ヒースロー空港イチのラッキーガールから地獄へ落ちて、なでしこに救われた話
GO TOトラベルってなんやねん(ムキー!)。イギリスへ行きたいけど、なかなか行けないフラストレーションがたまっています。NHKBSでやっていた『空からクルージング「スコットランド 守り抜いた誇りの道」』とかEテレの『イギリスで一番美しい庭 ダルメイン「早春 ラッパズイセンの花咲く頃」』を見て行きたすぎて地団駄踏んでいるのは私だけじゃないですよね?
はぁ。とりあえず思い出話でもして落ち着こう。
私がヒースロー空港イチのラッキーガールになって、その後地獄へ落ち、なでしこジャパンに救われた話を良かったら読んでみてください。
数年前のこと。私はイギリスでの滞在を終え、ステイしていたGill宅からヒースロー空港まで車で送ってもらいました。Gillとハグをして別れた後、チェックインして荷物を預けたりの諸々を済ませ、ドラッグストアBootsへ向かいました。前日に生理が始まってしまって、手持ちが少なかったので買い足そうと思ったのです。無事に買い物を済ませ、ついでに多少のお土産も買い、エアのゲートナンバーが表示されるのを待っていました。
その時の私は言い訳をすると、貧血と旅の疲れでかなりボーッとしており、(日本だったらチコちゃんに怒鳴られてるところですが)思い切り、フライトナンバーと搭乗ゲートを間違えてしまいました。ちなみにフライトは海外の航空会社でした。
何か変だな?と気づいた時には、乗るはずの飛行機の出発時間ギリギリになっていました。近くのスタッフにゲートの場所を確認して、手荷物をひっつかんで当該ゲートまで走りました。この時人生で一番必死に走ったかもしれません。ゲートへ行くと恐ろしいことに搭乗ゲートはすでに閉まっていました。女性のグランドスタッフ2人に息を切らしながら話しかけました。
「乗る予定だったのですが、もう間に合いませんか?」
「もう無理だと思うけど…。買い物でもしてたの?」
「ゲートを間違えて待ってました…」
グランドスタッフは困ったように顔を見合わせていました。そりゃそうだよね。(もしかして日本までのチケットを買い直すことになる?!どうしよう…)絶望と貧血で青ざめている私を哀れに思ったのか、スタッフの1人がどこかに電話して、何やら話してをしていました。そして電話を切るとゲートを開けて「少し待ってて!」と言ってくれました。
(も、もしかして、大丈夫なのかな?)
と期待しつつも、まだどうなるかわかりません。不安でいっぱいです。
するとしばらくしてグランドスタッフが言いました。「ゲートの通路から外に出て、係の者とその先にある車に乗ってね。」2人が笑顔だったので少し安心して感謝の意を伝えました。(とはいえまだ状況があまり把握できていなかったので、今思えばもっとちゃんとお礼を言うべきだったなと後悔。)
ゲートから入って階段を降りると小さな白い車があり、外にいた男性に「助手席に乗って待ってて」と言われました。
この段階でもまだ本当に飛行機に乗れるのか確信が持てず、心臓をバクバクさせながら、10分くらい車の中で待っていると、男性が乗り込んで飛行機の近くまで連れて行ってくれました。
ついにタラップを上がり飛行機に乗れました!
チケットを見て席まで行くと、別の方が座ってて(おそらくキャンセル待ちの方)その旨をすぐ近くにいた男性スタッフに伝えました。機内は結構混んでいましたが、別の空いていた席へ案内してくれました。その時に「すみません。ゲートを間違えて遅くなってしまって…」とまたまた言い訳すると
「You are luckiest girl!」
と彼は笑って言いました。はい、そうです。超ラッキーです。こんなことありえないよね? 嬉しすぎて涙出そう。ちなみに私はガールという年ではまったくないのですが、男性の発言なのであしからず。
通路側の席に座ってやっとホッとしたのですが…。
その後30分以上…いや1時間位、飛行機は止まったまま。
なぜ飛行機は出発しないの??
