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なぜ地方のスタートアップ企業は成長しにくいのか?

こんにちは!株式会社リビルド代表取締役の鈴木孝之です。
私は「沖縄の労働環境を再構築(Re:Build)したい」という想いで2017年11月に沖縄で株式会社Re:Buildを創業しました。そして、弊社は2019年6月にBORベンチャーファンドから資金調達を行っています。

私は、これまでの経験から沖縄や地方での起業を支援し、経済の発展に寄与したいと考えています。
実際、沖縄や地方でスタートアップを増やそうという流れは起きています。しかしスタートアップの数は爆発的には増えていません。
それがなぜなのか、今までの私の経験も元に書いていきこうと思います。
(※あくまで私の主観も入っていますので、賛否両論あると思います。)

地方のスタートアップ企業は増えているのか?

まず、前提情報を述べた上で地方のスタートアップ企業が成長しにくい3つの理由について書いていきます。

都道府県別のスタートアップ設立数(出典:STARTUPS JOURNAL)

このグラフを見ると、東京に本社を置くスタートアップは2022年末時点で10,395社で、日本全体の66.17%を占めています。このうち、沖縄県のスタートアップの数は143社だと言われています。
では、地方のスタートアップは増えていない状況なのかと言えば、そんなことはないようです。むしろ、緩やかではあるが着実に成長しています。

都道府県別 資金調達件数の割合(出典:STARTUPS JOURNAL)

地方ではスタートアップの設立が安定して増加し、資金調達も盛んに実施されつつあります。この変化は「都道府県別の資金調達件数」に如実に反映されています。また、東京の占める割合は、2012年は83.55%でしたが、2022年は71.18%と大きく減らしています。東京以外のエリアはいずれも5%に満たず、明確に東京に迫る自治体は出現していないものの、各地域がじわじわと食い込んでいる構図です。これらの要因の一つとしては、コロナ禍を経て東京の投資家も地方のスタートアップに投資することに対して寛容になった点もあるのではないかと思っています。コロナ前では本気でIPOを目指すなら東京でチャレンジした方が良いと言う投資家の方もいました。ただ、今ではフルリモートのスタートアップも増えましたし、状況が変化してきていると思います。

また、ラウンド毎での比較でいうと、下記になります。(INITIALのデータを参照。2023年時点)
■東京都
創業:8158件
シード:1732件
シリーズA:973件
シリーズB:588件
シリーズC:313件
シリーズD以降:1488件

■沖縄県
創業:101件
シード:22件
シリーズA:9件
シリーズB:4件
シリーズC:0件
シリーズD以降:7件

これらの情報を読み取ると沖縄や地方ではスタートアップの設立数が増えている且つ、資金調達件数も増えていることがわかります。ただ、地方ではシリーズA以降の成長に伸び悩んでいる企業が多い印象です。

地方でスタートアップ企業が成長しにくい理由

よく地方でのスタートアップ育成では、アクセラレーションプログラムを作ったりなどの支援が目立っている印象ですが、無理に毎年、開催を続けて周りが疲弊して効果的なアプローチになっていないのではないかとも感じています。下記の記事にもこのような記載があります。

一方で闇もあります。
その最たるものは、地方のアクセラレーションプログラムじゃないでしょうか。当然ですが数が少ないので、特定の誰かに参加してもらわない限り成り立たないアクセラが生まれたりします。
もちろんそれもうまく利用すればいいのですが、お世話になっている人や利害関係者に頼まれると断るに断れない場合も多く、次第に地方のスタートアップ起業家は疲弊していきます。 (地方のアクセラの最適解は、東京で開催されているアクセラへの資料作成サポート&旅費交通費サポートなんじゃないかと思っています。まだまだ考えてみたいところです。ちなみにもちろんですが良いアクセラもあります。そこを否定してません)。

地方スタートアップの光と闇

また、無理に地方独自のファンドを増やさなくても良いかとも感じています。(もちろん、目的がハッキリしていれば良いと思いますし、地方で重要な役割を担っているファンドも知っています。)
実際、データを見ると、地方のファンドが少なくても地方スタートアップ企業の資金調達件数は伸びているのはわかります。

それでは、これらを踏まえた上で地方でスタートアップ企業が成長しにくい理由を述べていきます。個人的には主に人材の課題が大きいと感じています。

理由1. 起業家の母数が増えない。

これはおそらく、起業という選択肢が身近ではない。地方では出た杭は打つ文化が強い傾向があるので、それらが原因かなと思っています。 私の場合は前職で同年代だけでも3〜4人は起業していたので、起業という選択肢が身近に感じていました。

