魂の灯 -3- #ppslgr
外に出たバティは、人もまばらな裏通りを、考え事と共に当て所なく歩いていた。すれ違う相手もわずかな為に、彼の独り言に怪訝な視線を向ける者もいない。
「確かに、コンスタントに書いている人はこう、これが書きたいっていうのが明確だよなぁ」
Note区画内外縁部。この辺りになってくると、立地の悪さからテナントも埋まらずに、そのまま空きスペースが放置されている箇所も、一つや二つではない。そういった虚無の空間が増えてくるほど、物寂しい雰囲気が漂ってくる。
「書くこと自体は楽しいんだ、オレは――それは間違いない。でも、書きたいものがなんだって言うと、こう……不明瞭だ」
若者の苦悩は、突如として割って入った悲鳴に遮られる。弾かれたように声の方へと、駆け出すバティ。
「大丈夫ですかって、何じゃこりゃーっ!?」
バティの目に飛び込んだのは、路地裏で腰を抜かして震える妙齢の女性。だがそれはいい、もっと深刻なのは彼女に迫る怪異だ。
宙に浮いているのは、黒い毛玉に小さな小さなコウモリ羽が付き、節くれた枝の様な手足がついた物体。毛玉が割れると、中には不似合いなむき出しの歯がガチガチと鳴って口の端をつり上げる。
地面を這いつくばっているのは、半透明かつ暗黒色のスライム状の物体。ナメクジのようにも見えるが、目は触覚ではなく体表に複数おざなりに配置されている。
控えめに言って、どちらも尋常の生物ではない。明らかに天然自然の生態系から逸脱した存在だ。
「クッソ、オレ今丸腰なんだけど!」
「バティ!こいつを使え!」
「レイヴン!」
駆けつけてきた黒衣の男が、バティに向かって二振りの剣を投げる。一つは黒塗り刀身のマチェット。もう一つは内側に向かってブーメラン湾曲した刃を持つククリ。どちらも的確に柄を掴んで、鞘から振り出し怪異へと駆け出す!
「コイツめ!」
渾身の力で振り下ろされた一撃が、女性へと迫っていた多眼ナメクジの先端を切り落とす!続いて切断面にククリの刃先をねじ込み、内側から切り裂けば、どろりと粘液を溢れさせた後に幻の様にかき消えていく。
「キィーイー!」
「ヒッ……」
地上の二人に襲いかかろうとした黒毛玉に、後退りも出来ず短い悲鳴をあげる女性。だが、毛玉が口を大きく広げた瞬間に、黒尽くめが放った銃弾が、三発並んで飛び込む。着弾した瞬間に、衝撃で後方へ吹っ飛び赤い血を噴く毛玉。
「そっちはこいつらについて何か知ってる!?」
「わからん、俺も今日が初見だ!」
銃撃着弾で壁に叩きつけられた黒毛玉。かと思いきやいきなり小分けになった小毛玉に分散し、個々それぞれが牙を剥く!
「ああ、もう帰れよ!キモいから!」
殺到する小毛玉の群れに対し、バティは的確に飛翔物を切り落とす要領で叩き落とし両断していく!次々とかち割れて落下する毛玉!そして毛玉のうち、一つだけ眼のついた個体だけが、二人から飛び離れんとする所を銃弾が撃ち貫いた!宙で四散する小毛玉!
「……いまので全部?」
「俺の感覚にも、あの妙な奴らの奇妙な気配は感じられない」
「そっか、良かった」
【魂の灯 -3-:終わり|-4-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
ファンタジーミステリー?小説も平行連載中!
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