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被害者の会の被害者の会



小説です。投げ銭制。無料で全部読めます。


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『今こそ女性が一丸となって声をあげましょう!』
「私は女性ですがあなたたちとは一丸になれません! 男性に抑圧されて屈辱を味わっているのが女性だという押し付けが不快です」
『そうですか。では、女性と一口にいってもいろいろな方がいますが、特に、男性に抑圧されて屈辱を味わっている女性のみなさん、今こそ一丸となって声をあげましょう!』
「(筆談で)声をあげられない、おしもいるんですよ! 配慮してください」
『声をあげるという言い方は、比喩です。皆さんめいめいの方法で主張をしましょうという意味です!』
「比喩が分からないアスペもいるんですよ! 配慮してください」
『……分かりました。比喩を使わず喋ります。女性と大雑把にいってもいろいろな方がいますが、特に、男性に支配されて屈辱を味わっている女性のみなさんで、デモ行進を行います。皆で、声を出す、プラカードを掲げる等のめいめいの方法で主張を行いましょう』
「デモにも行けない人もいるんですよ! 配慮してください」
『SNS、文書、あらゆる方法で主張しましょう』
「主張ができない人もいるんですよ。主張をしないといけませんか。差別されているだけで十分辛いのに、主張もしないといけないんですか?」
『そうですか。たしかにいきなり主張をするというのも、限られた方にしか出来ない方法かもしれません。では、まず、私達で集まって、お食事会をして、皆さんで意見交換をしたいと思います』
「私卵アレルギーだけど卵出ますか?」
「私は大豆アレルギーです」
「小麦アレルギー」
「乳製品アレルギー」
「私は水アレルギーです。配慮してくれますか?」
『……分かりました。何も出しません。意見交換会を開き、インターネット配信も行い、webからの参加も可能にします。また、インターネット環境が無い人のために、事前の投書も受け付けます』
「~※%&!# (ニホンゴがワカラナイヒトモイルンデスヨ)ハイリョシテクダサイ」
『分かりました。OK, 通訳も用意します。 I will take the interpreter there.』
「¥?:*#! (エイゴガワカラナイヒトモイルンデスヨ)ハイリョシテクダサイ」
『では中国語も』
「%$@>#!」
『では韓国語も』
「“~;*%#」
『ではドイツ語も』
「~##$!&」
「~&!!&¥」
「~※¥?:*」
「:*#!¥_」

『……』



はじめに光あれと言った時点で多分すべての言っちゃいけないことが生まれた。
女でも、男に抑圧された女でも、おしでもアスペでもアレルギーでもない、話せない言語もない、あれでも、それでも、どれでもない人間というのは多分いなくて、だから誰でも絶対になにかの被害者の会に入ることは出来て、でも唯一入れない人がいるとしたらその存在であるところの、神が、天上から下界を見下ろして言った。


「難しい問題ですね」




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本文とは全然関係ないおまけコーナー「語弊があるかもしれないがアスペというか自閉というかそっち気味の人にはチェーン店が救い」という話。100円投げ銭してくださった方のための短いエッセイ的なものです。


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