見出し画像

思いやりのタスキを未来につなぐ - メンバーインタビュー:神長博幸

2022年10月、リアルテックホールディングス株式会社(以下、「リアルテック」)に新しい仲間として神長博幸が加わりました。神長は以前、リアルテックファンドのLP(組合員企業)担当者として関わっていました。それがなぜリアルテック入社に至ったのか、その経緯や想い、そして今後の展望について聞きました。

<プロフィール>
神長 博幸 / Hiroyuki Jincho
リアルテックホールディングス株式会社
コーポレート部長
2022年リアルテックホールディングスに、コーポレート部門の統括として参画。
リアルテック参画以前は、銀行、海外支援公務を経て、ソフトバンクにて事業計画策定と経営企画を推進、M&A、人材開発、子会社CFOに従事。
積水ハウスでは新規事業およびダイバーシティ関連活動推進に従事。
大学院研究員としてのポジティブ心理学、イノベーション研究にも従事。
研究、経営支援のCOMPASSION SHIFT LLC.代表。
慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科修了。

ーー神長さんは以前、リアルテックファンドのLPであるソフトバンク株式会社(以下、「ソフトバンク」)の担当者としてご一緒していましたが、リアルテックに入社すると聞いて本当に驚きました。入社に至る経緯を教えて頂けますか。

2019年からLP担当者としてリアルテックとご一緒させて頂いた後、2021に長年勤めたソフトバンクを退職して、積水ハウスに転職しました。色々な経験が積み重なってここに至るので一言では難しいのですが、これからの人生でコミットしたい事が明確になってきた時に、リアルテックのフィロソフィーと重なると感じました。自分自身の出来ることや研究ポジションを確立しつつ、一方で、より社会的に大きく貢献できる役割を模索する中で、以前のご縁もかさなり、リアルテックのコーポレートのメンバーとしてジョインするに至りました。

ーーこれからの人生でコミットしたい事というのは何でしょうか。

抽象的な表現ですが、「未来を紡ぐ」「次世代につなぐ」という事に貢献したいと思っています。ソフトバンクにいた頃、2018年から大学院で「ポジティブ心理学」について学び始めました。「ウェルビーイング」、その中でも特に「セルフコンパッション」という領域が専門で、自分自身への思いやりとその実践について学びます。そこでは、思いやりは家族や会社など身の回りだけにとどまらず、時間や空間、国を超えて社会や地球をつなぐという考え方があります。「未来の子供たちに思いやりをつなぐ」というのが私の研究の大きなテーマであり、関心領域です。
小説家の幸田露伴が『努力論』で説いた幸福三説には、「惜福」「分福」「植福」という考え方があります。それぞれ、福を残す、福を分け与える、福をつなぐ意味があります。わかりやすくリンゴに例えると。。。毎年立派な実をつけるリンゴの木を、大切に管理して長持ちさせるのが「惜福」。また、実をみんなに分け与えるのが「分福」。そして「植福」とは、リンゴの種を蒔いて新しい木を育てることです。「分福」までは今あるものを同世代の中で残したり分けたりする意ですが、「植福」は次世代につなぐ意です。未来につなぐ活動、想いが「植福」だと思っています。この「植福」こそ、今の私の軸となっています。

ーーなるほど。確かにリアルテックは次世代に価値をつなぐこと、負の遺産を残さないことを強く意識している組織なので、フィロソフィーが重なりますね。ご一緒していたからこそ、リアルテックのこともよく理解頂いていたのでしょうか。

そうですね。ミーティングやイベントもよくご一緒していましたし、永田さんや丸さんの熱い想いをインプットする機会も多く、メンバーの皆さんとも仲良くさせて頂く中で、本気で次世代のことを考えている組織だなと感じていました。
また、今年の夏に義理の父が亡くなり、「命には限りがある」ということを強く実感した事も契機となりました。自分の残りの人生で何か次世代につなげていける仕事に真剣にコミットしたいと思い、未来に向かっての活動にさらに心がひかれていきました。

