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ベンゾジアゼピンの離脱症状_08_聴覚に関連する症状_聴覚過敏・聴覚情報の処理の障害・耳鳴など

(この記事の内容は、私の知識と経験に基づく個人的な考察と症状の記録であり、何らかの実験・研究・論文等に基づくものではありません。ベンゾジアゼピンの離脱症状を理解するための参考としてご覧いただけましたら幸いです。)

私はもともと音が気にならない体質でしたので、幹線道路や駅のそばに住み、電車やバスに毎日乗り、街中に出掛けるのが好きで、たくさんの人が口々に会話をしているカフェや居酒屋でおしゃべりをして、混雑したライブハウスやフェスで音楽を楽しんできました。
しかし現在は、下記のようなベンゾジアゼピンの内服・離脱に伴う聴覚症状のため、静かな部屋にこもり、外出は車や人がなるべく通らない道を選んで散歩をするだけです。音を耳で聞いて情報を得ることや、会話による人とのコミュニケーションも困難な状態になりました。

音は空気の振動として耳まで伝わり、耳の穴から入って鼓膜などを震わせ、それが耳の奥にある内耳という場所で電気信号に変換されて脳に伝わります。
脳には、注意を向けた音だけを大きくしたり、聞こえた音を一時的に記憶したり、音を意味のある言葉として理解するなど、様々な役割を担う神経があり、これらの神経が正常に働いた結果として、最終的に会話の内容を理解するなどの機能を果たしています。
ベンゾジアゼピンによってこれらの神経に支障が生じると、音を聞く機能、会話を理解する機能、音に対する体の反応などに様々な異常が生じます。

先日、聴覚情報処理障害(APD)という概念がある事を偶然知りました。
耳に異常は無く、聴覚は正常だけれど、その後の脳における情報処理がうまく行かないために言葉などが聞き取れなくなる障害を指す言葉です。
騒がしい場所や複数の人が同時に話をした場合に聞き取りにくくなるという症状が多いようです。
ベンゾジアゼピンの離脱症状で起こる聴覚の障害の一部は、薬剤性のAPDと言うこともできると思います。



聴覚過敏・聴覚刺激による自律神経発作

私は、ベンゾジアゼピンの離脱に伴い、日常生活で聞こえる様々な音を、非常に大きく感じたり、苦しく感じたりするようになりました。
また、音によって自律神経発作(ベンゾジアゼピン性自律神経発作・パニック発作様の発作)が誘発されるようになりました。

正常な人でも、突然大きな音がすると、ビクッとしたりドキッとしたりすることがあるかと思います。これは危険から身を守るために人間が持っている自然な反応です。音に反応して交感神経が興奮し、心拍数をあげたりして、逃げたり戦ったりできる体制にしてくれているのです。
私の場合、聴覚過敏がひどい時には、この反応がとても小さな音でも起こり、しかもその後の自律神経の調節が上手くいかずに、過剰な自律神経の反応が連鎖的に広がっていくような感じになります。

先にも書いたように、音の刺激は耳で神経の電気的な活動に変換され、その活動が脳のいくつもの神経に伝わり、音の意味を認識したり、その音に対する体のリアクションを起こしたりします。
私の症状は、この聴覚に関わる神経と自律神経の両方が、ベンゾジアゼピンの影響によって、適切に調節できなくなっている事に起因して生じるものと思われます。

症状が重かった頃は、生活の中で聞こえるあらゆる音が原因になって自律神経発作が起こりました。
例えば、食器どうしがぶつかる時に出る音で、とても具合が悪くなりました。
生活にどうしても必要な物から出る音なので、なかなか完全に避ける事ができず困ったのですが、陶器・金属・ガラスなどを使わず、プラスチックや木の食器に変えるなどすると、かなり症状が抑えられると思います。
減薬に使う器具なども、なるべくプラスチックにするなど、鋭い音の出にくいものを選ぶように心がけると良いと思います。

振動覚の過敏も同時にあるので、音に振動を伴っていると、音だけの場合よりもさらに苦痛が大きく、自律神経発作が起こりやすくなります。
乗り物の音や工事の音は体で感じる振動の刺激も一緒に入ることが多いので、苦痛も大きいですし、大きな発作が起こることが多いです。
私は減薬を始めた頃、散歩をする際に幹線道路の近くを通っていたのですが、車の音や振動で体調が悪くなることに気付いて、静かな住宅街の道に変えたところ、以前より楽に散歩できるようになりましたし、全体の体調も落ち着きました。

