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ビエンベニード アラ メヒコ

Bienvenido a la México!(メキシコへようこそ)

年を重ねるのが年々早くなってきて、気が付いたら39歳になっていた。

そして、気が付けば40歳になる目前だった。

子供の頃に感じた40歳に私は一体なっているのだろうか?

いつも大台に乗る前の年は、ソワソワしてしまう。でも今回は特別だった。39歳から40歳なのだ。初老とも言うべきか、若いというタイトルを本当に返還する歳に来てしまった。


そんなある日仕事場でカレンダーを見ていたら、誕生日前を含めて3連休になっていたのに気が付いて、何か記念になることをしよう!と思い何処かに旅に出ようと急に思い立った。誕生日まで2週間程しかなかったが、国内を調べると、ニューヨークへは$700、マイアミへは$650、オレゴンへは$450、ハワイへは$600とかで、$500以内に予算を抑えたい私の夢は打ち砕かれた。やっぱり国内は高い。そこで思い立ったのがメキシコだ。メキシコシティー$280、カンクン$300、グアダラハラ$220‼‼‼ 即決だった。

めちゃくちゃ安いじゃないか!

同僚に頼み込んで、1日カバーしてもらって、グアダラハラへ3泊4日の日程に出来た!しかもフライトも運良く夜中の12時発でメキシコには5時半に着くフライトをゲット出来た。

40歳にして初めてアメリカから何処かに旅に出れた。いつもは日本に帰国する事しかしていなかった私が、ようやくアメリカから旅に出られるようになった。ビザのことやら、金銭面に余裕もなかったり、生活にゆとりがなかったこのアメリカ生活で、ようやく思い切って旅立つ勇気が持てた。所持金は$500だ。日本にいたなら、韓国や東南アジアに行く感覚だろうか。とにかく$220で行ける外国は貴重だ。

そして私は旅に出た。

「ビエンベニード アラ メヒコ」

税関のオジサンは、最初こそ怖い顔していたが、観光で4日来ました。と言ったら、ようこそと言って入国スタンプをすんなりくれた。そして、4日間は、あっという間に過ぎていき、久しぶりの旅は私には大冒険となった。


さぁ、帰国だ。

アメリカに入国体験がある方は、経験した事があるかもしれないと思うのだけど、アメリカの入国審査は本当に怖い。ワタシの場合はLAXでロサンゼルス国際空港だ。アメリカ入国の際に何事もなくスルー出来ている人が私は本当に羨ましい。何故なら、とにかく私は入国審査で個室に連れていかれる率が高かったからだ。だから、アメリカに滞在中は、極力出国を控えていた。別室に連れていかれて、恐ろしいほどの質問を受け、犯罪者かのように疑われたことがあるからだ。これは、寿命が縮むほどの恐ろしい経験だった。特に学生の頃受けた質問はトラウマになってしまって、これが原因でアメリカからなかなか出られなかった。さらには永住権を取得してからも数回別室に連れていかれた経験もあって、本当にここは運命の分かれ道だと何度も思った。検査官にすべてを掌握されるのって本当に怖い。「はいダメ!」と言われたら、入国拒否されて強制送還させられてしまうのだ。

そんな中で、思い切って40歳記念にメキシコに行ったのだ。同僚のメキシカンの人に、さらわれないように気を付けろとか、スリに遭うとか、怖い目に遭うと散々言われたが、やっぱりアメリカへの入国審査が一番怖かった。

さて、アメリカへ帰国(入国)の日は私の誕生日だった。

平然を装って、入国審査に臨んで、指紋を取って、目の照合をして、

なかなかハンコを押してくれない。

もう一度指紋を取るから。

右親指、4本、左親指、4本、。。。。

パソコンで何やら打ち始める。

もう発狂しそうだ。

でも、堪えた。じっと検査官を見つめていた。

どのくらい経ったのだろう。

きっと数分の事だったと思うのだが、本当に長く感じた。

心臓のバクバクが聞こえないだろうかと思うほど緊張していた。

ボンボン。やっとパスポートにハンコを押してくれた。そして、返却された。

私は、ありがとうございますと丁寧に挨拶をして、その場を去ろうとした。

「Wait (待て)」

えええええええええええええ。何?怖い!

検査官を見ると

「ハッピーバースデー」

あああああああああああああああああああ。

「サンキュウ ソウマッチ」

あああ、怖かった。

でも、嬉しかった。少しアメリカに受け入れてもらえた気がした。


40歳になった。なぜかわからないけれど、自由を得た感覚が半端ない。40歳ってこんなに自由なのか?もう誰にも迷惑をかけずに、自分の責任で好きな事が出来る。結婚しろとかそういうしがらみももう無い。こうあるべきとか、色々世間で言われていることとか、全く聞こえなくなった。

まるで天界と下界くらいの差だ。私のライフは、夏の穏やかな湖畔のようだ。波が経つことなく、静かに時を感じていられている。幸せだ。釈迦の本で読んだ、「天上天下唯我独尊」とはこのことなのだと日々感じている。


入国審査でのハッピーバースデーは、今まで一番の記念になったお祝いとなった。そして、また私は、メキシコフィーバーへと加速していく。

ビエンベニード アラ メヒコ

危険を承知でまた聞きに行くよ。

最後まで一読ありがとうございました。