック・City Lovers

Gt.&Vo.ニシタ ユウセイ、Ba.阿部(あべ) シュン、Dr.tuti.jp(ツチ)による3ピースロックバンド、City Lovers(シティラバーズ)。2021年10月に現体制となり、東京・下北沢のライブハウスを中心に活動している彼らの音楽遍歴と結成の経緯、今後に描く夢を聞いた。

「ギターで食っていく」夢を叶えるために上京

青森県出身のGt.&Vo.ニシタ ユウセイは、音楽が生活に溶け込んだ環境で育った。「地元はド田舎なので、どこへ行くにも車に乗って、カーステレオから流れる音楽を聴いていました」。

彼がギターと出会ったのは、中学1年生のころだ。

「じいちゃんが昔使ってたギターが家にあって、なんとなく弾いてるうちに、『これで食べていくんだ』と確信しました。気づいたら、お年玉を超絶前借して、エレキギターを買っていました」。

back numberやLOST IN TIMEなどの邦ロックバンドに憧れ、作詞作曲を開始。高校生になるとバンドを組み、卒業後も活動を続けた。しかし、数年後に解散してしまう。

転機が訪れたのは、19歳も半ばを過ぎたころだった。

「ずっとバンドで出演してた八戸ROXXっていうライブハウスの店長さんに、『八食センターの広場でやるイベントに出ない?』って誘ってもらったんです」。

それまでギタリストとして活動していたニシタだが、当時は所属するバンドがなかったため、弾き語りで出演することを決意した。

「ソロで歌うのは初めてだったので、新曲を作って行きました。今もたまにライブでやる『夜行』って曲です」。

青森県八戸市の市場・八食センター内でのイベントは、大盛況に終わった。

「八食センターといえば、八戸市民なら誰でも知っている場所です。イベント当日もたくさんの人がいました。そこで思ったより歌えたのは、自信になりました」。

ギターボーカルとして手応えを掴んだ彼は、ほどなくして20歳の節目を迎え、上京を果たす。「東京、それも下北沢でバンドをやりたい、と思い続けていたんです」。

2018年7月に、3ピースロックバンド・City Loversを結成。バンド名の由来は、上京前に作った楽曲だった。

「友達の恋バナにインスピレーションを受けて、『札幌City Lovers』って曲を書いたんです。バンド名を決めるとき、ふとそれを思い出して、『City Lovers』って響きが良いな、と。深い意味もなく決めましたが、失恋ソングばっかり歌ってる俺らの名前に『Love』が入ってるのは、皮肉が効いてて気に入っています」。

歌にぴったり合わせるドラマー

ニシタを中心に動き始めたCity Loversだが、順風満帆とはいかなかった。

「最初の2、3年は、メンバーの入れ替わりもあって、落ち着きませんでした」。体制が整い始めたのは、2021年の夏ごろだ。

「前のドラマーが抜けた後、『次は彼に頼みたい』と、すぐに顔が思い浮かびました」とニシタが語るのは、Dr.tuti.jp(ツチ)である。

群馬県出身のtuti.jpは、幼稚園のころ、クラシックピアノを習っていた。

「両親とも音楽好きなのもあって、気づいたらショパンとか弾かされてました。中1くらいまで習いましたが、あまりハマりませんでしたね」。

中学校ではサッカー部、高校は陸上部に所属。しかし、スポーツは好きではなかった。

「辞めたら負けだな、と思って続けてました。負けず嫌いなんですよ」。

そんな彼がロックに興味を持ったきっかけは、受験勉強中にラジオを聴くようになり、TOKYO FMの『SCHOOL OF LOCK!』に出会ったことだ。

「番組に影響されて、ロックをやりたくなりました。僕の高校には軽音楽部がなかったので、実際にバンドを始めたのは、大学に入ってからです」。

ドラマーになった理由を聞くと、「ギターやベースは経験者が多いので、大学から始めた僕は追いつくのが大変だなと。その点、ドラムは人口少ないし、叩けば音が鳴るし、スティックを買えばいいだけだから、お金もかからない。いいやん、と思って」。