また、これも振動覚の過敏と相まってか、音が衝撃として感じられ、まるで頭を殴られているような感覚になり、音の内容を聞くどころでは無いような状態になったりもします。
人の声でもこの症状が出るので、会話も難しくなります。
話す時の声の大きさや抑揚は人によって様々ですが、アクセントの部分に力が入った大きな声を聞くと、頭に強い衝撃を感じます。
聴覚過敏の観点から言うと、抑揚の少ない平坦な話し方の方が楽に聞くことができます。
ですので、誰かと話す時は、なるべくアクセントの部分に力を込めないヒソヒソ声で話してもらう方が、会話がしやすいと感じます。
ただ、大きな耳鳴りがしている時だと、小さな声はかき消されて聞こえなくなるので、ちょうど良い声の大きさというのは、時と場合によるのかなとも思います・・。
いずれにしてもこの症状が強いと普通に会話をすることはできないので、友達とおしゃべりを楽しむなどという事は不可能になりますし、支援してくださる人と最低限の会話をすることすら難しくなります。

聴覚過敏に対する対策としては、以前は耳栓をしていました。
耳栓で全てが解決できるわけではありませんでしたが、つけている方が楽でした。
友人がホワイトノイズの出る耳栓をプレゼントしてくれたのですが、これも少し症状が楽になる感じがしました。
耳栓はサングラスと違って寝ている時でも装着できるので、その点で良かったなと思います。
ただ、耳が詰まったような感じや自分の声が響くことで逆に気分が悪くなってしまったり、人に呼びかけられても聞こえないなど、いろいろと不便がありますし、今は、聴覚過敏が少し軽快したこともあり、基本的には耳栓は使わず、苦手な音をそもそも避けるような形で生活しています。

現在は、扉の閉まる音や掃除機の音で少し症状が出ますが、その他の食器のぶつかる音や洗濯機などで出る生活音では症状は起こりにくくなりました。しかし、車の音、工事現場など機械の音・道路に穴をあける音・金属を打ち付ける音などは今もしばしば発作が起こります。

音を聞き分けることができない 音の取捨選択ができない

人間の脳は、耳から聞こえる音を取捨選択する機能があります。例えばパーティや雑踏のような沢山の音が聞こえている場所でも、自分が話している人の声に集中したり、自分の名前を呼ばれたことに気付くことができます。
ところが、私はベンゾジアゼピンの離脱症状によって、その取捨選択がまったくできなくなり、場合によっては、雑音の方が大きく聞こえてしまうという現象が起こりました。
例えば、家の脱衣所で洗濯機が回っている時に、別の離れた部屋で人と話そうとすると、目の前にいる人の話し声よりも、遠くの洗濯機の音が大きく聞こえてしまって、その人と話ができないといった現象が起こりました。

これは、GABAによる神経の調節ができなくなったことで、音の情報を取捨選択する脳の機能が適切に働かなくなることで生じているものと思われます。

本当に聞きたい音が聞こえないので困りますし、無理に聞こうとすると自律神経発作が起こります。

今は、背景に流れている音が音楽だと大丈夫なことが多いのですが、別の会話が同時に聞こえていると、話が聞こえなかったり、発作が起こったりすることがあります。

同時にたくさんの種類の音が聞こえると自律神経発作が起こる

音の取捨選択ができないことにも通じるのですが、同時にたくさんの音が聞こえると脳の処理が間に合わないようで、音の種類が多い事そのものが原因で自律神経発作が起こります。

例えば街中だと、車の音がして、人の声がして、お店の音楽が流れていてといったように、私の脳で処理できない数の音が入ってくることになり、自律神経発作が起こります。
スーパーなどのお店でも、音楽、レジの音、店員さんの声、商品やキャンペーンのPRなど、同時に複数の音が聞こえてきますので同様です。
先日たまたま駅でロケをするテレビ番組を見たのですが、電車の走る音、アナウンスの声、電車の到着や発車を知らせる音楽、キャリーケースの音、ホームにいる人の話し声、沢山の人が歩く足音など複数の音が同時に鳴っていて、テレビから聞こえてくるだけなのに気分が悪くなり、まだまだそういった場所に出掛ける事はできそうにないなと思いました。

話の内容を理解できない

体調の悪い時には、音が聞こえても内容が理解できないという症状があります。
無理に頑張って理解しようとすると、自律神経発作が起こります。
これは、音の情報を処理して意味に変換する脳の機能に障害が生じていることによるものと思われます。
音そのものを聞くことも難しい上に、なんとか聞いても結局意味が分からないので、結果として、音声を通じて情報を得たりコミュニケーションをすることがとても難しくなります。

病院の受診や支援してくださる方々とのコミュニケーションは音声による場合が多いですが、ここまで書いてきたような聴覚の症状が強い時はこのやり取りが難しくなります。
会話自体が大変なのと、体調が悪いからこそ伝えたいことやお願いしたいことがあるのに、それが上手くできなかったりする事で、かなりの心身の負担になることがあります。

