第4話

朝のニュース番組が流れていた。
寝起きのまま、ソファの上でレイナはぼーっとテレビを見ていた。
しばらく思考が働かない。
昨日のことがまるで夢だったのではないだろうか?と未だに思ったりする。
レイナは寝ぐせの付いた頭をくしゃくしゃと掻き回す。

(ちょっと待って……私………本当に何してんだろう?)

レイナはふと我に返って思った。
公園から突如降ってきた流れ星——、と思ったそれは裸の青年で。
その青年は今私の部屋で寝ていて……。
さらにその男は元天使で。
じゃあ今は何?

「…………」

頭を抱えたままソファの上で動かなくなったレイナの横を、寝起きのリスタがヨタヨタと歩いてきた。

「おはよ……」

寝ぐせでピンピンになった茶色い髪のリスタはレイナに朝のあいさつをした。

「あ……おはよ」
「ふう……あのさ……これ……なに?」

レイナの横に座ると、リスタはテレビを見ながらそう言った。

「え?……あ、テレビ知らないの?」
「テレビ……っていうの?これ」

リスタは不思議そうにテレビを眺めながらそう言った。
レイナはリスタのその様子をまじまじと見ながら思った。

(本当にこの人……人間じゃないの?)

レイナは改めてリスタが空から降ってきた天使であることを思いだした。
でも、翼のないリスタの容姿はほとんど人間と変わらない。
っていうか人間にしか見えないのだ。

「あのさ……リスタはほんとに天使……なんだよね?」
「ん?……うん」

リスタはまたポカンとした顔でレイナを見つめ出した。
黒く真っ直ぐに澄んだその眼で見られると、レイナはまたソワソワし始めてしまう。

「や……あの……さ……ええと……天使はさ……何か特別なこととか、できるのかなー?なんて思って……ははは」

レイナは自分でも何を言ってるのかよくわからなかった。
黒く大きな眼で真っ直ぐに見つめられてつい恥ずかしくなったレイナはその恥ずかしさを紛らわすように頭を掻きだした。

「特別なことか……うーん……わかんないな……」

リスタは頭を傾げながらそう言った。

「じゃあさ、空とか飛べたりできるの?天使なら」
「うん。でも今は無理だな……ほら、翼がない」

リスタはそう言うと、レイナに背中を向けた。
レイナの貸した青いジャージは若干リスタの体に窮屈そうに見える。

「あ……服、買いに行かないとね」
「ん?」
「ええと……今日わたしも、休みだから、ショッピングモール行こうか」
「ショッピングモール?」
「うん。リスタの服とか……買わないとね……さすがに私のあげたジャージだときつそうだし」
「ああ……ありがとう……でも、これ……気に入ってるけどな、動きやすいし」

リスタはそう言うと、ジャージの袖をくんくん、と嗅ぎだした。

「やだ!何匂い嗅いでんの!?」

それを見たレイナは思わずリスタの腕を掴んで顔から離した。

「なんだよ……いい匂いするからさ……この服」
「へ……そう」
「うん」
「……柔軟剤かな?」
「じゅうなんざい?」
「ううん……なんでもない」

レイナは掴んでいたリスタの腕を離すと、ふう、とため息をついた。

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