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”ほんとう”になりたかった『ビロードのうさぎ』を翻訳してみた

The Velveteen Rabit(邦題:ビロードのうさぎ)という絵本を知りました。

この本の一節がとても素敵なので、紹介させてください。

"ほんとう"になる方法(How to be Real)

物語はとある保育園にて。おもちゃのビロードうさぎは、年長者のスキンホースへ「"ほんとう"とは何か」を問いかけます。

「ねぇ、”ほんとう”ってなに?」
ある日、うさぎは尋ねました。
「からだの中がぶるぶるしたり、ネジで動いたりすること?」

「…ほんとうっていうのは、作りじゃあないんだな」
スキンホースは優しく答えました。
「ほんとうっていうのはね、そうだな、遊んでもらうだけじゃない。だれかにとても長い間、心から大切にされた時…愛してもらえた時に、君はほんとうになる」

「…それって、痛いのかな?」

「そうだな。ときどき、そうかもしれない」
スキンホースは、ゆっくり言いました。
「でもね。ほんとうになった時は、痛みなんて大したことじゃなくなるのさ」

「ふうん。ほんとうになるって、ネジマキみたいに一瞬なの?それともちょっとずつ?」

「少し時間がかかるよ。すぐにはなれないね。特に、簡単に壊れたり、とんがってたり、大切にしまわれてる奴らはなれないだろう。
誰かに心から大切にされた時、ほんとうになる。その時にはね、ほとんどの毛が抜けて、目も腐り落ちて、あちこち緩くなって、ボロボロになっているかもしれない。でもね、そんなのはどうでもいいことなんだ。ほんとうになることは、美しいことだから」

いかがでしょうか?勝手ながら自分なりに翻訳してみました。

ちなみにビロードとはベルベット(天鵞絨)のこと。今の時代、ベルベットでできた人形なんてなかなか見ないですよね。

こんな質感。少し不気味なのも魅力です。

僕としては味があって好きなのですが、ベルベットは水に濡らすことができないんですよね。しかもちょっと高価。今は洗いやすい、ポリエステルでできた人形が一般的ではないでしょうか。

原文と、Realの定義

英語の原文もとても素敵なので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

"What is REAL?" asked the Rabbit one day, when they were lying side by side near the nursery fender, before Nana came to tidy the room. "Does it mean having things that buzz inside you and a stick-out handle?"

"Real isn't how you are made," said the Skin Horse. "It's a thing that happens to you. When a child loves you for a long, long time, not just to play with, but REALLY loves you, then you become Real."

"Does it hurt?" asked the Rabbit.

"Sometimes," said the Skin Horse, for he was always truthful. "When you are Real you don't mind being hurt."

"Does it happen all at once, like being wound up," he asked, "or bit by bit?"

"It doesn't happen all at once," said the Skin Horse. "You become. It takes a long time. That's why it doesn't happen often to people who break easily, or have sharp edges, or who have to be carefully kept. Generally, by the time you are Real, most of your hair has been loved off, and your eyes drop out and you get loose in the joints and very shabby. But these things don't matter at all, because once you are Real you can't be ugly, except to people who don't understand."

ちなみに『ビロードのうさぎ』は日本では酒井綾子さんという方の翻訳が有名かもしれません。そちらを読まれた方は気付いたかもしれませんが、僕は「Real」を「本物」ではなく「ほんとう」と訳しました。

個人的に僕は、"本物"と聞くとどうしてもマテリアルな、物理的なニュアンスを感じてしまいまして。。

また、本物と聞くと、その対義語である「偽物」という対概念を想像せざるを得ない気がするんです。劇中のおもちゃたちは「Fake(フェイク)」という言葉は一切使いませんし、僕としてもおもちゃたちが「本物じゃない」とは思いません。

子どもは日常と非日常、そして夢と現実に線引きをすることを知らない。だから”ほんとう”とは、客観的かつ物理的な「本物」ではなく、その子にとって真心のこもったものであれば、既に充分リアルだと思うんです。

夢で見たことが「ほんとうになる」。
昨日ついた嘘が「ほんとうになる」。

どこかそんなニュアンスが伝われば幸いです。

まぁ、僕はプロの翻訳家でもなんでもないのとw、僕自身酒井綾子さんの翻訳がとても好きなので、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。こんな風に訳すのか、面白い!と楽しんでました。下記の動画で朗読されてる女性の声もステキ。

記事を読んでいただきありがとうございました!何か心に残すことができたら幸いです(もしよろしければ「スキ」を押していただけると大変励みになります^^)

今日も良い一日を!

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