私の病状を知ってくださっている人ですら意思疎通が難しくなるので、初めて会う人、初めての医療機関にかかる際などに自分の病状について伝える事、意思疎通をする事は非常に困難になります。
初めての場所、初めての人の場合、脳が処理しなければならない情報がとても多くなるため、体調が極端に悪くなり、大きな自律神経発作も起こり、同時に聴覚に関連する症状もさらに悪化します。
このため、初めての場所で初めて会う人とコミュニケーションをとる事は、ほとんど不可能な状態になります。
この点については、今も解決策が見つかっておらず、今後どうしていくべきか悩んでいる点になります。

視覚に関連する症状の記事に書きましたように、体調の悪い時は聴覚のみならず視覚を介して情報を得たりコミュニケーションをとることも難しい状況になりますので、結果的には、人間関係や社会全体から孤立し、断絶したような状態になるとも言えます。

耳鳴り

話が少し変わりますが、耳鳴りはベンゾジアゼピンの離脱症状としてよく起こる症状かと思います。
私も耳鳴りの症状があり、ひどい時は、色々な種類の大きな音が同時に聞こえて、ピー!ジャー!リーン!ワーン!と、まるで非常ベルが耳元で鳴り響いているような大音響でした。耳鳴りの音が大きすぎて、人の声が聞こえず、会話に支障があるほどでした。

耳鳴りは多くの場合、難聴に伴って起きる症状です。
例えば、病気や加齢に伴って耳の機能が低下すると、耳から入ってくる電気信号が少なくなります。すると、この電気信号を受け取る役割をしていた神経細胞が、今まで通りの情報を受け取るために、感度を上げて対応しようとします。
こうして、電気信号の受け手側の神経細胞が過剰に興奮することで起こる症状が耳鳴りだとされています。

ベンゾジアゼピン離脱症候群は、神経が興奮し過ぎるのを抑える役割をしているGABAの効果が低下することで神経細胞の過剰な興奮が生じる疾患です。
なので、耳の機能が正常で、今まで通り音の信号が入力されていたとしても、抑制が外れてしまうことによって、聴覚に関わる神経細胞の過剰な興奮が起こることで、耳鳴りが生じると考えられます。

私の耳鳴りの症状は波がありながらも徐々に軽快傾向にあります。
今も小さな耳鳴りはずっとしていて、時々大きくはなりますが、生活に支障はない状態です。
ただ、最近は、金属の缶を爪ではじいたような、軽い金属どうしがぶつかったようなパチン、カシャンというような感じの破裂音の耳鳴りが時々するようになりました。突然音がするので、長く続く音よりもドキッとする感じがして、少し気になります。

突発性難聴様の症状

私は減薬中に突然、左耳の聴力低下・耳閉感が起こり、聞こえる音も歪んで聞こえるような状態になりました。
聴力検査の結果は、感音性難聴と言って、内耳(耳の奥にあって音を神経の電気信号に変換する部分)や神経の障害によって難聴が起こっていることを示すパターンでした。
1週間ほどで聞こえ方はもとに戻りました。
これは突発性難聴と考えて矛盾の無い経過になるかと思います。

突発性難聴は原因不明の疾患で、現在のところ、内耳の血流障害やウイルス感染、ストレスなどが原因の候補として挙げられています。

突発性難聴はベンゾジアゼピンを内服していない人でも罹患する疾患ですし、ベンゾジアゼピンの減薬などに関するブログ等で耳が聞こえなくなったという記載は無かったような気がしますので、ベンゾジアゼピンとは無関係にたまたま起こった可能性が高いのかなと考えています。

しかし一方で、突発性難聴の原因が分からない以上、ベンゾジアゼピンによる薬剤性の突発性難聴が存在しないと証明することもできません。
聴覚に関わる神経の調節がベンゾジアゼピンによって障害され、音が聞こえにくくなる可能性は否定できません。
ベンゾジアゼピンによる自律神経の乱れが原因で血管が過剰に収縮し、血液が通りにくくなって、内耳の血流障害が起こる可能性も考えられます。
ベンゾジアゼピンは免疫低下を起こすことも指摘されていますので、この免疫低下によってウイルスに感染しやすくなることで、内耳のウイルス感染が起こるかもしれません。
また、今後、突発性難聴の原因が明らかになり、それがベンゾジアゼピンと無関係だった場合にも、上記のような機序から、ベンゾジアゼピンによって、突発性難聴に類似した聴力低下が起こるとも言えるかもしれません。
ですので、私の経過中に突発性難聴様の聴力低下が生じたことについて、何かの参考になるかもしれませんので、ここに記録しておこうと思います。


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