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暑い夏の夜、8ミリの花火を見ながら。





私の旦那さん、少年のような素直さをしています。楽しいとか、嬉しいとか、悲しいとか、拗ねてるとか、非常にわかりやすい男なんです。その上とても忠実だし、誠実だし、愛嬌がある。だから今夜はそんな、旦那さんの可愛いところから先に書くとします。惚気半分、反省半分で行きますね。話を始めます。

彼は、花火が大好きなんです。
だから昨日は家族3人で、空に上がる打ち上げ花火を見たのですが。彼は普段から、それはもう夕飯の食事中であっても、外からドーンドーンと花火の音が聞こえてくると「花火だ!」とひとまず席を立つくらい少年なんです。「座りなさい。」と叱られ席に、戻るや否や食べるスピードを上げて、急いで「ご馳走様」をする少年なんです。
ある夜は「庭から見えるぞ!」とか言って私たちを外まで呼び出し、息子を肩車しては直径2センチくらいの遠すぎる花火を見せて、ひとり満足していました。
またある夜は「ベランダから見えたぞ!」と暑苦しく騒いで私たちを呼び出し、それもまた8ミリくらいのミニサイズ花火が「キレイだよ!!ね?」と。どこがフィナーレかよくわかんない花火を家族3人遠く遠く遠くに眺めたこともありました。


そんな時、私は普通に暑いんですね。暑いのが嫌いなんですね。暑苦しい男というのも嫌です。そして花火は嫌いというか、興味がないです。そもそも興味があるのは花火よりも屋台。花火よりもビール。花火よりも唐揚げ。花火よりもイカ焼き。花火よりも、と言ったところでして。ですが、そんな可愛げのない女はモテない。ここで話は逸れますけど、モテないのは困りますからね。

だから、若かりし頃なんかは花火大会にいくためにわざわざ浴衣も着ましたし、頑張って立ち見でもいいからって。「花火大会」に出向きました。暑い中でも、その頃の彼氏とバカみたいにベタベタして。手汗ビッショビショ。少女の青さが一段と光っていたのです。実際、花火は良いものですよ。夏の風物詩ですから。でもやっぱり私は、蒸し暑い人混みを歩くくらいなら、24度に設定したクーラーの部屋がよかったですね。ひとりで漫画を読みたいのが私だったはず。

だからあの頃はとにかく無理をして花火が好きな彼女をしていたのです。「キレ〜イ♡」とか言って。心のうちは「座りてぇ〜」って今にも声が出そうだったわけで。

そういえば、それってば花火に限ったハナシじゃなかったのです。とにかく幼かった私はなんだって嘘をついて、自分を可愛く仕立てあげてましたから。「彼氏」「彼女」という、好きな人と親密な関係になれることに驚いて。
その「関係」を特別に守りたくて、ものすごく執着していたのです。あまりにも子供だったから。
私は彼氏の好きなものを好きになって、彼氏の嫌いなものを嫌いになって。
それは「嫌われないように」という心理かもしれませんし。特に私は自分に自信がなかったので、彼自身に憧れていたのかもしれないです。同じになりたかったのですね。だから、花火が好きなフリをしたし、聞いたことのないミュージシャンのライブにも行きました。ラップを覚えてカラオケで歌ってみたり、苦手な刺身もよく食べました。吸えないタバコも吸ってみて、大嫌いなパチンコ屋で隣の椅子に座らされて3時間近くただニコニコして座っていたりもしました。(負けた彼氏にお金を借したりもして)大好きな焼肉屋ではハラミが食べたいのに、ホルモンばかり食べました。

私はそんな調子が続いて行くうちに、自分の好きなものを、嫌いと言ったし、嫌いなものを好きと言いました。彼はとても大人だったから、そんな私に気づいて嫌気がさしたのかもしれません。気づいたというか、その違和感の毎日が居心地悪くなったというか。今ならわかる気がします。そんなことはさておき話は戻りますが。

私はいま、大人になって。嫌なことを「嫌」と言えるようになりました。でもそれは大人になったからではなくて、旦那さんのおかげなんです。彼の好きなものを、「キライ」と言っても、許してくれたのが旦那さんだからです。今でも私の嘘にちゃんと気づいて、嘘を許し、「自己愛」を教えてくれますから。

旦那さんが大好きな花火をみて、「小さいね」と言っても笑ってくれる人なんです。「花火、どうだった?」と聞かれて「暑かったよ!」と答えても笑ってくれる人なんです。いつも、いつも、本当の気持ちで笑い合えることがどんなに幸せか教えてくれた人なんです。そんなことを思いました。


暑い夏の夜、8ミリの花火を見ながら。

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