ソフトバンク時代の担当事業も充分にSDGsやESGという部分で強く未来に対しての投資を行っていましたし、積水ハウスでの人間愛の行動指針も、共感しかなかったのですが、もっと自分自身が直接、自分自身の経験を活かして、幅広く切実な社会課題に対して関われる有効な手段は何か、コミットできるものは何かと考えたとき、真っ先にリアルテックが思い浮かびました。今後、残りの人生で「未来に思いやりをつなぐ」ために何が果たせるのかと考えたとき、リアルテックで自分が叶えられるものがたくさんあると思いました。あとシンプルに、リアルテックの皆さんともう一回仕事がしたいと思いました。

ーーそれは嬉しい言葉です。ここまでお聞きする限り、Will・Can・Mustを実現できる場所としてリアルテックを選んだように感じました。

はい、まさにWill・Can・Mustの3つがちょうど重なっている場所だと思います。
まずやりたいこと(Will)としては、先ほどお話したように「未来・次世代に思いをつなぐ」ことが直接的にできる場としてリアルテックが最適だと思いましたし、事業だけでなく考え方や思いの部分で重なる部分が大きかったですね。。
また自分にできること(Can)を考えてみると、長年携わった経営企画という仕事はどの会社でも必要不可欠であり、どこでも望まれる仕事だと思います。それを活かすためにはフィロソフィーが大切であり、それを共有できるメンバーと船に乗りたいという思いがありました。そんな矢先にリアルテックでもちょうど経営企画の経験者を必要としていたタイミングだったわけです。
そして、やるべきこと、成すべきこと(Must)は何かを考えた時に、残りの人生で自分の経験を最大限に活かして、深刻化する社会課題の解決と次世代の基盤づくりに貢献すべきだと思いましたし、リアルテックの社会実装を通して地球と人類の課題解決にコミットするべきだと思いました。

ーーよく理解できました。コーポレートの責任者として、取り組みたい仕事のイメージがあれば教えて下さい。

サッカーで言うとバックオフィスはディフェンダーやキーパーに当たります。その部分の機能は絶対に強化が必要です。リアルテックでは、個々が有機的につながって動いていることに強みがある組織なので、ルールでがんじがらめにするようなことはせず、信頼と秩序を大事にした有意義な職場にしたいと思っています。強い思いで結ばれたメンバーなので、それぞれ全力で攻め込んでいってもらい、それをサポートしていきたいですね。コーポレートだからこそ見える景色があります。それを絶対的に守りつつ、必要であれば、サイドバックや前線でももちろん活躍していくつもりです。

ーー分かりやすい例えをありがとうございます。年末の組合員向けイベントを企画するなど、すでに前線での仕事が始まっていますね。リアルテックの仲間たちとどんな働き方をしたいですか?

リアルテックでは投資先企業へのハンズオン支援に力を入れています。そのなかでコーポレートから支援していける部分があれば投資先やLPに価値提供できるようサポートしていきたいです。コーポレート部長という枠組みを超えて、自社の繁栄だけでなく、関わった会社やメンバー、社会それぞれが良い方向に向かっていくように支援していきたいです。
幸せの形は人それぞれですが、共通項は必ずあるので、関わる人たちのウェルビーイングとストレングスを共に高める部分を支援していきたいと思っています。

ーーところで、そもそもウェルビーイングやセルフコンパッションというテーマに惹かれたり、「未来へ思いやりをつなぐ」という考えに至ったきっかけは何かあったのですか。

幼少期からの幾つかの経験を通して、徐々に芽生えていった気がします。両親の影響もあって小学校からマラソンを始めて、中学・高校・大学とずっと陸上を続けました。最初は嫌いだったのですが、練習を積むとどんどん記録が短縮されていく喜びや、自分との闘いに勝つ達成感などを感じるようになって楽しくなりました。ただその中でも特に駅伝が好きでした。チームスポーツは他のメンバーがその場でサポートできるものですが、駅伝は一人で走って次へタスキをつながなきゃいけない。自分自身との闘いをしながらも、仲間への信頼感と精神的なつながりを感じながら思いをつなげていく感覚が、本当に楽しかった。この体験が「思いをつなぐ」というテーマの芽生えだったかもしれません。