サークル仲間とコピーバンドを組み、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやBase Ball Bear、andymoriなどの楽曲を演奏した。「そういう邦ロックのフレーズは、手癖になっているかもしれません」。

卒業後は地方の会社に就職したが、1年目で、東京へ転勤になった。

「せっかく東京に出てきたけど、暇だったので、『また音楽をやろうかな』って。掲示板の募集を見て、前のバンドに加入しました」。

とあるライブハウスに出演した際、対バンとして、ニシタ率いるCity Loversと出会った。初対面の印象を訊ねると、tuti.jpは「酒癖が悪い、ですかね。一人で寝っ転がって爆笑してて、愉快な人だなと思いました」と笑う。

一方のニシタは、「『ここまで歌にビシバシ合わせてくれるドラムいるんだ』って驚きました。『自分が自分が』って演奏をしがちなドラマーが多い中で、ちゃんとバンドを主役にしてくれるというか。今もずっと、すごいなって思っています」。

しばらくして、tuti.jpのバンドは解散。新しいバンドに参加したものの、「もう一つバンドを掛け持ちしたい」と思い始めた。

「バンドをやってると、どうしても納得いかないことがあるんですよね。たとえばライブのセットリストや、楽曲の構成など。そういうとき、バンドを二つやってればバランスがとれるというか、執着しすぎないというか、『まあいっか』と思えるんです。片方のバンドで上手くいったことを、もう一方で活かせたりもするし」。

そんなとき、ニシタから声をかけられ、City Loversへ加入することにした。

歌ものっぽくないベーシスト

心に決めていたドラマーがバンドへ合流することになり、「あとはベースを探すだけだ」と考えたニシタは、インターネットの掲示板でメンバーを募集。応募を待つだけではなく、同掲示板でプロフィールを公開しているベーシストの情報を調べていくなかで、Ba.阿部 シュンを見つけた。

「当時の阿部は髪が長かったのもあって、異様な雰囲気を放ってました。『こいつは面白いぞ』と思って、音源を聞いてみたら、かなりクオリティが高くて。早速『うちでベースやりませんか?』と、メッセージを送りました」。

東京都出身の阿部は、物心ついたころからベースの音を聴いていた。

「父親がバンドマンで、ベーシストだったんです。よく家で弾いてて、僕は『低い音が鳴ってんな』くらいに思ってました」。

自発的に音楽を聴くようになったきっかけは、アニメだった。

「最初に見てたのは、たしか、ケロロ軍曹ですね。ギャグのイメージが強いアニメですが、エンディングテーマは意外と切なかったり、哀愁漂う曲だったりするんですよ」。

様々なアニメの主題歌に触れるうちに、中学生になり、UNISON SQUARE GARDENやTHE BACK HORNと出会う。

「父のPCを借りて調べて、バンドっていうものを知って、自分のiPodに曲を入れてもらって。段々と、アニメ以外の楽曲や、親父世代のアーティストも聴くようになりました」。

もっとも、自分が演奏をすることには、あまり興味がなかった。

「あくまでリスナーとして、聴いていることが好きでした」。

しかし高校に上がり、友人に誘われて軽音楽部に入部。どうせならと、慣れ親しんだベースを手に取った。練習へのモチベーションが上がったきっかけは、部活の先輩のライブを見たことだ。

「初めて吉祥寺のライブハウスへ行って、ステージに立っている先輩たちを見て、『こんなにカッコ良くなれるんだ』と。『俺もあんな風になりたいな』と思って、真剣に練習するようになりました。文化祭のとき、その先輩が『阿部ちゃんは上手いから、もっと頑張れよ』と言ってくれて、ますますやる気になりましたね」。

高校卒業後は一般企業に就職したものの、どこかに「バンドをやりたい」という気持ちが燻り続けていた。

「会社員になって2年ぐらい経ってから、バンド活動を再開しました。ただコロナもあって、2020年の冬に解散してしまったんです。それでも音楽を続けたかったので、インターネットのバンドメンバー募集サイトに登録しました」。

