カリフォルニアオーガニック農業法人

烏口鎖骨靭帯

以前にこんなツイートをしました

ただただ、自分が臨床しててふと思ったことを調べたいから

感覚的に良いんだろうなで終わっていると、言語化する作業を怠ることになる。そうなると、その方法で治らなかった患者さんが出たときにフィードバックも改善もできない。

何より、仕事にしている領域で言語化できないっていうのはどうなんだっていう。

そんなこんなで、烏口鎖骨靭帯と結滞動作・1st外旋に関する記事です


烏口鎖骨靭帯の解剖と役割〜CCメカニズム〜

烏口鎖骨靭帯はその名の通り、烏口突起と鎖骨を結ぶ靭帯

<烏口鎖骨靭帯の画像>

烏口鎖骨靭帯は、内側の菱形靭帯と外側の円錐靭帯の2つの靭帯の総称ですね

そんな烏口鎖骨靭帯は、CCメカニズムという役割を担ってます。


棘鎖角は鎖骨と肩甲棘のなす角度のことで

・肩関節の屈曲に伴って、棘鎖角は増加

・肩関節の伸展に伴って、棘鎖角は減少


つまり、棘鎖角の増加は肩甲骨の上方回旋・外転を、棘鎖角の減少は肩甲骨の下方回旋・内転の運動となります。



では、どちらの靭帯が棘鎖角の増加と減少をそれぞれ制動するのか。

これを理解するためには付着部を理解することが早道です。

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              筋骨格系のキネシオロジーより

菱形靭帯は烏口突起の先端側〜鎖骨の菱形靭帯線、円錐靭帯は烏口突起の基部側〜鎖骨の円錐靭帯結節に付着。

円錐靭帯結節は鎖骨の尾側後方、菱形靭帯線はそれよりもやや遠位前方に位置しています。ですので、制動は下のようになります。

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また、鎖骨の誘導は下の通り

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烏口鎖骨靭帯と結滞動作

動作が複雑になればなるほど、何をどう考えて良いか分からなくなってきます。そんなときは、対象の動作を細かく分解していくとシンプルに考えれます。

ここで、結滞動作を分解してみましょう

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ここで烏口鎖骨靭帯の機能を思い出してみます


結滞動作で必要な肩甲骨の動きを阻害しやすいのは、明らかに菱形靭帯。

◉結滞動作で必要な肩甲骨の下制・内転・前傾を制動

◉肩甲骨の内転運動では、鎖骨の後退が起こって烏口突起が相対的に前進→烏口鎖骨靭帯が制動

別の見方では、菱形靭帯の適切なテンションは、鎖骨の前方回旋を誘導してくれます。


烏口鎖骨靭帯と1st外旋

さぁ、お次は1st外旋

烏口鎖骨靭帯にアプローチしたときに1st外旋に明らかに変化がありました。その方は受動術を受けられるくらい可動域制限がとても強かったので、反応が出やすかったのかもしれません。

それにしてもアプローチをする前後での改善幅があまりに大きい印象でした。

まず整理しておきたいことが、肩甲骨の代償。

効果測定では立位1st外旋を自動運動で行ってもらい、肩甲上腕関節の内転制限もあったので肩甲骨の代償は、効果測定前後ともにある状態。そもそも、その時は肩甲上腕関節メインに治療してました。

このように考えると質的評価になってしまいますが、肩甲上腕関節の外旋に加えて内転可動域も可動域改善に影響を出したように思えます。

少しややこしくなってきたので小まとめをしたいと思います。

❶烏口鎖骨靭帯が1st外旋時の代償動作困難さの低下に寄与しているか否か
❷烏口鎖骨靭帯が肩甲上腕関節の内転/外旋に関与してるか否か


烏口鎖骨靭帯と1st外旋時の代償動作

❶烏口鎖骨靭帯が1st外旋時の代償動作困難度の低下に寄与しているか否か」について

1st外旋のときに人はどんな代償パターンをとるのか

1st外旋時の代償動作=肩甲骨の挙上・内転と、鎖骨の挙上

烏口鎖骨靭帯の役割は

肩甲骨内転を制動するのは菱形靭帯ですね。

既に気付かれてる方も多いと思いますが、結滞動作でも肩甲骨の内転動作を邪魔する組織として菱形靭帯が登場しましたね。

"結滞動作"と"1st外旋時の代償動作"の共通項=肩甲骨の内転

代償動作の遂行の容易さ

どうやら同じ代償であったとしても、努力性の度合いに変化があった可能性があります。つまり、同じ代償であったとしも楽に動作遂行できるかどうか。

そりゃ肩甲骨内転が出やすい方が楽に動かせれますよね。つまりは菱形靭帯がどれだけ肩甲骨内転の運動を許してくれるか、ということ。

肩甲骨内転の代償は、僧帽筋中部線維が働いてくれたら良いのですが、肩甲骨内転に困難さがあり、努力量が必要なとき人はどのような頑張るのか

1.僧帽筋上部線維・菱形筋・肩甲挙筋の過剰使用 👉 肩甲骨挙上・下方回旋を誘発
2.三角筋の過剰使用 👉  上腕骨外転を誘発

想像してみてください。"肘を体側から離さず1st外旋をしてください"という指示に対して頑張ろうとする患者さんの姿を。

きっと1st外旋を頑張ろうとすればするほど、肩甲骨は早期から内転・挙上・下方回旋し、上腕骨も外転してしまうでしょう。


ここまでは肩甲骨側の動きに着目してきましたが、次は鎖骨側に着目。

鎖骨の挙上👉菱形・円錐靭帯ともに制動

どちらの靭帯も代償動作を許してくれそうにありませんが、肩甲骨は内転・挙上・下方回旋に代償してますから、特に菱形靭帯での制動が強そう

こんな状態では、余計に努力度合いがより高い代償動作が起きてしまいます。

ただ、くれぐれもお伝えしておきたいことは、この代償は"その症例のその時点での戦略”な分けですから、代償動作自体は仕方ありません。でも、その代償動作が楽に遂行できるかどうかは似て非なるもの。


加えて、「肩甲上腕関節の内転制限がある場合には、肩甲骨下方回旋の代償によって上腕を体側につける戦略」がとられることが知られています。

もともとのアライメントが下方回旋な上に、代償動作によってさらに下方回旋...

