先生／生徒という愛ある関係と、私がやりたい「場作り」の話
ロックダウンが明けて数ヶ月経ったホーチミン市では、ついにカラオケ屋やバーも営業許可が出た。
なので、先週の日曜日、日本人のアラサー女子４人を集めて「椎名林檎カラオケ会」を催した。
私は東京時代にボイトレを習っており、その時の習性で、歌っている時の自分の動画を撮影した。
その動画を、ボイトレの先生に送った。
その際に「よかったこと」「改善したいところ」「思ったよりできてたこと、思ったよりできてなかったこと」「歌っていた時の気持ち、感想」などをまとめて一緒に送った。
これは完全に先生の教え通りだ。
私がボイトレをやめて３年以上経つのだが、「動画を撮って→チェックして→フィードバックして→また歌って動画を撮って……」というサイクルは染み付いているし、そこに先生を巻き込むことも完全な癖になっていた。
別に先生に返事が欲しいわけでもなく、ただ生温かく見守ってほしいだけ。
先生ってそんなもの。
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同じ日。私が日本語を教えていたベトナム人学生から久々に連絡が来た。
JLPT(日本語能力検定)の２級に合格したという連絡だった。
私が教えたのは１年以上前だし、それも基礎だけだ。２級に合格したのは紛れもなく彼の実力なのだが、それでも、真っ先に報告してくれた。
生徒はいつまで経っても生徒だし、褒めて褒めてとフリスビーをくわえて走ってくる犬みたいでかわいい。
生徒ってそんなもの。
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教え子にとって、先生は死ぬまで先生だ。たとえ教えなくなっても、生徒が先生を超えても。
具体的に何かを教える関係ではなくなっても、なんとなく何かを報告したり、見守ってもらいたがるのが生徒。
そうやって、うっすらと温かくつながっているのが師弟関係だし、私はその関係が好きだ。
私には、生徒の適性も、先生の適性もある。
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先生は生徒を可愛がる。存在を肯定し、練習を応援し、成長を心から喜ぶ。
はじめはめちゃくちゃ手がかかるし、齟齬も多い。
でもそのうち生徒は段々と手がかからなくなり、何度もやり方を教えるうちに「やり方自体」を学んでいく。
先生はどんどんやることがなくなる。見守って、応援して、喜ぶだけになる。
もっともっと生徒が育つと、もっともっと先生はやることがなくなる。
だんだん、先生がうっすらとしていく。もはや先生は一人の個人ではなく、「場」に溶け込んだ何かみたいになる。
たとえば、教室の事務連絡用に作った掲示板に、生徒が練習の成果をアップし、先生はいいねをつけるだけになる。
同窓会でにこにこしてお酒を飲んでいるだけの人になる。
「○○門下生」「○○派一門」の、○○だけになる。
それでいい、というか、それこそが理想。
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先生がもっともっと概念化したら、それは宗教になるのだろうな。
私が2020年末に立てた目標は「教祖になる」だったし、2021年は「私の魂の職業は教師だ」「教祖というより教師だ」と気づいた年だった。
今、「宗教ってどんな感じか」が分かってきた。
「私は宗教に入ったことが無いのにいきなり教祖になるとか言い出して一体何なんだろう？」
と、我ながら思っていたが、なんのこっちゃない、私が慣れ親しんだ、教室、道場、稽古場の雰囲気のことだったのだ、宗教というのは。
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