孤独と愛と(連作短歌)

「愛」

君に会う数億光年飛び越えて絡んでほどけるペペロンチーノ


ぴょんぴょんと黄金のヒヨコいとしくてそのままでいて寝癖の朝に


安いよねおいしいよねとフライパンはみ出るハラス夢のおはなし


君の手も笑顔も声も幾千度 切ってつなげて永遠ループ


すみっこでうとうとする君触れもせで まつ毛の陰をただ見つめてた


さみしいの? 君が尋ねてかき氷 ひとつふとんに星がこぼれて


「桜」

地ビールを掲げて花折り青い空はらはらはらと孤独降りつむ


肩に散る花のかけらのはかなさを くい止めたくてシャッターを切る


「体」

縛りたい絞めたいひどく汚したい柔い体の鳥愛でるよに


君の幸いのためならなんどでも血を流せるから僕を殺して


「湖」

沈みゆく悩みの渦に君の手が引き寄せられて引きあげられて


水面見る 底まで共に落ちてれば とけあうほどに抱き合えたのに


「ひとり」

君がいない広いお部屋のすみずみに光をあてて立ちつくす午後


いつの日か思い返してわらいたい 潤んで揺れて激辛カレー


あの日からプツンと切れた日常の配線結び くしゃみをひとつ

【終わりに】

初めて短歌を作りました。

作っているあいだ、頭の中にあったのが谷川俊太郎さんの詩「二十億光年の孤独」でした。

人と人の出会いは偶然の産物であり、さらに愛する人との出会いは、宇宙空間にあまたある星のなかから自分と共鳴する輝きを見つけ出すようなものです。1人の孤独と1人の孤独が引き寄せあうさまは、かなしいほど美しいと思います。いつか別れ、それぞれの星に帰っていくのもまたしかり。

そんな風に人が出会い、幸せをかみしめ、やがてさまざまな事情で別れて、また1人になる…そんな“孤独と愛”を表現したくて作りました。

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