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魂の灯 -4- #ppslgr

二体とも、死体は夏場のアスファルトに落ちたアイスみたいに溶け落ちて、もはや残骸すら残っていない。追加の増援が無いことを確認し、それぞれ武器を収めると、脱力してへたり込んでいる女性へとバティから声をかけた。

「あー……お怪我とかないです?」
「あ、いえ、その……お陰様で、怪我はなかったです」
「それは何よりです。立てますか?」
「ええ、何とか……」
「バティ、一応サポートエリアまで連れて行こう」

また出てくるかもわからん、という言葉をレイヴンは飲み込んだ。さして強くはなかった、とはいえ尋常ではない怪異に遭遇した後である。二度三度出てくるなどと示唆しては、被害者にショックを与えかねない。

「ああ、わかった。で、こいつはどうしたら」

バティが受け取った二刀を鞘付きのままでぶんぶん振る。刀身にも、怪異の粘液、体液の類いは一切残っていなかったのが、不可解ではあった。

「やるさ、丸腰だと毎回渡さないといけないだろう」
「え、いいの?」
「大量生産品の安物だ。いくらでも買い直せる」
「わかった、ありがたくもらっとく」

ようやく一息ついた女性が、何とか立ち上がり歩けるまで回復したのを見て、二人も動く。ここまできたら、乗りかかった船だ。

―――――

「もしかすると、お二人が遭遇した相手は、初めてではないかもしれません」
「というと、既に区画内で行方不明になった連中がいるのか」
「はい、既に警察には届け出を行っています。防犯用の監視システムも活用して、犯行の現場を探っていますが……今の所抑えられていない状況です」
「フムン」

Noteエリア内にいくつかあるサポートセンター。白ベースの清潔感のあるテナント内、そこに併設されている救護室へと女性を送り届けると、二人はサポートAIであるノート――エメラルドグリーンのストレートロングに、シンプルなワンピースという、お嬢様っぽい人型躯体に対して、一部始終の報告を行っていた。

「え、それっておかしくない?区画内にそんなわかりやすい死角が、いっぱいあるわけでも……」
「申し訳ありません、設置できるカメラには限りがございまして、巡回ドローンも併用して警戒を行っているのですが……」
「もしかして、不可解な事に被害者が、自分から死角エリアにフラフラ行ったりしてないか?」
「その点については、今まで一切の痕跡を確認出来ていないため、こちらでは判断材料が無い状態です。何か、その様な推測が出来る情報が?」
「さっき、な。何であんなひとけの無いエリアに行ったのか、それとなく聞いてみたんだ。そしたら『自分でも何故、あんな所に足が向いたのかわからない。考え事をしてたら自然に……』だとさ」
「無意識のうちに、ということでしょうか」

レイヴンとノートのやりとりを聞くうちに、バティは自分も、あの過疎エリアに何故足が向いたのか思い出せない自分に、気がついた。

(そういえば、散歩だからって深く考えていなかったけど、オレはどうしてあんな所に……)

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