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魂の灯 -2- #ppslgr

「それは構わんが、本当に必要なのはそういう毎日書くコツ、じゃないんじゃないか?」
「エッ?」

黒尽くめから出てきた言葉は、バティの予想していない内容だった。レイヴンは続ける。

「確かに、毎日書き続ける為のポイントは、ある。毎日決まった時間に起きること。起きて朝一に書くこと。睡眠時間はたっぷり取ること。食事の栄養バランスは適切にすること。などなど……」
「それ、大事なの?」
「大事だとも。でも、そんな事は後からいくらでも身につけられる。やる気さえあるなら、箇条書き程度でも十分教えられる。だが、本当にパルプスリンガーに必要で、行方不明になると取り戻すのが大変なのが……衝動だ」
「衝動」
「そう」

新たにもう一本CORONAを、レイヴンがあおる。

「『この話は俺が書く、書きたいんだ』っていう、腹のそこから湧き上がる衝動、情熱、欲求。それを持っていれば、いつだって、どんな時だって書ける。でも、一度コレを失うと――ぴたりと、筆が止まる」
「それ、センセイも同じこと言ってたな……」
「ああ、真実だから、俺も同様に言うしかない」
「そっか」

創作へと衝動、欲求。言われてみれば確かに、書かなければ、という義務感にだけ追い立てられて、何を書きたいのか、という欲求はいつしか、何処かにおいてきてしまった気がする。

「レイヴンはさ、賞取ったんだからもっと書け、頑張れって、オレに言わないんだな」
「無理に無理を重ねると、心が折れる。一度心が折れた後は、立ち直るのに膨大な時間がかかる。とてもそんな強要は出来んよ。義務感でやるとしんどいしな。仕事じゃないんだから、書きたくなった時に書けばいい」
「わかった」

不意に、アロハシャツに天狗面という奇妙な風体の男が、バティに声かけのしかかってくる。

「よーバティ君!なんだ元気ないじゃないか?そういう時はガチャでも、回したらどーだい」
「オレの推しは収益率の関係で、ガチャには入らないんですよ」
「そうなのか?俺様ソシャゲ全くやらねーから、そういうの全然わかんねーや!」

絵に描いたような悪い大人ムーブに、苦笑する黒尽くめ。猫撫声で悪い方向へ誘導してくるサイバー天狗に対して、バティは丁寧に押しのけて立ち上がる。

「ちょっと外の空気吸ってくるよ。後で、その衝動の取り戻し方とか、教えて欲しい」
「ああ、取っ掛かり位は提供出来る」

心なしか、肩を落とした感じで外に出ていく若者を見守りつつも、黒尽くめはタイピングに戻り、天狗はCORONAをあおる。

「なあ、アイツが立ち直れるかどうか、賭けないか。ヘッヘ」
「立ち直れる方にCORONA一本」
「なーんだよぅ!お前がソッチに賭けたら、不成立じゃんか!」
「そういうそっちは、ホントに賭けにする気がある、わけでもなかろ」
「ハハッ、そこんとこはナイショだ。ナイショ」

黒尽くめがノートパソコンに向き直ったのと同時に、かすかに女性の悲鳴めいた音が店内に響いた。ガヤにかき消された為に気にする者は居なかった中、レイヴンだけが立ち上がる。

「行ってくる」
「おうよ、いってらっしゃ~い」

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#小説 #パルプスリンガーズ #バトルロボットアクションノベル #日常

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