私の隣の席のオジサマがCAを呼んで「トランジット先で別の飛行機に乗り換えるのだが間に合うのか?」と尋ねていました。CAは笑顔で答えていましたが、なんて言っているのかはあまり聞き取れず。その後機内放送でも何かアナウンスが有り、乗客がザワザワし始めました。別の乗客もCAに文句を言い始めました。その際に何人かが私の方を
チラッ
と見るのです。恐ろしい。それ以降、喧騒の中で私は自分の膝から視線を上げることが出来ませんでした。心臓はあの小さな車に乗ったときからずっとバクバクでしたし、胃も痛くなり、当然下腹部も痛く、体中がパニック状態でした。パニックすぎて英語もうまく聞き取れません。
針のむしろってこういう状態のことだよね…。
むしろどころかこれは大叫喚地獄ですかね。
マリー・アントワネットのように白髪になるのももうすぐかもしれない…。
やっと離陸した時には私のHPはほぼゼロになっていました。トランジット先まではヒースローから1時間ほど。私もそこで日本行きの便に乗り換え予定です。斜め前の中央の席に日本人のパックツアーの一団がおり、ツアーコンダクターが「乗り換えの際は時間がないので私の後に着いて来てください」と話しているのが耳に入りました。
乗換空港に着陸し、空港内に入るときは乗客が先を争って走ったために激しい混乱が起きました。行列になっているのですが、この行列がどこへ向かっているのかわかりません。私の後ろを先程のツアーコンダクターが足早に駆け抜けていくのが見えました。ついて行くべき?と思ったものの、その日本人グループに白い目で見られたらどうしよう、と気が引けてまごまごしてしまいました。そして、乗り換え便の搭乗ゲートに着いたときはすでに閉まっていました。
(さっきも見たこの風景。デジャ・ブ?)
とぼんやり考えながら懲りずにグランドスタッフの女性に
「飛行機の到着が遅れて間に合わなかったのですが、もう乗れませんか」と聞くと
「No.」
と言われただけでした。そりゃそうです。わかってます。さっきがありえないことだったんです。
とぼとぼと歩いていると親切な空港スタッフに声をかけられました。半泣き状態でトランジットの飛行機に乗り遅れた旨を話すと、日本語が通じるエアのカウンターを教えてくれました。何人かの日本人乗客が列を作っていました。私もそこでこれからどうしたら良いかと相談すると
・飛行機が遅れたのは航空会社のせい
・乗り換え便は翌日の同時刻に予約
・宿泊は航空会社の手配で提携ホテルに
・夕食と翌日の朝食のミールクーポン支給
という手厚いサポートを受けられることになりました。
何という親切! なんという安心!
とりあえず日本へ帰れる…ということで嬉しくて泣きそうになりました。列の後ろに並んでいた年配の女性が同じホテルへ行くというので、一緒にシャトルバスでゆられてホテルへ行きました。その女性は私が遅れて乗ってきたことは知らなかったようで、エアの不手際を散々責めていましたが私は相槌を打つことは出来ませんでした。
日本の家族へ1日帰国が遅れることを連絡し、しばらくホテルの部屋でまんじりと過ごしていました。
食欲もなし。
もう放心状態。
ぼんやりTwitterを眺めていたらその夜なでしこジャパンがワールドカップの決勝に進出し、試合があることを知りました。何気なくテレビをつけるとちょうど試合が始まっていました。
日本時間はたぶん深夜の3時くらい。
そんなに熱心なサッカーファン(イギリス的に言うとフットボールファン)ではないけれど、普段なら起きていないであろう時間帯の日本の友だちとTwitter上でチャット状態でコメントしながら見る決勝戦は楽しかった。
それは惨めな今日一日を忘れさせてくれるくらい素晴らしい試合でした。
優勝を決めた時、普通に飛行機に乗っていたら絶対見ることのなかった瞬間を共有できて心から感動。なでしこたちの笑顔に本当に癒やされました。私の最悪の日に最高の結果を残した女性たちを見て何故か救われました。人生の出来事にはなにかしらの意味があるのかも、と思えたのでした。
日本に戻ってから何年も、家族にすらこの経緯をうまく話すことが出来ませんでした。それぐらい苦しかった。でも、あのとき飛行機に乗せてくださったグランドスタッフとエアの関係者の皆様に心から感謝しています。
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