夫と子どもが並んだ姿が見たくなった。
私達夫婦に、子どもはいない。
そして、その日は唐突にやってきた。
いつも見ているYouTubeのおすすめ動画に、ぽっと親子の動画が現れた。
我が子に「達成感」を感じてもらうために、
全力で目標に取り組む親子3人が見られる動画だ。
親子の温かい関係や絆を感じさせられ、私もこんな親になりたいなぁと憧れた。
「この動画、Yunaちゃん好き?」
そう尋ねる夫に、恥ずかしながらもうんと頷いていた。
この動画の親子のように、
大好きな夫との間に生まれた子どもが
きゃあきゃあとはしゃぐ姿が連想される。
そんな光景を想像したとき、
言葉や理屈では表せない幸せを感じた。
それからというものの、
「赤ちゃん 出産」「親子 感動」
など「子ども」を感じられる動画や記事を漁ってしまうようになった。
それどころか、
「出産体験記」「子育て●ヶ月目」「子育てで購入してよかったもの」
など(もう産んだあとの話?)と自分でツッコミを入れたくなる検索履歴の数々が続く。
自分でもよくわからない。
見えないスイッチが入ってしまったみたい。
アドレナリンがどばどば出ているときのような感覚。
そしてついに、涙でぼろぼろになりながら夫に告白した。
「(私が扶養に入っても大丈夫なように)準備してくれてて、ありがとう。○○との子どもを育てたい。」
夫は、
「いいよ。」
と笑顔で即答した。
26歳、契約社員の既婚女性。
これが今の私の肩書きだ。
今からこの肩書きに、
「私をママにしてくれる子ども大募集中!」が加わる。
子どもの胎内記憶の話や、普通の人が認識できないものを見たり聞いたりできる人曰く、
子どもは親を選んで生まれてくるそうだ。
空からママとパパになる子どもたちを見下ろして、
兄弟や姉妹といっしょに、
「あのパパとママに決めた!」と言って、
ママのお腹の中に順番に滑り台で降りてくるらしい。
もしかしたら、ママにしてくれる募集を始めた私のことを、雲の上から小さい子どもたちが見下ろしてきているかもしれない。
少し、就職活動みたいと思ってしまった。
だけど、あれだけ億劫だった就活も、
これから会えるかもしれない子どもに会うためなら、ちっとも億劫じゃない。
なんなら、夫の顔を見るたびにやにやしてしまってからかわれる始末だ。
そんなこんなで、
今まで縁がないと思っていた、
もっと先だと思っていた「子どもとの出会い」が、
結構近い未来にありそうで、
人生どうなるかわかったもんじゃない。
あんなに夫が好きで、
まだまだ独り占めする気満々だったのに、
今は、夫と我が子が共演して、動画の親子のような姿を見るのが夢なのだ。
何で急にそんな発想になったのか。
女性ホルモンの分泌で子どもが欲しくなる時期があるとかないとか、
そんなネット記事を見た。
なので、私もそのホルモンとやらにちゅちゅっと
と頭をやられてしまった可能性がある。
だけど、絶対偶然じゃないのだ。
世の中のパパママがどういうきっかけで、
子供を授かりたいと思うのか、
それはすごい大学の統計などで証明されているとは思う。
それでも、今回のこの出来事は、
見えない力が働いていると感じた。
いつか、私の子供に出会うことがあったなら、
今日この日のことの話をしてみたいと思う。
お空から降りてきてくれた我が子が、
なんてお話をしてくれるのか、
今から楽しみだ。
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