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新製品の広報戦略を成功させるためのリスク分析

失敗することは必ずあります。そんな時はできるだけ早く謝罪したり、ことの経緯を説明することが、コミュニケーション戦略では重要とされています。対応が早くて真摯な姿勢であれば危機を好転できるケースもあります。企業が記者会見で謝罪したり、時にYoutubeに謝罪動画をあげるのはこのためです。

米タコベルがやり過ぎた朝食に謝罪

そんな中、アメリカ大手ファストフードチェーンのタコベルが、広告CMで過去のいきすぎた朝食メニューに対する謝罪の内容を盛り込みました。

近年、タコベルは「ネイキッドエッグタコス」や「ワッフルタコス」など怪しげなメニューを発表し、いずれも消費者に歓迎されず販売中止となっています。そこで新たな広告CMで、過去のこれらのメニューをつくった事対する謝罪をし、二度と狂気の沙汰を起こさないことを約束したのです。

CMでは、若い顧客層を意識し、人気コメディアンのピート・デイビッドソンを起用。30秒のテレビCM2本が10月に公開され、12月24日まで放映される予定です。そのうちの一つのCMは、デイビッドソンがタコベルの店舗に入り、「時には、我々は行き過ぎることがある。私もそうだから。タコベルは謝罪のために私を雇ったのです」と言っています。そして朝食に定番の卵やソーセージ、ポテトなどを一緒に包んだ「朝食クランチシング」という、シンプルなメニューを発表しました。
チーフブランド責任者であるショーン氏は、CNNの取材に対し、「我々は正直言って、朝食に過剰なイノベーションを起こした」と認め「消費者が朝食に求めているのは、親しみやすさと快適さだと」と答えています。

調査会社NDPグループの最近レポートによると、2022年第2四半期、メニュー価格上昇の中で、他の時間帯(ランチやディナーを含む)が減少する一方で、朝食のビジネスは安定的に推移していることが明らかになっています。このことからタコベルの朝食ビジネスに投資した広告CMは懸命な判断だと言えるでしょう。

新しいキャンペーンの広報戦略は大きなリターンをもたらしますが、同時に、タコベルの過去のいきすぎた朝食メニューのように、レピュテーションリスクの危険と隣りあわせです。

開発プロセスでリスクを軽減するチェックポイント

では、新サービスや新製品の広報戦略で、リスクとメリットをどのように考えればいいのでしょうか?開発におけるそれぞれのプロセスにおいて、次のチェックポイントを意識してみましょう。

図:”開発プロジェクトのプロセス”著者作成

【1】コンセプト開発
影響力のあるステークホルダーへの対面インタビュー、あるいはグループインタビューなどにより、消費者がどのように考えているかを把握し、最終的に新製品がステークホルダーに受け入れてもらえるか?という視点から検証する。

【2】ユーザーテスト/リスク管理
市場の潮流や、規制の変化・制約などが、製品やサービスの立ち上げにどのような影響を与えるかを検討し、マクロ環境の変化の中で、消費者の需要がどのように変化するか検証する。

【3】ローンチ
発売の準備において、マイルストーンと決定点を明確にする。意思決定者の懸念を払拭するために、一時停止して振り返る時間を作る。

【4】市場成熟
運用チームが立ち上げの計画を進めると同時に、計画通りにいかなかった場合や不測の事態に直面した場合、どのように管理すればよいか危機管理計画、プレイブック(マニュアル)などをつくり、危機管理広報のトレーニングなどを実施する。

リスク分析のプロセスは、しばしば開発プロジェクトの後半で行われることがあります。しかし本来は、リスク管理のメンバーは、開発プロセスに不可欠な存在である必要があります。新製品を、顧客に対して有意義な形で発売できるように一緒に目標に向かって前進するチームにより、自社のブランドと評判に利益をもたらす方法で、バランスをとる必要があります。リスクに関する判断は、新製品や新サービスの展開を成功させるための重要な要素になります。リスクが管理されたコミュニケーションが行えれば、メリットを最も大きく受ける効果的な戦略となります。

参照元:CNN https://edition.cnn.com/2022/10/03/business-food/taco-bell-breakfast-menu-strategy/index.html


【書いた人】
大杉 春子/コミュニケーション戦略アドバイザー

民間企業・地方自治体・省庁などのパートナーとして、PR戦略の策定から広報物の制作監修まで支援。コミュニケーション戦略における「攻め」と「守り」の両軸から経営広報の施策をサポート。2020年に専門家らとともに、日本リスクコミュニケーション協会を設立し、リスク管理から危機管理広報までを網羅した、リスクコミュニケーション人材の育成を展開する。

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