これらを紐解く上で、「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」という本に沖縄のこれまでの歩みや現状が書かれていましたので、とても参考になりました。
本の中でも沖縄県民は現状維持と同調圧力が強いというのは書かれていました。もちろん、これは沖縄だけの話ではなく他の地方でも近しいことが言えるのではないかと思っています。

理由2.起業してもアンチパターンを踏む確率が高い。

理由1に起因しますが、周りに起業家が少ない分、ちょっとした相談や情報交換などをしにくい印象があります。 それにより、少し相談すれば回避できたはずの地雷を踏んでしまう事が多い気がします。もちろん、県外の先輩起業家に相談するという手もありますが、イチイチ細かい相談をするのは若手起業家からすると難しい部分はあります。

この問題により、初期のCTO採用で失敗したり、開発会社選定で失敗、資本政策で失敗などの話を聞きました。これらの情報は本やネットの情報だけではキャッチアップが難しく、生きた情報を教えてもらうのがベターかなと思っています。 実際に上記のような相談は弊社にも何件も相談がありました。

また、私自身の経験談としては周りでバイアウト経験のある起業家がいなかったので、ほとんど県外の先輩起業家に相談していました。ただ、細かい部分まで相談するのは気が引けたので、要点だけ聞いて後は自分で調べながら進めていきました。

理由3.CXO人材が少ない。

これも1に近しいですが、周りでCXOをやっている人が少なかったり、そもそも沖縄で高度な仕事が少ないので、そういったキャリアを目指す人は上京してしまっています。

これにより、地方のスタートアップでは社長に全ての権限が集中しがちでなかなか、事業にスピード感が出にくいのでは無いかと思っています。 例えば、資本政策、技術選定、プロダクトマネジメントなどの業務は上位レイヤーの人でなければ、任せづらいと思います。
それらの仕事が社長に集中してしまうと、どうしてもボトルネックになってしまいます。これらの理由から爆発的な成長ができず、東京よりも地方はさらにIPOが長期化していくのではないかと思っています。

これらを踏まえた上での改善点

これらを踏まえて、資金調達(シリーズA以降)やアクセラレーションは東京に任せて、地方では起業家・CXO人材の発掘・呼び込みに特化して、起業家マインドのある起業家予備軍となる人を増やす。もしくは優秀な人材(起業家やCXOクラス)を呼び込む事にフォーカスするのが重要なのではないかと思っています。

その他の理由.IPO一本狙いでスタートアップがゾンビ化しやすい

これは地方だけの話ではないかもしれませんが、地方だと特にEXIT先がIPOに絞られやすいなと感じています。その理由としては、私もそうでしたが、まだまだ周りにバイアウトしている人が少ないので、バイアウトに対してネガティブなイメージを持っている方が多い印象です。
また、地方企業はその地域の企業に買収されるべきという考えも根強いと感じました。けれど、シードラウンドのスタートアップ企業でもバリエーション数億の会社はザラにいます。
そのバリエーションでどれだけの地方企業が買収できるのかと言うと難しいのが現状だと思います。
そうなると、地方の起業家のEXITはIPOに絞られてしまいます。
もちろん、地方で育てた企業が県外に流出せず、その地域でIPOするのが理想ではありますが、今や日本のGDPは世界4位に転落し、そうも言ってられない状況かなと思っています。

こちらの記事でも語られていますが、無理にEXITを目指さない選択肢があっても良いのかなと思っています。地方のスタートアップは無理に東京のスタートアップ企業と同じ道を辿らずに出口戦略を見直しても良いかなとも感じています。

「スタートアップならVCから資金を集め、ユニコーンをめざすべき。そんな価値観の固定化がある」。Relicの北嶋貴朗最高経営責任者(CEO)はみる。
急成長しそうな事業を手がけるユニコーン志向の起業家はいい。ファンド運用の期間内に成果を上げたいVCと波長が合う。だが全員ではない。経営を持続する利益の確保と社会課題の解決を両立し、じっくり事業を育てたい起業家もいる。白黒の相反するような目標を掲げ「ゼブラ」と呼ばれる。

起業家をゾンビにするな 転進や成長速度に自由度を

まとめ

  • 地方のスタートアップ企業は増えており、資金調達件数も増加傾向。

  • 地方でスタートアップ企業が成長しにくい主な理由としては、経験豊富な優秀な人材(起業家・CXO)が少ないことにより、爆発的な成長には至っていないと感じる。

  • 上記の理由により、IPOが長期化する且つEXIT先が限られており、さらにスタートアップがゾンビ化しやすい環境が出来てしまっている印象。

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