ーーなるほど。駅伝を通して、同じ時間じゃなくてもつながることができる喜びを感じたのですね。その後のキャリアでも今の考えにつながる出来事があれば教えてください

大学卒業後は、社会や経済を回す血脈はお金だと思って銀行に就職しました。大学がスポーツ科学科で、商社や金融機関に就職したOBを訪問する中で、金融が一番おもしろそうだと思ったからです。いくつか当たった中で会社の規模というより担当してもらった先輩への共感や思い入れで入社を決めました。
しかし当時の上司がちょっと拝金主義者なところがあり、それへの反発で銀行を辞めた後は、鹿児島で知人がやっていたボランティアに参加しました。そこで現地の若い二代目社長や経営者たちの考え方に触れて、「自分の自由な時間を会社のためだけでなく、鹿児島という地域をよくするために、子どもたちの未来のために使いたい」という活動に共感しました。
それと同じ思想で、より規模の大きい活動をしたいと思って1996年からパラオ共和国で青年海外協力隊として活動しました。そこでは陸上競技のコーチをしていました。結局、事故にあって半年で戻ってきてしまったのですが、豊かな経験になりました。

ーー「子供たちの未来」というテーマが芽生えたのがこの時期なのですね。

はい。そして「ウェルビーイング」「セルフコンパッション」という価値に気付かされたターニングポイントは、ソフトバンクにいた2015年頃に体を壊して休んだことでした。非常に簡単な気付きで、「実は簡単に人は幸せをみつけることができる」という実体験です。その時に、人は上を向くだけで幸せになれるし、「笑う門には福来る」ということわざは本当にその通りだと実感しました。この気づきを皆さんに伝えていきたいですし、そのためには、まず自分自身が常にそれを体現することだと思っています。

こうして振り返ってみると、あらゆる経験が今いるこの場所に繋がっている不思議なご縁を感じます。リアルテックのフィロソフィーとこじつけるわけではありませんが、信念を持って社会をより良くしようとしている人たちと沢山出会ってきて、そういう人たちを応援したいと思うようにもなりました。リアルテックが支援している投資先企業の経営者たちはまさにそういう人たちだと思います。

さらに言えば、一般的なスタートアップのビジネスモデルは短期的な成長や事業シナジーを重視されるのに対し、リアルテックはディープテックという特性上、長い時間軸を見て投資していますし、社会実装への長い道のりを共に歩んでいこうという考えがある。そうした部分も「未来へつなぐ」というテーマとフィットします。

ーープライベートでのウェルビーイングな時間、幸せを感じる瞬間はどんな時ですか。

子どもが4人いまして、一番小さい子の寝顔を見たり、素朴な笑い声を聞くときが一番幸福ですね。
特に大学院に行ってウェルビーイングを通した学びから、そういうものをより感じるようになりました。幸福の様々な側面を学ぶことで、「生きているだけで幸せの一つの形」だと学びましたし、その実感もあります。このことは多くの人に気づいてほしいです。一言でいうと、当たり前のものなんて何もないんです。全てが有難いものという気づきです。

ーーそのような価値観の人が増えれば、お互いに尊重し合える関係性が築けそうですね。神長さんのような方がリアルテックに入って頂いた事で、より強い絆で結ばれたチームがつくれそうな気がします。未来・次世代へ思いをつないでいくという神長さんのパーパスがよく理解できましたが、リアルテックを通してどのように実現していきたいですか。

これからはビジネスにおいてもウェルビーイングが大事だと思っています。法律は正義のためにあって、医学は健康のためにあります。では、ビジネスはなんのためにあるのか?いままでの歴史の中で空欄でしたが、ここに入るのはウェルビーイングだと言われています。
リアルテックは、技術の社会実装という形で、ハードとして直接的・実質的に広げていける力があります。だからこそ、ソフト面というか、それを担う経営者や関わる人たちのウェルビーイングを考えたいと思いますし、まだ漠然としたイメージしかありませんが、それに貢献できるような取り組みをしていきたいですね。

しかしまずは、バックオフィスとして全力でみんなを支援することに集中します。「全員守り切るぜ」と思っています。リアルテックは守りよりもオフェンスが得意な人が多いので(笑)、やり甲斐があります。
キーパーやディフェンスはフィールドが良く見えるポジションです。なので果たせる役割が多い予感がしています。迷ったら行くべき道はこっちだと示せるような、船の羅針盤としての役割を果たしていきたいです。そしてより実行力のある組織に進化させていくことがミッションです。

ーーでは最後に、リアルテックの世界に興味を持っている人に向けて、メッセージはありますか?

リアルテックは未来が作れる会社、未来を作っていく会社、未来とつなぐ会社だと改めて思っています。一緒に未来を作りましょう!