たまったもんじゃないですね


肩甲骨下方回旋は、小胸筋・菱形筋・肩甲挙筋の短縮、硬さにつながります。 

これは何を意味するのか

1.小胸筋の短縮や硬さ👉鎖骨下制、肩甲骨外転・下制・下方回旋・内旋、胸前面軟部組織の短縮や硬さにも波及
2.菱形筋や肩甲挙筋の短縮や硬さ↑👉1st外旋に相対的に優位な筋活動になる

小胸筋の短縮や硬さがあれば、肩甲骨の代償動作の元締めである内転とそれに伴う外旋、それに挙上の運動も阻害

小胸筋って1st外旋に大事っすね。


烏口鎖骨靭帯が肩甲上腕関節の内転/外旋に関与してるか否か

「❷烏口鎖骨靭帯が肩甲上腕関節の内転/外旋に関与してるか否か」について

純粋に烏口鎖骨靭帯が肩甲上腕関節の可動域にどれだけ直接的に関与しているのか。

いろいろ調べてみたんですが、直接的にコレッ!!と言ったものは残念ながら見つかりませんでした。

ただ、違う視点から考察していきたいと思います。そもそもなぜ、僕が烏口鎖骨靭帯が1st外旋に関与してるのではと感じたのか。それは、他動外旋をしている際に早期からその箇所の伸張感があるなぁと感じたから。

だから周辺組織を考えて、調べてみました。

❶三角筋前部線維
❷鎖骨胸筋筋膜

この2つがどうも怪しい。。。


❶三角筋前部線維

三角筋前部線維はアウターの内旋筋。当然緩めば外旋しやすい。そんなことを考えてると、とあるツイートが目につきました。

三角筋が烏口突起を乗り越えるように外に滑ってるのが分かります

このエコー動画では小胸筋や大胸筋、外側胸筋神経のことにも触れられており、とても興味深いです!

実際、烏口鎖骨靭帯って三角筋を介して間接的にしか触れることはできないので、こちらに影響を与えてた可能性は高いですね

三角筋緩めば、内転も外旋も行きやすいですし。


❷鎖骨胸筋筋膜

これは別名烏口鎖骨胸筋筋膜とも呼ばれている筋膜

・烏口鎖骨靭帯と連結している?? 

*連結に関してはまだ調べ中です。

・鎖骨と結合 👉 筋膜が硬ければ鎖骨の動きを阻害
・大胸筋の後ろ、小胸筋の前にある 👉 小胸筋に影響を与えそう
・胸肩峰動静脈・橈側皮静脈・外側胸筋神経が貫通 👉 外側胸筋神経は小胸筋を支配

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こちらも可能性としてはありそう。

そもそも小胸筋は肩甲骨の下制・外転・下方回旋筋。肩甲上腕関節の外旋とそれに付随する肩甲骨の動きと、ほぼ反対の動きをしています。

これにプラスして、先にこんなお話をしましたよね。

1.小胸筋の短縮や硬さ↑👉鎖骨下制、肩甲骨外転・下制・下方回旋・内旋、胸前面軟部組織の短縮や硬さにも波及

円背姿勢がイメージしやすいと思います。この考えとも繋がってきそう。


鎖骨胸筋筋膜の緊張増加 →烏口鎖骨靭帯への影響

↓  

外側胸筋神経の絞扼

絞扼による小胸筋の過緊張

1st外旋制限

このような流れを考えると、烏口鎖骨靭帯へのアプローチは間接的に1st外旋にも影響を与えそうですね。

1アプローチで結滞動作と1st外旋に対して同時にアプローチできる、便利な組織かもしれません!


烏口鎖骨靭帯の触診

骨のランドマーク

・鎖骨のS字カーブで、後方に凸になっている箇所

・烏口突起(鎖骨で触れた後方凸の真下あたり)

細かな説明は動画を見ていただければと思いますが、ポイントは肩甲骨の上方回旋と下方回旋を誘導しながら、円錐・菱形靭帯の緊張を確認することです。

指を当てて左右に動かすとコロッとしてますし、分かりやすいです。


烏口鎖骨靭帯とエコー

coming soon...


まとめ

❶結滞動作に必要な肩甲骨内転は、菱形靭帯が邪魔をする

❷1st外旋では、烏口鎖骨靭帯が直接的に影響するよりも、三角筋前部線維の柔軟性、鎖骨胸筋筋膜による外側胸筋神経の絞扼が影響しているかもしれない

❸動作遂行の上で、正味の関節運動の改善あるいは代償動作の容易性を見極める必要がある


長い記事になってしましましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事は、臨床で不思議に思ったことを整理・言語化するために作ったものなので、抜けがあったり誤りがあるかもしれません。

そんなときはぜひアドバイスを、その他にもご感想をお聞かせいただけると嬉しいです✨


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