半年ほど情報収集を続けていた彼は、21年夏に、City Loversの募集を発見した。

「募集ページから『新宿』という音源を聴いて、『いいじゃん』って思いました。前のバンドでは、変拍子などを取り入れた複雑なロックをやってたんですけど、『今、俺がやりたいのは、こういう王道寄りのロックかもしれん!』と感じたんです」。

ニシタからメッセージが届いたのは、そんなときだった。

「『実は、僕もCity Loversに入りたいと思ってました』と返事をしたら、そのまま『お願いします!』ってなりました」。まさに相思相愛である。

スタジオで初めて阿部と顔を合わせたtuti.jpは「5弦ベースだし、歌ものっぽくないベーシストで、いいなと思いました。シナジー効果がありそうだなって」。

大きなステージに立つ日を夢見て

こうして、2021年10月から現体制での活動を開始。下北沢にあるライブハウス・近松を拠点に、高田馬場や大塚などのライブハウスで、毎月4、5本のライブに出演している。

「YouTubeとかInstagramとか、インターネットも活用してますが、結局、ライブで届けられないと意味がないと思っています。俺たちは、『おーっ』て歓声が上がって、手を掲げるような、分かりやすいバンドでもないから。聴いてくれる一人一人に届けられるようにやらなきゃ、と思っています」。

22年4月23日には、代表曲『曖昧』を配信限定リリース。以降、毎月のようにリリースを重ね、22年10月24日に1st mini Album『プロローグ』を発売した。

アルバムに収録されている楽曲の一つ、『short film』は、テレビ朝日が不定期に放送する深夜番組『イベ検』のオープニングテーマに選出。23年1月29日と2月26日にオンエアされた。

23年4月30日には、下北沢近松にて、初の自主企画『City Lovers presents Digital Single「あとがき」リリースイベント“あとがきの続き”』の開催を予定している。

「ずっと、ブッキングライブばかりに出てきました。そろそろ自分たちの実力を試したいし、これからを考えて、自主企画をやってみることにしました」。

メンバーそれぞれの夢を訊いてみた。

ニシタは「まずは下北でやってるフェスに呼ばれて、自分たちが出演するときは入場規制がかかるくらい、お客さんを呼べるバンドになりたい。それからワンマンをやって、少しずつ大きな会場を埋められるようになって、いつかは横浜アリーナに立ちたいです。そこで、いつもお世話になっているブッキングマネージャーさんにスポットライトをあてて、バズーカで現金を打ちます。アイドルがサインボールを投げる感じで」と、笑う。

阿部は、「僕がバンドをやっているのは、売れたいからです。そのうえで、僕はニシタを全面的に信頼しているので、彼が描くビジョンについていきたい。彼の作る曲をしっかり支えたいと思っています」。

tuti.jpも頷く。「曲を作るのって、誰にでもできることじゃありません。僕も昔やってみたけど、無理でした。ニシタは良い曲を作っているので、このバンドを広めていきたいし、その過程に携わりたいです」。

23年初夏からは、東名阪を回るツアーを計画中だ。

「実質、企画がツアー初日というか。夏にかけて大阪と名古屋でライブして、また東京に戻ってくる予定です。コロナ禍も落ち着いてきましたし、盛り上がっていく一年にしたいですね」。

取材時には、打合せしたわけでもなく、同じブランドの黒いシャツを着ていた3人。無意識のレベルで息が揃っている彼らが、今後どのような活躍を見せてくれるのか、楽しみだ。

text:Momiji

INFORMATION

2023.04.30(Sun) open 17:30 / start 18:00
City Lovers presents Digital Single「あとがき」リリースイベント“あとがきの続き”

[会場] 下北沢近松(東京都世田谷区北沢2丁目14-16 北沢プラザB1F
[料金] 前売¥2,400(+1drink) / 当日¥2,900(+1drink)
[出演] City Lovers / The Docci / 浪漫派マシュマロ / Wick Winkle / pale diary

Digital Single”曖昧”他多数、各種サブスクリプションサービスにて配信中

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