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スタートの作り方




夕方、洗濯物を畳む。その様子を動画に撮ってみた。

義理のお母さんからもらった緑色のTシャツを着て、ユニクロの変な柄のステテコを履いたままの私が、加工もヘアセットもなにもしないまま丸顔とほうれい線をキメて洗濯を畳む動画だ。やけに派手な緑のTシャツがリビングに浮いていて、それはおしゃれじゃないことを現したまま。つまり意図はない。そして洗濯物はというと、あなたの家と同じ。パンツとか、ブラジャーとか、ひっくり返ったままのデニムとか、息子のハンカチとか、バンドのTシャツとか、無地で何もこだわりのないようなバスタオルが何枚もだよ。ただただいつも通り洗濯物を畳むだけの動画だ。え?なんで?どうした?頭がおかしくなったか?って。なんのためでもない。

たとえばその「洗濯物を畳む動画」を毎日。
毎日、毎日、365日。Twitterにあげ続けたらどうなると思う?

ある人は「毛玉のパンツ多すぎて草。」とか言ってくるだろう。またある人は、「このタオルうちと同じです!」とか言ってくる。またある人は、「畳まれる様子を見てるとスッキリする」またある人は、「この洗剤を使うと毛玉がなくなりますよ」とか「こんな畳み方、主婦失格だな。リビング掃除しろ。」とかお節介。「いつも変なTシャツ着てるけど、どこで売ってるの?」とか「顔が好み。一緒に住みたい。」とか「ブラジャー、赤はキツイだろ」とか言ってくるだろう。勝手にしろ。最後には「毎日、洗濯お疲れさまです!」とか言ってファンになってくれる人もきっといるよ。そんで「洗濯物のマリー」とか言うアカウント名がもしバズったら、バスタオルの会社から広告モデルのオファーが来るかもしれないし。テレビから取材が来て、柔軟剤のCMが来たりするかもしれないよ。

とか言って。どうもこうもないよ。そんな意図はなく、想像だけがあったんだ。想像したかっただけだ。そうして本来まったく意味のない「洗濯物を畳む動画」はひっそりと私のiPhoneのなかに住んだ。データフォルダで息をしてる。「洗濯物を畳む私」よ。へんてこな夢を見させてくれて、どうもありがとう。

私、この時代は素晴らしいと思うんだ。意味のないところにこそ人が集まる。意味のないことに皆んなが首を突っ込む。そのおかげで私たちはいつでもクリエイターになれる。そう言うことが、言いたかっただけ。

毎日に文句があるなら、楽しめばいいじゃん。
明日はなんの動画撮る?


始めたらそれがスタートの日。




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